2020年11月 イベントスケジュール

創造的実験「パーティー05/No credit」
鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」イベントプログラム

 2020.11.19(B1事務局 清澤)

鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」では、メインアーティストであるcontact Gonzoとdot architectsの2組が「経済」を独自に捉え直すための創造的実験「パーティー」を、会期中9回にわたって実施。経済をめぐる様々な視点から、多種多様な"創作、作業、遊び、etc...."が繰り広げられます。アートエリアB1には、「パーティー」での意図的行為と偶然の出来事の連鎖の痕跡が、会期を通じて蓄積し、鉄道芸術祭vol.10の展示空間を構成していきます。
毎回の「パーティー」を写真とともにレポートします。

鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」詳細情報はこちら

創造的実験「パーティー」全9回のスケジュールはこちら

「パーティー05/No credit」開催情報はこちら

去る11月19日、「貨幣シリーズ」の最終回となる創造的実験「パーティー05/No credit」が実施されました。「パーティー03、04」で製造された5種類の"貨幣"について、その価値や信用をめぐる実験が座談会形式で展開しました。


「パーティー05/No credit」で繰り広げられた行為

・テーブルを出し、丸太を切って椅子にする。
・作った貨幣を並べてその価値を話し合う。
・ソーセージを茹でホットドッグを作る。
・単位が「パーツィー」に決まる。
・1パーツィー=100,000円とする。
・絵柄ごとに単価を決める。
・貨幣を撮影する。


party05 準備風景

パーティー実験場には、赤いカバーをかけられたテーブルが置かれています。その上に、前回製造し乾かしてあった貨幣を並べていきます。

party05 乾いた貨幣

乾いて色が明るくなった貨幣は、その絵柄もはっきり見えるようになっています。

party05 会議の雰囲気でスタート

テーブルの周りにcontact Gonzoとdot architectsのメンバーが着席し、「パーティー05」がスタートしました。今回は、ゆったりとしたヒーリングミュージックのようなBGMが流れる厳かな雰囲気のなかで、「GDP(Gonzo dot party)」が発行する新貨幣の価値を協議する重要会議としてのパーティーです。

party05 貨幣を確かめる

メンバーは思い思いに貨幣を触ったり、持ち上げたり、叩いてみたりしながら、その触感を確かめます。乾かしただけの貨幣をさらに完成させるために、焼成する、シリコンやチョコレートといった液体を流し込み、固めて型を取るなどのアイデアが出ました。

party05 ソーセージを茹でる

手前に置かれた小鍋では、並行してホットドッグを作るためにたくさんのソーセージが茹でられます。

party05 単位は「パーツィー」に決定

この新しい貨幣について、まず単位が「パーツィー」と定められました。通貨記号のデザインと、1パーツィーは日本円に換算して10万円ということも決まりました。

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続いて、5種類の絵柄ごとの単価が話し合われます。

party05 パーツィー一覧

上の写真のとおり左から2パーツィー、5パーツィー、10パーツィー、50パーツィー、100パーツィーとなりました。 下段は金塊化された各パーツィーのイメージです。

party05 パーツィー山分け

テーブル上にある財産を、一旦ここにいるメンバーで山分けすることになりました。好きな貨幣を選んで取り分けていきます。

 party05 塚原さん party05 三ケ尻さん

山分けの結果、例えば塚原さんは217パーツィー(=2,170万円)、三ヶ尻さんは49パーツィー(=490万円)を保有していることになりました。

party05 パーツィーと1万円札

パーツィーの価値について話す中で、1万円札とパーツィーを交換したいかどうかという問いには、今はまだ交換したくないなぁとの声も。当たり前ですが、パーツィーの価値に対する「信用」はまだないということですね。

party05 話し合いの様子.jpg

どうすればパーツィーを流通させられるかというテーマでは、展覧会を見にきてくれた方は、会場に展示してある貨幣を持ち帰ることができるようにして、それを後日何かと交換できるようにする、というアイデアが出ました。この案は、引き続き具体的に検討される予定です。

