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「カラスが見た都市」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8

 2019.1.24(B1事務局 江藤)

町でふとカラスに出会ったら、なんだか気になる。カラスもこちらを気にしているような気がする。なぜだろう。カラスって...。

鉄道芸術祭vol.8の会期も残り数日となった1月24日に、カラスの研究者である松原始さんにお越しいただき、都市に生活するカラスについてラボカフェをおこないました。

東京大学総合研究博物館特任准教授の松原始さんは動物行動学がご専門で、京都大学の学部生、院生時代からカラスを観察していらっしゃいました。その頃の資料やデータとともにユニークなエピソードも披露していただき、カラスの生態や行動についてお話しいただきました。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

ラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭
「カラスが見た都市」
1月24日[木] 19:00ー21:00
ゲスト 松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

カラスはスズメ目カラス科カラス属の鳥で、世界には約40種類のカラスがいるそうです。日本で繁殖しているのは、嘴の太さの違いで名前がついているハシブトガラスとハシボソガラスで、この他に冬鳥として渡ってくるカラスや迷って来てしまったカラスなどが時折見られます。

ハシブトガラスは、もともとは森林の鳥ですが、町中によくいるのが見られ、ビル街なども問題にしません。対して、ハシボソガラスは水田や畑、河川敷など景色の開けたところが好きで、ビルの密集地などは好まないようです。

カラスは、ペアは縄張りの中で生活し、周りの縄張りの外で非繁殖集団が群れをつくっています。縄張りを持たないカラスは集団で寝ぐらをつくって眠ります。集団でいることで安全を確保しているそうです。木の上などでカラスが集まっている様子を不気味に思うことがあるかもしれませんが、ここにいるカラスは子どももいないので、人間にとっては安全だということです。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

カラスの縄張りは、1つ直径200〜300mぐらいの大きさで、松原さんの調査によると京都の町は縄張りでぎっしりと隙間なく埋まっているそうです。人間が生活の上空では、カラスの生態のレイヤーが存在しているということです。

ちなみに、カラスは捕獲することが大変難しく、足輪をつけて行動範囲を知ることができにくいそうです。松原さんが目視で見失わないように追いかけるという苦労を重ねて蓄積された貴重なデータです。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

さて、生きていくのに大事な食事についてですが、カラスは雑食です。セミやカマキリなどの虫、カエル、ザリガニなどの生物、柿、みかんなどの果実、くるみ、どんぐりなどの木の実、同じ鳥でも卵やヒナなど自分より弱い相手なら食べるそうです。また、魚の死骸などを食べるスカベンジャーでもあります。カラスは、生態系の食物連鎖のピラミッドで、光合成以外はすべての連鎖に関係しているジェネラリストと呼ぶそうです。

都市では人間の食べ残しのゴミをあさる姿をよく見かけますが、米、麦、ソーセージや焼き芋、スパゲティやジャンクフードも好きなようです。自然のものでは死骸を食べ、都市では人間の食べ残しを片付けるスカベンジャーだということです。

松原先生は学生時代に京都大学の近くで、カラスが居酒屋やお好み焼き屋のゴミやお墓のお供えを食べる様子を観察していたそうです。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

では、カラスにとって都市は生活する場としてどのように見えているのでしょうか。
食料は、都市でも果実や小動物など天然のエサも捕食でき、スカベンジャーとして人間の食べ残しも摂取できます。営巣場所としては、公園や並木、そして送電線やビルなどの建築構造の中にもしたたかに巣を作っています。家庭の針金ハンガーでつくった巣をご覧になったことがあると思います。次に、敵は町中には滅多にいない。ということで、都市はカラスが生きるのに都合が良く、山の中の生活をスライドさせて生活が可能だということです。

なんといっても、松原さん曰く、鳥にとって都市は「超・都市計画 〜そうなろうとするCITY」ならぬ、「鳥・都市計画 〜そうなっちゃってるCITY」なのですから。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

町かどでカラスの存在が気になるのは、近所ですれ違う人の存在が気になるのと同じようなものかもしれない。なんだか、あいさつをしようかしまいか逡巡してしまう。カラスと人間の関係はそんなものかもしれないなという気がしてきました。

「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8

 2019.1.17(B1事務局 江藤)

11月から始まった鉄道芸術祭vol.8の期間中には、都市に関連した様々な観点のラボカフェを開催してきましたが、今回は大阪大学大学院工学研究科准教授の入江政安さんにお越しいただき、"水の都"と呼ばれる大阪の水についてお話をしていただきました。 入江さんの研究は土木の分野で、普段は大地震などで津波が起こった際にコンテナや石油コンビナートのタンクなどがどのように漂流するのかをシミュレーションし、天気予報などの最新の気象情報と組み合わせて実際に生かすための研究をされています。

1/17 鉄道芸術祭vol.8「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」ゲスト:入江政安さん(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

ラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭
「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」
1月17日[木] 19:00ー20:30
ゲスト 入江政安(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