party05 パーツィーの金塊イメージ

最後には、松見さんがパーツィー貨幣の単価ごとの絵柄を撮影し、CGを使って絵柄を型にした金塊イメージを作成して「パーティー05」は終了となりました。

撮影(プロセス):吉見崚


「パーティー05/No credit」では、新しい貨幣「パーツィー」の価値と信用をめぐって、お金にまつわる各メンバーの感覚や思い出の話、またお金のかたち、お金と情報の関係などさまざまな方面にも話が展開しました。
会場には、痕跡として今回のテーブルと丸太の椅子が残され、パーツィーの見本が展示されています。また、見本以外の貨幣はお持ち帰りいただくことが可能です。持ち帰ったパーツィーは、今後価値が上がった時に備えて、大切に保管していただければと思います。

party05_テーブル

テーブルの上のパーツィー貨幣見本

party05_丸太は切って椅子として使われた丸太は切って椅子として使われた

party05_痕跡風景パーティー05が行われたエリアの全体風景

party05_持ち帰り可能な貨幣お持ち帰りが可能なパーツィー貨幣

撮影(痕跡):松見拓也

創造的実験「パーティー04/The factory is movin'」
鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」イベントプログラム

 2020.11.12(B1事務局 清澤)

鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」では、メインアーティストであるcontact Gonzoとdot architectsの2組が「経済」を独自に捉え直すための創造的実験「パーティー」を、会期中9回にわたって実施。経済をめぐる様々な視点から、多種多様な"創作、作業、遊び、etc...."が繰り広げられます。アートエリアB1には、「パーティー」での意図的行為と偶然の出来事の連鎖の痕跡が、会期を通じて蓄積し、鉄道芸術祭vol.10の展示空間を構成していきます。
毎回の「パーティー」を写真とともにレポートします。

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創造的実験「パーティー」全9回のスケジュールはこちら

「パーティー04/The factory is movin'」開催情報はこちら

11月12日の創造的実験・第4回目は、「貨幣工場稼働中」というタイトルが示すとおり、前回からの続きで貨幣を製造する実験に取り組みました。前回の「パーティー03」で丸太を彫り出して作ったさまざまな"貨幣の文様"を用いての貨幣製造が、どのようにして展開したのかご紹介します。


「パーティー04/The factory is movin'」で繰り広げられた行為

・ベルトコンベアで作業レールを設置する。
・粘土を一定の厚さに切る。
・丸太の版型を粘土板に突く。
・作業音をサンプリングしてBGMにする。
・出来上がった貨幣を並べて乾かす。
・炊き出しとしてアフリカ料理のドモダを作る。


party04 作業風景

この日は、貨幣製造の流れ作業を行うための装置と場づくりからスタートしました。壁面に展示してある《History of value》のベルトコンベアを取り外して、2本の作業用レールを設置します。貨幣の素材となる粘土は、300kg用意されました。

party04 粘土を切る作業

まず、四角い粘土の塊を一定の大きさにカットして1本目のベルトコンベアに載せていきます。これが貨幣の本体となります。

party04 丸太の版型

丸太の判型はかなりの重量があり、男性2人で抱えます。手前で1人が粘土板が運ばれてくるのを待ち構えて、コンクリートの土台の上に移します。

party04 丸太を粘土に突く

2人がタイミングを合わせて丸太を持ち上げ、もう1人がその真下にすばやく粘土を置きます。そして判型を粘土に突きます。

party04 粘土をベルトコンベアに移す

貨幣の判が押された粘土板は、2本目のベルトコンベアに載せられて、その先で乾燥コーナーに並べられていきます。

party04 貨幣

顔の紋様が押された粘土(貨幣)。この日の「パーティー04」では、この一連の流れ作業がひたすら続けられることになりました。

 party04 粘土 party04 丸太を突く

 party04 紋様 party04 貨幣アップ

写真左上から順に:粘土板を台に置く→粘土板に版型を突く→紋様が浮かび上がる→ベルトコンベア上の貨幣

party04 BGM三ケ尻さん

今回のパーティーでもBGMを担当するのは三ヶ尻さんです。丸太をつく音や作業のかけ声をサンプリングしながら、現場の作業ペースに合わせてリズムに緩急をつけた曲が流れます。サウンドが重なると、一連の労働そのものがお祭りやパーティーでの動きのように見えてきます。

party04 撮影&配信は松見さんparty04 松見さん撮影風景

撮影&配信を担うのは松見さんです。今回の配信では、右から左に流れるベルトコンベアの映像を中心に、判型を突く前の粘土板→判型を突くところ→貨幣になった粘土板という流れが見えるように画角がレイアウトされました。
また、同じ画面上で炊き出しのプロセスも見ることもできます。