まず、大阪の水と人との関係について、明治28年の水道の敷設までの大阪の風景を、四天王寺の伽藍配置から落語で語られる場面まで幅広く紹介してくださいました。上方落語『矢橋船』『三十石』『百年目』などで登場する淀川は、ゆったりした流れを想像させます。流れが緩やかな分、水運が非常に発達してきました。大阪の代表的な川である淀川と大和川のつけ替えは、大阪の都市計画に大きな影響を与えたといいます。大和川のつけ替えによって、天然の良港だった堺の河口に土砂が積もって港の機能が悪化してしまったという経緯もあります。そういえば、ここ中之島も江戸時代の地図を見ると東側の先端の位置がもっと西側にあったのを思い出しました。このように川が流してくる土砂が大阪の地形を変えて、都市の機能を変えてきました。

1/17 鉄道芸術祭vol.8「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」ゲスト:入江政安さん(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

さて、現在の大阪の川はどうかといいますと、BOD(生物化学的酸素要求量)という水の汚染度の基準になる数値で比較してみると、清流と呼ばれる東北の奥入瀬川で0.7〜1.2㎎/ℓ、四国の四万十川で0.5〜0.9㎎/ℓに対し、大川で1.1㎎/ℓ、堂島川や土佐堀川で2.2〜2.9㎎/ℓ、道頓堀川で2.0㎎/ℓ、寝屋川で3〜10㎎/ℓとなっているそうで、意外ときれいな水になっているのがわかります。(数値は入江氏の説明資料から)とても嬉しいことがあって川に飛び込みたくなった時には、大阪のこれらの川のうち、道頓堀川に飛び込むのが正解とのことです。

川の水がきれいになり、大阪の飲み水も平成10年頃から設備が整ってオゾン処理が施され、美味しい水になっています。一方で、大阪の川は低い土地にある干潮河川であり、海水が入ってきやすい地形で、中之島の真ん中のあたりまで海水が入ってきているそうです。では、海の水はどうかというと、水自体はきれいになっているそうですが、底の泥が汚いまま残っているために、時折"青潮"という現象が起こっています。一見、水面は遠浅の海のように美しく見えますが、実は硫化水素の白い粒が水面に浮いてくるためにそのように見えるそうです。

1/17 鉄道芸術祭vol.8「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」ゲスト:入江政安さん(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

一方で、高度経済成長時代の海の水が汚い時代の方が瀬戸内では魚がたくさん獲れたともいわれます。下水処理場の処理能力を少し落として、海に栄養分を補給するという施策までが検討されるぐらいだそうです。

そして、今後日本は人口減となっていくことが予測されています。人口減になると自ずと産業活動が減退し、水はきれいになっていくのではないかと推測されます。環境規制は経済活動にとっては生産量の抑制などを強いるもので、今積極的に水質をきれいにすることがどうであるか、政治的にも考える時が来ていると入江さんはいいます。

トーク終了後、参加者からの質疑も活発におこなわれ、関心が高いことがよくわかりました。私たちの生命に欠かすことのできない水、これからの大阪、日本における人口動向や経済活動、都市のあり方とも合わせて考える必要があることを強く感じるお話でした。

電車公演「ラジオになろうとする電車」を開催しました。
鉄道芸術祭vol.8 イベント・プログラム

 2019.1.14(B1事務局 三ヶ尻)

1月14日(月祝)に鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」を開催しました。電車公演とは、走行する貸切電車を舞台にした一回かぎりの特別なプログラムです。今回は3両の電車をラジオブースに見立て、実験的かつ多彩な試みを繰り広げました。

今回の公演は、世界のナベアツこと落語家の桂三度さん、鉄道芸術祭vol.8参加アーティストであり奇才のゲーム作家・飯田和敏さん、そして、ゲーム『巨人のドシン』の音楽を手がけられたミュージシャンの浅野達彦さん、理論物理学者であり大の鉄道愛好家でもある小川哲生さん、「複製」や「コラージュ」といった手法の可能性について、コピー機やスキャナ、カメラなどのツールを用いて実験を繰り広げているアーティスト・ユニット、ザ・コピー・トラベラーズを出演者としてお迎えし、ラジオになろうとする電車が発車しました。

・ ・ ・ ・ ・

当日の様子を写真を交え、少しご紹介します。
中之島駅改札外で受付を済まされた皆さんは、特別切符と本日のチャンネル表を手にご乗車いただきます。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」当日配布した番組表

会場となる貸切電車は、大阪側から〈落語車両〉〈コピー&レクチャー車両〉〈ライブ&トーク車両〉と名付けられた3車両。参加者は、ひとつの車両に留まり他車両の様子をラジオを聞くように耳でゆっくり聞く楽しみ方や、車両間を自由に移動しパフォーマンスを間近で見る楽しみ方など、各々の味わい方でご乗車いただきました。

発車合図の笛の音が鳴り電車の扉が閉まると、鉄道芸術祭vol.8参加アーティストであるオスカー・ピータースさんによるオープニングの車内アナウンスが流れます。一気に車内は非日常的な雰囲気に。

 

車内アナウンスが終わるとお囃子の音が響き、〈落語車両〉にて高座に上った桂三度さんによる落語がはじまりました。幼少期は京阪沿線にお住まいだった三度さんは、京阪沿線にまつわる思い出話を皮切りに、リズムよく落語の世界へと観客をいざないます。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」桂三度さん(落語家)

 

ひと寄席終えると、オスカーさんの声で次の番組と会場となる〈ライブ&トーク車両〉の案内アナウンスが流れます。ゲーム『巨人のドシン』タッグ、飯田和敏さん浅野達彦さんによるライブ&トークです。

流れる車窓からの大阪の風景を眺めながら、浅野さんの奏でる音楽を聞いていると、ドシンが日々つくりあげるバルド島の様子や、人々の暮らしが想起されるようです。トークでは飯田さんも加わり、『巨人のドシン』の制作秘話や当時の話で盛り上がります。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」飯田和敏さん×浅野達彦さん

 

お次は〈コピー&レクチャー車両〉にて、小川哲生さんの8分間のミニ講座です。鉄でできた車輪と線路との摩擦関係について理論物理の視点から読み解かれました。小川さんは走る車内での講義ははじめてだと言いつつも、ホワイトボードを駆使し、誰にでもわかりやすい言葉と鉄道愛に溢れる解説を展開されました。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」小川哲生さん(理論物理学者)

 

そして同車両内には、発車してから延々と制作するザ・コピー・トラベラーズの姿が。この日は特別にコピー機を車内に持ち込み、作品をライブ制作していただきました。制作された作品は車内広告のように次々と各車両に吊られていきます。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」THE COPY TRAVELERS(アーティスト・ユニット)

 

特別電車は樟葉駅で折り返し、再び大阪方面へ走り出します。

再び巨人のドシンタッグのいる〈ライブ&トーク車両〉へ。夕方の時刻に差し掛かった車内では、日が沈みはじめ車内に夕日が差し込みます。ゲーム『巨人のドシン』の日没のテーマ「黄色い巨人」などを演奏いただき、車内は旅行の帰り路のようなセンチメンタルな空気に包まれるようでした。

 

帰路の〈落語車両〉では、桂三度さんが再登場していただきました。電車の揺れにとまどいながらも、すべてを笑いに変えていく三度さんの落語に車内は大いに盛り上がりました。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」桂三度さん(落語家)

そして最後の小川晢夫さんによる理論物理のミニ講座では、電車が停まる仕組みと摩擦についてお話くださいました。

一回限りの電車公演「ラジオになろうとする電車」は、終点のなにわ橋駅に予定時刻どおり無事到着しました。電波と電車に乗った小旅行は様々な試みに目と耳を奪われている間に終演を迎えました。

ご乗車いただいた皆様、誠にありがとうございました。

 

写真:守屋友樹

「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8

 2019.1.11(B1事務局 三ヶ尻)

11月10日からスタートしている企画展「鉄道芸術祭vol.8『超・都市計画』」では、「都市」「都市計画」というテーマを多角的な視点でさらに深く読み解く試みとして、様々なジャンルの専門家をお呼びし、関連トークプログラムを開催しています。1月11日は「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」をテーマに開催しました。ゲストは、老年医学を専門に研究されている内科医の神出計さんです。

神出さんは、高齢者に多い疾患を診るだけではなく、"健康寿命の延伸に繋がるヘルスプロモーション科学の実践"をモットーに、在宅医療や医療制度など、地域の高齢者の生活を支えるための仕組みの研究をされています。今回は、これからの人やまちを考えるために基本となる知識や、神出さんの研究やその成果、ご自身のお考えも含めてお話しいただきました。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

現在日本は世界一の長寿国であり、他の国が経験したことのない"超高齢社会"となりました。神出さんの研究室では、どうすれば私たちが健康に暮らし続けられるのかを考え、異なる分野の研究者や、まちづくり・行政・法制度の専門家との共同研究が進められています。

社会の高齢化を図る基準は、65歳以上のひとが人口の7〜14%で"高齢化社会"、14〜21%で"高齢社会"、21%以上は"超高齢社会"と定められています。2008年の時点で日本は"超高齢社会"となり、現在65歳以上の高齢者が人口の27%、75歳以上の後期高齢者が13%。つまり、高齢者が4人に1人、後期高齢者が8人に1人の割合となりました。

沢山の人が長生きできるということは、豊かで安全、清潔な環境があり、なおかつ医療が進んでいるからです。そして、私たちはこの状態をどのように保つことができるか考えていかねばなりません。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

とはいえ、将来日本は人口が大幅に減ることが予想されており、今よりさらに少子高齢化が進むとも言われています。加齢とともに病院に行かれる方も多くなり、社会保障に必要なお金も右肩上がりです。そして現在すでに、病院や病院のベッドの数、ケアする人も足りなくなっていることが問題視されています。

今までは病気をしたら病院へ行くことが常識となっていますが、これからは病気にならないようにする、介護を受けないようにする、という予防の時代がきていると神出さんは言います。疾患や介護の予防は高齢になってからでは遅く、若い時から健康について意識し予防を充実させることが大切です。そして、まちには個人個人が健康寿命を延ばす意識をもちやすい環境をつくることが必要です。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これらは病気ではなく加齢とともに起こりやすいといわれている病態です。

ロコモティブシンドロームとは、筋肉や関節・骨など運動器の衰えにより歩く、立ち上がるといった移動機能が低下する状態、サルコペニアとは、筋肉量が減少し筋力低下が起こることを示し、歩くスピードが遅くなったり杖や手すりが必要になるなど身体機能が低下した状態、またフレイルは、心身の活力の低下や他の慢性疾患の影響から、生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態を指します。
フレイルに関して厚生労働省研究班の報告書では、「適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」と示しており、ここでも予防の大切さを提唱しています。このような病態に対して、私たちひとりひとりができる予防は、良好な食栄養、身体活動、体力の増進、社会参加が有効とされています。