party04 炊き出しをする塚原さん

炊き出しでは、塚原さんがcontact Gonzoのドイツツアー中によく作って食べたという、アフリカ料理の「ドモダ」を作ります。トマトベースのソースにピーナッツペーストを加えて、鶏肉などを煮込む料理だそうです。

party04 丸太をカット

全長3メートルの丸太はあまりにも重いため、1人でも突けるように丸太を適当な長さでカットすることになりました。

party04 作業風景

この工夫によって作業効率がぐっとアップし、貨幣の量産体制が整いました。

party04 作業風景

全体の作業風景。作業スピードが上がり、次から次へと貨幣が製造されていきます。

party04 貨幣を乾かす

出来上がった貨幣は、乾燥コーナーにずらりと並べられていきます。

party04 並べられた貨幣

貨幣の紋様は全部で5種類。見分けられるでしょうか?

party04 アフリカ料理「ドモダ」

見た目からも濃厚な味わいが想像できるアフリカ料理「ドモダ」が出来上がりました。

party04 後片付け

すべての粘土を使い切って、貨幣製造は完了。
作業レールのベルトコンベアはきれいに水拭きされて、元の展示位置に戻されました。

party04 ベルトコンベアも元の位置に


「パーティー04/The factory is movin'」で大量に製造された5種類の貨幣をはじめ、使用された道具などを痕跡として会場で見ることができます。
次回、貨幣製造シリーズの最終回「パーティー05/No credit」では、これら貨幣の"価値と信用"をめぐる実験が予定されています。引き続き、どうぞご注目ください。

party04 痕跡(貨幣)

パーティー04の痕跡:製造された貨幣

party04 痕跡(使用された判型)

パーティー04の痕跡:使用された判型

party04 痕跡(丸太)

パーティー04の痕跡:カットされた丸太

party04 痕跡(粘土台)

パーティー04の痕跡:粘土台と粘土を切る道具

 

撮影:吉見

「踊ることの政治学」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.10

 2020.11.11(B1事務局 スタッフ 丸塚)

人々が集団で歌って踊り、主張するという行為は、古代の祭祀から現代の民衆運動まで長らく受け継がれてきたものであり、感性を解放するという人間の根源的な営みとも言えます。

鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gono dot party)」のイベントプログラムとして2020年11月11日に開催したラボカフェでは、アナキズム研究がご専門の栗原康(くりはらやすし)さんをゲストにお招きし、おもに一遍上人の「踊り念仏」の話を中心に、踊りが政治や経済に与えた歴史についてお話いただき、鉄道芸術祭vol.10メインアーティストの塚原悠也さん(cotact Gonzo)、寺田英史さん・土井亘さん(dot architects)、そしてアートエリアB1運営委員の久保田テツさんとの対談を行いました。

▶「踊ることの政治学」イベントの詳細はこちらから

ゲストの栗原康さん

栗原さんには、まず冒頭でアナキズムとは何かということについて解説していただきました。よく「無政府主義」と訳されるこの思想は、語源から考えると「無支配」という意味合いが強く、政府に限らず私たちを支配するもの、いわば社会において有用とされているものに疑問を投げかけようとする思想だそうです。現在の社会においても稼げる人間を有用とする資本主義による支配が存在し、アナキストはこういった支配に疑問を投げかけると、栗原さんは語りました。ただし反資本主義を掲げると、今度はその主義に囚われて稼がないことが正しいと考えてしまう難しさがあり、何が正しいかに囚われないことがアナキズムの課題とも言えるそうです。

 

そして栗原さんが日本におけるアナキストの元祖として挙げたのが、「踊り念仏」で知られる一遍上人です。もともとは浄土宗を学んだ人物ですが、有用性を重んじる当時の社会や仏教界に疑いを持つようになり、時宗を開きました。時宗とは、文字通り時間という概念にこだわりを持った宗派です。時間は将来に関わるものであり、仏教においても大きな意味を持ちます。しかし時間があるからこそ人は有用性を求めると考えた一遍上人は、時間の価値を壊すために今という時間に没頭して仲間と念仏を唱えたと、栗原さんは語りました。