例えば、フレイルの症状の方に多い生活サイクルとして、以下のようなことがあります。
【あまり動かない → ︎お腹がすかない → ︎︎食事量が減る → ︎︎︎低栄養 → ︎︎︎筋肉が弱る → ︎︎︎体のバランスが悪くなる → ︎︎転倒しやすくなる → ︎︎︎転倒が怖いので動かない → ︎︎お腹がすかない → .........︎】
わたしの身近な高齢の方を思い浮かべると、当てはまりそうな方が多くいらっしゃいます。このようなサイクルを断ち切るためには体を動かすことが大切ですが、このサイクルに陥っている方が一人でモチベーションを高めることは難しいのが現状です。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

これからのまちを考える上で、注※)ソーシャル・キャピタルの高い環境をいかに作るかということが大切だと、話の端々から強く感じました。ソーシャル・キャピタルを高く保つためには、人を信頼すること、お互い様と思う気持ち、人と人とのネットワークを大切にすることなど、ひとりひとりが意識し日々作りあげていけるものです。その日々が積み重なった結果がこれからのまちになるのだと思いました。

お話の最後には、参加者の方々から病気予防、介護予防に関する質問が飛び交い、健康への意識の高さがうかがえました。神出さんをはじめ、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

注※)
コミュニティにおける人と人との信頼感や互酬・互助意識、ネットワークへの参加などを包括して"ソーシャル・キャピタル"と呼ばれている。この構成要素が働くコミュニティの方が、住みやすく働きやすいこと、課題解決のための行動を起こしやすいこと、またその集団の人々の健康を守るという研究成果の報告も出てきている。 
参考資料:大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻 総合ヘルスプロモーション
科学講座 ヘルスプロモーション・システム科学研究室ホームページ, 研究内容紹介, 4.ソーシャルキャピタル研究 http://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/~comger/kamide/researches.html

「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」
鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム

 2018.12.22(B1事務局 三ヶ尻)

鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画〜そうなろうとするCITY〜」の参加アーティストであるTHE COPY TRAVELERSは、それぞれが美術家として活躍する加納俊輔さん、迫鉄平さん、上田良さんで結成されたユニットです。12月22日に開催した「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」では、彼らの活動経緯や制作手法、また本展出展作品についてさまざまな角度からお話ししていただきました。

 

鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」

 

THE COPY TRAVELERSのはじまりは、加納さんと迫さんのアルバイト先にあったコピー機でした。
スタートボタンを押すだけでイメージが瞬時に紙にうつしとられ、どれだけ失敗してもすぐに次の制作に取りかかれるコピー機の面白さに魅了され、夜な夜な実験的に作品制作するようになったそうです。また、2人のアルバイト先に出入りする友人のひとりであった上田さんも参加し、現在のユニットとなりました。

コピー機の上に乗せるものは、スナップ写真、ドローイング、雑誌の切り抜きなど、3人それぞれが持ち寄ったあらゆる素材です。持ち寄ったものは出どころを問わず、切り刻む、何かに貼りつけるなど、どのようになっても構わないというのがルールだそうです。三人三様思うようにコピー機に並べ、どんどん出力していく、出力したものがまた素材のひとつになるなど、終わらないコラージュ作業の連続から作品が制作されていきます。

また展示する際は、机の上に作品を同等に並べ、現場で選び、展示位置を決定していくのが通例だそうです。長時間の話し合いになると疲れてきて展示作業が進まず、また、体力が有り余っていると喧嘩になるなどの経験を積み重ね、自分のアイデアを通すために他の2人が疲れるのを待ってみたり、黙って素材を追加してみたりと、ユニットならではのエピソードも明かされました。

 

鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」

 

展覧会を行う度に、美術業界や写真業界における作法をくずしていくようなチャレンジを行い、新たな視点を模索し続けてきたTHE COPY TRAVELERS。これまで彼らの作品制作は、スタジオやアトリエに篭りその場で完結していたそうです。そして今回、はじめてスタジオを飛び出し作品制作を行ったことが特徴のひとつだと言います。

本展のタイトルが「超・都市計画」と聞き、まず都市を体験することが大事だと感じたそうです。舞台となったのは大阪・中之島。彼らはたびたび中之島に出向いては、風景写真や素材となるものを採集し、それを一旦スタジオに持って帰り、雑誌の切り抜きやドローイングなど他の素材と同等に並べて制作し、できたものを再び中之島に持っていく作業を繰り返し行いました。

 

また、本展の副題である「そうなろうとするCITY」は、3人の発案から付けられたものです。
「CITY」という言葉は、あらゐけいいちさんの漫画〈CITY〉から引用されました。あらゐさんの描く〈CITY〉では、たくさんの登場人物、動物、モノが行き交い、一見関連性がないと思われたことが何かの拍子に繋がる瞬間や、読み手という視点で街を俯瞰していると予期していなかったコトやモノにスポットライトが当たる瞬間などを切り取り、物語る街の様子が、本展のイメージと重なったと言います。
また「そうなろうとする」という言葉には、街自体が主体をもっているイメージと、街を構成している人やモノ、コトなどの全てのものが、それぞれのゴールを目指して動き、勝手に組み上がっていくイメージを込められました。

これに対し迫さんは、コピー機の上でフレキシブルにモノを移動させながら作品をつくっていくTHE COPY TRAVELERSの作品制作と、漫画〈CITY〉で登場人物を固定せずたくさんの人やモノを出入りさせ物語る街の様子、制作のためにたまに訪れる中之島の風景が、時間帯や季節、道行く人の服装などによって異なってみえて感じることを重ねてみていたそうです。そして、フレキシブルに様々なことが行き交い、固定されない状態に"コラージュの未来"をみたと言います。

 

鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」

 

トークの最中、素材を何層も重ねている内に、そもそも誰のものであったのか、何を見ていたのかすらわからなくなってくるというような話が何度もでてきました。都市の風景とは、各々に動く人や動物、モノ、コトが重なり、固有名詞も見えなくなった頃、立ち上がって見えてくるのかもしれないと感じました。

 

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しかし、THE COPY TRAVELERSの描く都市風景は、決して個人やちいさなモノやコトを無慈悲に切り刻んでしまうものではなく、ひとつひとつに対する愛着や尊敬をもって素材を扱っていることが、作品から、そしてトークの端々からもひしひしと感じられました。

展覧会場では、上田さんのドローイングや中之島で撮影した写真を含む、本展をさらに深く読み解く報告書「THE COPY TRAVELERSのそうなろうとするCITY」を販売しています。ぜひお手に取ってみてください。

THE COPY TRAVELERSの皆様、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」
鉄道芸術祭vol.8 特別プログラム

 2018.12.8(B1事務局 三ヶ尻)

12月8日、9日の2日間、京阪電車「光善寺駅」構内のとある部屋にて、座主を写真家のホンマタカシさんが務める「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」を開催しました。 

「光善寺駅カメラオブスキュラ」とは2015年、写真家のホンマタカシさんが京阪電車「光善寺駅」構内に設置した、実際にカメラの仕組みの中に入り込み、カメラの原理を体感できる空間です。今回、この空間を新たに茶室として設え、ホンマタカシさんが自ら座主となり、各席限定6名のお茶会を催しました。

 

鉄道芸術祭vol.8特別プログラム|ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」【光善寺駅ホーム】

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鉄道芸術祭vol.8 特別プログラム
ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」
2018年12月8日(土)、9日(日)
①11:00-12:10 ②12:50-14:00 ③14:10-15:20
各席:6席
座主:ホンマタカシ(写真家、鉄道芸術祭vol.5プロデュース)

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開催の様子を写真にて、ご紹介します。
光善寺駅改札にて受付を済まされた皆さんは、駅構内のとある部屋まで案内されます。

 

鉄道芸術祭vol.8特別プログラム|ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」鉄道芸術祭vol.8 特別プログラム|ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」 

階段をのぼり、いよいよ茶室へ。

カメラオブスキュラとは、ラテン語で「暗い部屋」を意味するカメラの語源とされる光学装置です。
暗い部屋の片方の面に小さな針穴を開けると外からの光が穴を通り、穴と反対側の壁に像を結ぶ現象が起こります。また原理上、この方法で結ばれた像は上下左右が反転して映ります。

部屋が暗く手元がはっきり見えない中おこなわれた茶会では、茶や菓子の香り、舌触り、走る電車の振動、構内のアナウンスの音、そして内壁にぼんやりと浮かび上がる光善寺駅とその周辺の風景...
ひとつひとつ濃厚に繊細に味わう時間であったように思います。

 

茶会を終え外に出ると、茶会記にて今回の室礼を各々振り返ります。

 

鉄道芸術祭vol.8特別プログラム|ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」 鉄道芸術祭vol.8特別プログラム|ホンマタカシ「光善寺駅カメラオブスキュラ茶会」

 

ご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました。

 

席主:ホンマタカシ
水屋:中山福太朗
設営:dot architects
写真:守屋友樹

夜のゲーム菩薩、鉄道芸術祭会場にライブ降臨
鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 飯田和敏「夜のゲーム菩薩 in 鉄道芸術祭」

 2018.11.30(B1事務局 大槻、三ヶ尻)

11月30日、企画展・鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画〜そうなろうとするCITY〜」のアーティスト・プログラム、飯田和敏「夜のゲーム菩薩 in 鉄道芸術祭」を開催しました。

本展の参加アーティストであるゲーム作家の飯田和敏さんと、飯田さんが所属するクリエイターチーム・ゲーム菩薩グループのメンバーである中村隆之さん(サウンドクリエイター)、納口龍司さん(イラストレーター、デザイナー)をゲストにお迎えし、お話をお聞きしました。  

「夜のゲーム菩薩」とは、ゲーム菩薩グループのメンバーがテレビ電話越しにゲーム業界やゲームについてお喋りする様子を、インターネットを通じてライブ配信する番組です。この日は特別に、鉄道芸術祭の展示会場にメンバーが集結して番組をお送りしました。