踊念仏のスライドを見せながら語る栗原さん

そして念仏を唱え続けることでトランス状態になった集団は、やがて周囲の人間も巻き込んで踊り狂い、屋敷に上がり込んで家財を壊すなど、町を混乱に陥れるまでになったと言われています。政治や経済といった社会の仕組みをも壊しかねなかったために、ほかの宗派や権力者からの反感を買ってしまいましたが、一遍上人の思想に多くの人が共感し、その踊りの列に加わったのもまた事実です。

なお一遍上人自体は、踊り念仏について多くは語らなかったと言います。しかし「はねばはね踊らばをどれ春駒の のりの道をばしる人ぞしる(子供や荒馬のように有用性に囚われずに手に負えないものになって、跳ねたければ跳ねれば良いし踊りたければ踊れば良い。本当の仏法はわかる人にはわかる)」といった一遍上人の和歌に、一遍上人が見いだした集団で踊ることの意義が現れています。

一遍上人は詩吟に造詣が深かったようで、弟子たちに何か尋ねられると詩吟で返していたそうです。ちなみに栗原さんも趣味が詩吟ということで、会場では実際に栗原さんによる詩吟で一遍上人の和歌が披露されました。

 

一遍上人の和歌を詩吟で披露する栗原さん

 

アートエリアB1で開かれている企画展「鉄道芸術祭vol.10」のメインアーティストであるcontact Gonzoやdot architectsのメンバーのみなさんも、栗原さんの軽妙なトークにすっかり引き込まれたご様子でした。

続く対談では、一遍上人の踊り念仏について、自身や自身の主張をよく思わない存在に対して集団で立ち向かうこと、社会において有用とされているものに疑問を投げかけていくこと、熱量をもって踊り狂うことのある種の無意味さ、あるいはそのパフォーマンス性など、本展で繰り広げられている多種多様な「パーティー」の態度にも通じる要素が取り上げられ、お話が展開しました。

前日のバタイユおよび西洋の文脈に続いて、この日は仏教や日本の歴史からの鉄道芸術祭テーマに通じるお話を聞いて、経済とパーティーというテーマが、さらに広がり深まっていく可能性を感じることができました。会期中に複数回予定されている創造的実験「パーティー」の積み重ねから、さらにどういったものが導き出されるのか、楽しみです。

鉄道芸術祭メインアーティストと栗原さんの対談風景

「駅舎の建築と余剰の美学 バタイユの全般経済学から」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.10

 2020.11.10(B1事務局 小原)

2020年11月10日に、鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」のイベントプログラムとして、『呪われた部分−全般経済学試論・蕩尽』をはじめとして、思想家ジョルジュ・バタイユをめぐる数多くの著書/訳書を手がけるフランス文学者の酒井健さんをゲストにお招きして、トークを開催しました。 カフェマスターは、メインアーティストのcontact Gonzoの松見拓也さん・三ヶ尻敬悟さんと、dot architectsの家成俊勝さん、そしてアートエリアB1運営委員の木ノ下智恵子さんです。

▶イベントの詳細はこちら

本展では、現代の経済システムがもたらす生産性・有用性重視の価値観を疑問視し、アーティスト独自の手法で、「経済」の捉え直しを試みています。その企画を構想する上で参照したのが、バタイユの著書「全般経済学試論」に見られる「蕩尽」という考え方でした。また、当館が京阪電車の駅構内に立地していることもあり、今回のトークでは、バタイユの「全般経済学」をふまえた「駅舎の建築と余剰の美学」について、酒井さんにお話いただき、続いてメインアーティストたちを交えた対談を行いました。

ゲストの酒井健さん

文学、哲学、宗教、経済、性、社会学など多くの分野を網羅するバタイユの「全般経済学」の紹介から、酒井さんのお話はスタートしました。 バタイユは、20世紀の二大世界大戦を経験したことで、戦争ではない消費のあり方を求め、考察するようになります。その中で有用性を求める近代経済学を批判し、「蕩尽」に大切な面を見出したといいます。バタイユのいう蕩尽とは、無益だけれども、芸術などを通して心から体までをも震わせて感動するといった、人間にとって最も大切なエネルギーの消費などを指しています。

酒井さんは、そういったバタイユの蕩尽の思想をふまえて、スペイン人建築家であり構造家のサンティアゴ・カラトラバの手掛けた駅舎を例に、建築物における余剰の美学についてお話されました。実用性のみを追求するイメージが強い駅舎ですが、カラトラバのつくる駅舎は、本来の駅の機能に加えて無益な喜びともいえる要素を取り込んだデザインとなっています。