 鉄道芸術祭vol.8|飯田和敏「夜のゲーム菩薩 in 鉄道芸術祭」【VRゲーム「水没オシマイ都市」】

〜VRゲーム『水没オシマイ都市』〜

まず話題は、ゲーム菩薩グループが制作した本展出品のVRゲーム『水没オシマイ都市』へ。
本作は、水没した都市空間を泳ぐ体験型の作品です。

プレイする人は、頭にVRのゴーグルをかぶり、両手にコントローラーを持ち、平泳ぎのような動作をすると前へ進む(泳ぐ)ことができます。現実の地図情報からステージを生成する「シマダシステム」を使用しており、実際の都市がゲームの舞台になっています。本展では中之島エリアがスタート地点になっていました。

また、複数人で同時にプレイできる"マルチプレイ"も可能な本作。今回は隣でプレイしている人とゲーム内でアバターとして再会し、ボディランゲージやアイテムを取り合うなどのコミュニケーションを取ることができました。外部からもアクセスができるように設定をすれば、どこにいてもゲームの中で会うことができるのだそうです。いつの日か、ゲームの中で誰かと待ち合わせ...なんてことが起こるかもしれません。

本作に取りかかった時は販売をするつもりで開発を進めていました。しかしVRコンテンツがなかなか一般に普及しないという大きな問題がありました。開発の締め切りがなく、リリースする必然性もない中、展示のためのゲームも存在するのではないかと考えたそうです。そして今後、どんな風にどんな場所でどんな場所を水没させていくのか、様々な場所で展開していきたいと意欲的に話されていました。

 

〜ゲーム菩薩 私たちはなぜゲームから卒業できないのか?〜

飯田さんは、ガンダムや絵画など様々なことに一時期入れ込むことがあっても何かの拍子に卒業したが、ゲーム作家となった今もゲームで遊ぶことからは卒業していないといいます。

鉄道芸術祭vol.8|飯田和敏「夜のゲーム菩薩 in 鉄道芸術祭」【私たちはなぜゲームから卒業できないのか?】

「すべては時が解決する」といいますが、苦しい時間をやり過ごすための最適な手段がゲームであったと、ご自身のゲーム体験を振り返り"救済"の観点で語られました。不幸な出来事が不可抗力によって身に降りかかることがあるのに対し、ゲームの中の内的な世界ではラッキーな偶然を自分の手で掴むことができます。飯田さんはゲームが本質的に心を救済してくれるわけではないと言います。しかし、長い時間日常から離れることができ、そこにはキュアするための一つのシステムがあったと話されました。「ゲーム菩薩」という名も、"救済"に由来しているそうです。  

また、卒業しない理由として挙げられたのは、ビデオゲームやコンピューターゲームの持っている側面のひとつとして、私たちの生活には未だ組み込まれてない新しい技術やシステムを、一足先に"遊び"というレベルで体験ができることも大きいと話されました。

休憩を挟み、来場者からの質疑を交えて話はさらに深くなります。

鉄道芸術祭vol.8|飯田和敏「夜のゲーム菩薩 in 鉄道芸術祭」

〜VRと現実〜

来場者から『水没オシマイ都市』をプレイした時にVRの中と身体がシンクロする感覚がありとても驚いたという声をいただきました。飯田さんは、身体知の有無がシンクロする感覚を引き起こしているのではないかと言います。平泳ぎをした経験がない人は「平泳ぎで泳げば泳げますよ」と伝えても理解ができないが、経験のある人は水の抵抗の感覚などが身体知として残っていて、それがVRの中でも喚起されるということに展示をして気がつかれたそうです。ということは、これまでのゲームにはできないことができる喜びがあったが、VRはできることしかできないという反転が起こっているのではないか、つまりVRと現実は1対1の関係であり現実は拡張されていないのではないかと考えるようになったそうです。

鉄道芸術祭vol.8|飯田和敏「夜のゲーム菩薩 in 鉄道芸術祭」ゲーム菩薩グループのお三人

 

昨今、VRを利用して、アスリートの訓練や医者に手術の体験をさせるなど、現実に繋がる経験を積ませる傾向も世界的にあるそうです。しかしそこにも根底には、身体の基礎能力や身体知に委ねられている部分が強いようです。トークでは、臨死体験や悟りを開くなど身体知のない経験をVRで行い、後に現実の体験として繋がる時に、どのようなコンフリクトが起きるのかなど、今後の展開を妄想しておおいに盛り上がりました。

ゲーム菩薩グループの皆様、そしてご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8
「都市計画の思想と場所」(中島直人さんをお迎えして)

 2018.11.13(B1事務局 江藤)

鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画 そうなろうとするCITY」の第1回目のラボカフェスペシャルは、まずは都市計画について、過去と現在の考え方そして未来のあり方を皆さまと考える場を持ちました。

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ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8
「都市計画の思想と場所」中島直人(東京大学工学系研究科 准教授)
2018年11月13日(火)19:00-21:00
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ゲストの中島直人さんは、都市の空間ができた意図とそのデザインを研究される一方で、都市の再生や構想のプロジェクトに取り組まれています。これまでの研究は、日本では関東大震災の2年後、1925年に始まった"都市美運動"に関するものと、日本都市計画学会の学会賞"石川賞"の名のもとになっている石川栄耀に関する研究が主なもので、それぞれ著書を刊行されています。石川栄耀は東京の戦災復興の責任者であり、現在の新宿・歌舞伎町をデザインした人物ですが、「『都市計画』と云う華々しい名前を有ちながら自分達の仕事がどうも此の現実の『都市』とドコかで縁が切れてる様な気がしてならない」註1)ということばを残しています。お話をお聞きするにつれ、このことばが、中島さんの都市計画に対する考え方の原点になっているように感じられてきました。

中島さんは、自身の研究を通しての都市計画のあり方について、「もっと多くの市民が共有したり参画できるものがあったのではないか。今でもそれがあるし、大事なのではないかということを考えて研究している」と言います。 現在では私たちも耳にすることのあるアーバニズムという都市計画の思想の変遷を辿りながら、中島さんの考え方に近づいていきました。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

アーバニズムの潮流

20世紀に入って都市の集中化が進むにつれ、都市においてかつて強かったコミュニティが解体される様子に問題意識を持つ人が増えてきました。そこで、社会学の分野で"アーバニズム"ということばが生まれ、アメリカのシカゴで研究が始まりました。これまで都市を考える学問は細分化され専門家の仕事でありましたが、これを包括的に、あるいは別の視点を入れて考える必要性が出てきたということです。

1990年代には自動車中心社会やそれによる都市の姿の弊害からさらに関心が高まり、サステナブルな未来を志向して都市を考える"ニュー・アーバニズム"という思想が興ってきます。ここで大事な点は、アーバニズムの思想には、都市に暮らしている人々の"実態の概念"と、社会をより良いものに変えていこうとする"規範的概念"の二つの要素が組み合わさっていることだと中島さんは言います。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

2000年代には、人工の構造物でつくられている都市空間を、もとある土地の自然の水系や生物など生態的なものを都市のインフラとして回復させるという"ランドスケープ・アーバニズム"や"エコロジカル・アーバニズム"が生まれました。

そして、2010年頃からは、行政主導で都市全体を大きく変えるトップダウンの進め方に対して、小さなアクションを試し、そこから出てくる課題を計画に組み入れていく"タクティカル・アーバニズム"が多く実施されています。

中島さんが現在進めておられるプロジェクト『高島平プロムナード再生』註2)は、1970年代に生まれたニュータウン高島平への新しい居住者の流入を目的として実験的なプロジェクトから始められたもので、タクティカル・アーバニズムの例と言えるかもしれません。かつては道路と鉄道のエリアと居住エリアを隔ってきた干渉緑地を、役割を捉えなおして、休憩できるスペースや腰かけ台を設置してみるなどの実験をおこないました。すると、住民たちはその空間を使い出し、実験を重ねることでニーズが見えてきたり、ここを使いたい人や用途が新たに生まれてきたりしているそうです。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

都市計画と人の関係、未来の都市の姿

都市計画の思想の変遷を辿ると、都市が交通インフラや建物などのハードを中心に計画されていた時代から、現代ではそこに住む人々の生活との関連性がより強まってきているのが感じられました。中島さんは、コペンハーゲンやニューヨークの人々の生活が都市の空間にデザインされた例を挙げながら、同時に「いいまちにはそのまちを面白いと思っている人、面白い場をつくっている人がいる」と言います。アーバニズムには、アーバニスト(都市計画家)の存在が、欠かせないということです。

大阪は日本では水辺の利用が進んでいるといわれますが、来場者の質問に中島さんは「大阪の人は水が都市をつくってきたという意識が強いのではないか」と答えられました。まちの人の気質が都市をつくっている顕著な例だと言えるのかもしれません。では、未来の日本の都市はどうなっていくのでしょう。多数となる高齢者のモビリティが確保される姿になっていかざるをえないであろうと、中島さんは考えています。それは、自動運転や他の新しい技術革新を伴っていくでしょう。未来のアーバニストはどのような生活スタイルを求め、都市は様々な要素を包み込みながら、どのようになろうとするのでしょうか。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

註1)  中島直人氏スライドより 「『盛り場計画』のテキスト 夜の都市計画」、『都市公論』、15巻8号、1932年
註2) プロジェクト名『高島平プロムナード再生』は当日配布資料より

ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8
鉄道芸術祭vol.8オープニング・プログラム 「ギャラリートーク&パーティー」

 2018.11.10(B1事務局 江藤)

鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画 〜そうなろうとするCITY〜」が開幕し、初日の11月10日(土)15時よりオープニングプログラムのギャラリートーク&パーティーをおこないました。

本展覧会では、日本初紹介となるオランダ出身のオスカー・ピータースさん、加納俊輔さん、迫鉄平さん、上田良さんによるユニットTHE COPY TRAVELERS、ゲーム作家の飯田和敏さんの3組のアーティストに参加していただいています。

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まずはロビーで、それぞれから自己紹介をしていただきました。 

オスカー・ピータースさんは、
自身のホームページをスクリーンで見ながら過去の作品を紹介されました。ピータースさんは動きを取り込んだ彫刻作品をつくるアーティストです。お客さんがコインを入れると鉄棒に吊られたチェーンソーがいきなり動きだす作品など、時には危険を伴う作品を発表していて、人間の感覚にある楽しさとスリル感を同時に楽しむという相反するような性質に着目されています。

11月10日開催 鉄道芸術祭vol.8オープニングトーク/Oscar Peters

 