カラトラバの代表作のひとつであるリエージュ=ギユマン駅(下記写真)は、ベルギーの交通主要都市リエージュに建っており、ヨーロッパ一美しい駅舎と称されることもあるそうです。この駅舎には、見開かれた目、掌の広がり、裸体のくびれなどの有機的な身体表現のインパクトがデザインに取り込まれており、周辺環境を含めた芸術作品にならしめています。

リエージュ=ギユマン駅.png

他にも、サン=テグジュペリ空港駅(フランス、リヨン)やシュテーデルホーフェン駅(スイス、チューリッヒ)など、カラトラバのつくる駅舎には、身体的な動きをデザインなどの機能的には無益な要素が、本来の機能にプラスアルファで取り込まれています。その結果、移動の通過点にすぎない駅舎という施設において美と感動が生まれ、芸術的価値が付与されるのです。移動のためだけでなく、駅に行くこと自体が喜びとなるような変化が生まれることになります。実際に、このリエージュ=ギユマン駅を見るためにリエージュを訪れる人が非常に増えたそうです。カラトラバ以前の駅舎において、このような無益な価値は注目されてこなかったようです。

カラトラバによって描かれた人体のデッサン.png

カラトラバの建築に影響を与えたのは、今もヨーロッパの街中に存在している教会たちです。中世に建てられたこれらの教会では、人面葉樹の精霊と聖人たちの彫刻が横並びで配置されたり、古代ローマ時代の伝説上の生き物や異教の大道芸人、あるいは男女が求愛するおおらかな図像が彫り込まれるなど、キリスト教には直接関連のない多種多様なものたちが共存しています。ここに、バタイユのいう蕩尽のありようを見てとることができます。

しかしルネッサンス以降は、自然界と人間は異なる秩序あるものとして切り離され、人間を中心に据えた有用性を求める文化が続きました。 バタイユも若いときは信仰深く、こうした中世の教会堂で祈りを捧げながら、余剰の美が現れた彫刻を目にしていたと言います。

また、カラトラバもこれらヨーロッパの歴史をふまえながら、「建築は運動的なものであふれている」という考えに至りました。そして、駅舎を設計するなかで、駅としての機能を重視しつつ、周囲の自然環境との協調、そして人体の動きから発想した無益で美しい部分も取り入れていこうとします。まさに最適化の中に、無益で無意味なものも取り込むことにあえて取り組んでいるのです。

最後に、メインアーティストのお三方も加わって、バタイユの蕩尽という思想と、その思想を感じさせるカラトラバの駅舎について、対談が行われました。

本来は実利的な通過点に過ぎない施設から「行きたくなる駅舎」という側面が強まった経緯や、パフォーマンスの場としての駅舎の可能性、そのほか有用性のある商業施設と化している現在の日本の駅舎とカラトラバの駅舎の違いなど、多岐にわたって話が展開されていきました。駅構内に立地する当館を会場に、経済を捉え直すための「創造的実験」を繰り広げるお三方の視点も加わったことで、さらに興味深いお話がいくつも生まれました。 そして芸術を通して、蕩尽が人間の大切な側面であることを発信していく意義を、再確認することができました。

ゲストの酒井健さんと、鉄道芸術祭vol.10メインアーティストたちの対談の様子.png

創造的実験「パーティー03/Make the money factory」
鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」イベントプログラム

 2020.11.5(B1事務局 清澤)

鉄道芸術祭vol.10「GDP(Gonzo dot party)」では、メインアーティストであるcontact Gonzoとdot architectsの2組が「経済」を独自に捉え直すための創造的実験「パーティー」を、会期中9回にわたって実施。経済をめぐる様々な視点から、多種多様な"創作、作業、遊び、etc...."が繰り広げられます。アートエリアB1には、「パーティー」での意図的行為と偶然の出来事の連鎖の痕跡が、会期を通じて蓄積し、鉄道芸術祭vol.10の展示空間を構成していきます。
毎回の「パーティー」を写真とともにレポートします。

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「パーティー03/Make the money factory」開催情報はこちら

11月5日に実施した3回目では、「貨幣工場を作る」というタイトルの下、貨幣を制作・発行するためのファクトリーを始動させました。この大掛かりな実験は、今回を含めて「パーティー05」まで3回にわたるシリーズで展開される予定です。創造的実験"貨幣シリーズ"の初回はどのようにして進んだのか、ご紹介します。


「パーティー03/Make the money factory」で繰り広げられた行為と出来事
・鉄骨の支柱に丸太を立てかけ貨幣工場をつくる。
・テーブルと冷蔵庫を移動し炊き出しの準備をする。
・丸太を彫って貨幣の判型を作る。
・彫る音をサンプリングしてBGM にする。
・料理が出来上がる。
・貨幣の判型が出来上がる。


party03準備風景

まずは、アートエリアB1に貨幣工場を設置するところから始まりました。単管を縦横に組み合わせて支柱とし、丸太を乗せる作業台をつくります。作業台の乗せられた5丸太の切り口に紋様を彫り、貨幣の判型を制作するという計画です。

party03貨幣工場風景

作業台上部にはラッシングベルトで2本のベルトコンベアが吊り下げられ、カメラが水平移動する簡易な撮影装置も完成しました。

party03炊き出し準備

労働には食べるという行為が欠かせません。どんな労働現場にも必ず食事の場があります。今回は作業をしながらcontact Gonzoの塚原さんが炊き出しをすることになりました。

party03 道具の確認

丸太を彫るための道具を確認するdot architectsのメンバー。ノコギリ、手斧、ノミなどに加えて、グラインダーや丸ノコ、チェーンソーも準備されました。

party03丸太を彫る家成さん

いよいよ木を彫る作業が開始しました。5人のメンバーがそれぞれ一本の丸太に取り組みます。思い思いの貨幣のイメージを思い描きながら、前半は丸太を大まかに成形するためにチェーンソーやノコギリを用いて加工していくパワフルな展開です。

party03丸太を彫る作業party03作業する土井さん

会場には、木屑が舞い散り、さまざまな機械音や作業の音が鳴り響きます。

party03録音する三ケ尻さん

そうした作業の音をcontact Gonzoの三ヶ尻さんが集音マイクで録音し、その場でサンプリングしながらBGMを制作し流していきます。

party03 BGM制作風景

三ヶ尻さんが即興で制作するBGMは、現場や配信映像の雰囲気に独特の起伏とリズムを生み出します。

party03カメラを設置する松見さん

主に撮影と配信を担当するのはcontact Gonzoの松見さん。ベルトコンベア上を流れていくカメラは、落ちる前に誰かが気づいて向きを変えるというルールです。

party03撮影する松見さん

複数台のカメラを用いてさまざまな位置と角度から撮影した映像が、ランダムに切り替わりながらライブ配信が進んでいきます。

party03作業風景

「パーティー03」の全体風景。手前では、BGM制作とライブ配信作業が行われ、その奥で貨幣の判型を彫る作業が進み、最奥の壁際では塚原さんが炊き出しをしています。

party03石田さん貨幣判型プロセス作業が進むにつれ、徐々にそれぞれの貨幣の判型が浮かび上がってきます。

party03家成さんの貨幣判型プロセス

dot architects石田さん(上)と家成さん(下)はいずれも、人の顔のような判型を彫り進めています。そういえば各国の通貨のコインでも、その国の重要な人物の肖像がデザインとして多く採用されていますよね。

party03土井さんの貨幣判型プロセス

一方dot architects土井さんの判型では、丸みを帯びたフォルムに幾何学的な紋様が刻まれていきます。

party03炊き出し

炊き出しも順調に進み、美味しそうな煮込み料理が出来上がりました。
そして貨幣の判型も完成。写真のとおり、形も紋様もさまざまな5種類の判型が出来上がりました。

party03貨幣の判型1 party03貨幣版型2

party03貨幣の判型3 party03貨幣の判型4

party03貨幣の判型5


「パーティー03/Make the money factory」の痕跡としては、貨幣工場コーナーと判型となった丸太、そして木屑が会場に残され、作業時の雰囲気を彷彿とさせます。
そして次回「パーティー04/The factory is movin'」では、この判型を実際に粘土板に突いて、貨幣を製造する実験に取り組むことになります。引き続き、この創造的実験の行方をお楽しみに!

party03痕跡1

完成した貨幣の判型と貨幣工場、そして作業の痕跡

party03痕跡2

party03痕跡3

パーティー03の痕跡(木屑)

party03痕跡4

パーティー03の痕跡(貨幣工場全景)

撮影:吉見崚

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