THE COPY TRAVELERSは、
写真や映像を使った作品などでそれぞれ個人として活動する傍ら、2014年秋頃から一緒にコピー機を使った作品などを作るようになりました。煩わしい作業なしでコピー機の上にいろんなものを載せてスタートボタンを押すと一瞬にしてイメージを定着させることができるということに面白みを感じ、コピー機、カメラ、スキャナ、PC作業など光学機器などをフルに活用しながらイメージをどんどん作っていくことを続ける、終わらない作業の中に作品があります。

本展覧会のポスターやパンフレットなどのメインビジュアルは、THE COPY TRAVELERSに作品と同じ手法で手掛けてもらっており、ここにはオスカーさんのコースターのライダーである「ピーナッツマン」、ゲーム作家の飯田和敏さんのゲームキャラクターの「巨人のドシン」の存在が写っています。

11月10日開催 鉄道芸術祭vol.8オープニングトーク/THE COPY TRAVELERS

 

飯田和敏さんは、
1999年ニンテンドー64DDというハードでプレイできるゲーム<巨人のドシン>を復元して展示。実際に来場者の皆さんに遊んでもらえる最後のものになるだろうとのことです。もう一つの展示は、最先端のVRを使った、オープンソースの地図データシステムを使ったゲーム<水没オシマイ都市>。中之島を起点にして、リアルタイムに土地の姿を来場者の皆さんで生成していくというゲームです。

11月10日開催 鉄道芸術祭vol.8オープニングトーク/飯田和敏

 

 

本展覧会では、二次元のTHE COPY TRAVELERS、三次元のローラーコースターを作るオスカー・ピータースさん、四次元ゲームを作る飯田和敏さんという三者で会場を構成しています。

異なる次元の三者が同じ空間で展示することについて、THE COPY TRAVELERSの迫さんは、オスカーさんの作品越しに配置を考えていき、場所によっては見えづらいところもある点など、「都市計画」に結びついていったと言います。

ところで、「そうなろうとするCITY」という副題をつけていただいたのはTHE COPY TRAVELERSです。上田さんによると、あらゐけいいちさんの漫画<CITY>やカート・ヴォネガット・ジュニアの小説<タイタンの妖女>が考えのエッセンスとなったそうです。特定のものが人によって重要度や捉え方が違うということ、何かを動かすために必要な意思というものが自分とは離れたところにあるという物語の要点が、都市が自分たちの意思とは違ってどんどん変化していくさまに同様のものとして感じられ、都市自体が意思を持ってつくっていくものであれば、自分たちも豊かにものをつくられるのではないかと考え、「そうなろうとするCITY」という言葉に至ったと言います。

オスカーさんのローラーコースターは、コースターの部分を第三者に作ってもらうという要素があり、それはinclusiveness、いろんなものを包み込んでいくような性格の作品であることを重要視しているそうで、飯田さんはビデオゲームは作者の思いとおりにプレイしてくれないので、inclusivenessということを織り込まないとつくれないと言います。まさに、都市の形成というものにリンクするようなお話でした。

 

 

次に、ギャラリースペースを歩きながら、各作品のアーティストに説明をしていただきました。

11月10日開催 鉄道芸術祭vol.8オープニングトーク/Oscar Peters《Underground》

入って正面の長い壁面には、THE COPY TRAVELERSの多数の作品が横長に掲示されています。中之島を三人で歩いたり、各々で散策したりしながら撮影した写真素材やオブジェクトを並べて作品化していったそうです。

オスカーさんは、まずコースターを製作したdot architectsの皆さんに謝意を述べられた後に、作品を設計する際に苦労したことを話されました。というのも、アートエリアB1のギャラリースペースの天井高があまり高いほうではなく、それに比べて奥行きが長いということでライダーが走りきることを可能にするために苦心したそうです。

11月10日開催 鉄道芸術祭vol.8オープニングトーク/飯田和敏 (ゲーム菩薩グループ)《水没オシマイ都市》 

ローラーコースターのコースの中には、飯田さんがメンバーとして参加されているゲーム・クリエイターチーム「ゲーム菩薩グループ」の作品<水没オシマイ都市>のスペースがあります。

ちょうど、来場者の方が体験をされていて、その動作を見ながら飯田さんが説明を加えられました。プレイヤーはヘッドマウントディスプレイを装着し、両手にコントローラーを持って、平泳ぎをするように進んでいきます。

コースの外に、飯田さんの20年前の実際に販売されていた<巨人のドシン>の作品があります。来場者の方が実際にプレイをした履歴が保存され、新しい土地が造成されていきます。

  

鉄道芸術祭vol.8・特別冊子「THE COPY TRAVELERSのそうなろうとするCITY」

壁面とは別に、コースの中や<巨人のドシン>の左の壁面には、THE COPY TRAVELERSの作品があり、柱面には彼らの制作プロセスを記録した映像が流れています。また、本展の特別冊子「THE COPY TRAVELERSのそうなろうとするCITY」を本展の受付にて限定販売しています。

 

 

 

飯田さんの「作品を内から見ているのか外から見ているのかという視点でとらえなおすと面白いのではないか」という言葉は印象的でした。THE COPY TRAVELERSの作品の中にある世界と外、ローラーコースターの内と外、ゲームの世界の内と外、展示空間と眼下に見下ろせる駅という現実空間など、意識が曖昧になっていくような感覚の揺らぎも楽しんでいただけるのかもしれません。

その後、展覧会の実現に協力いただいた方、プログラムに参加してくださった方々に感謝の気持ちを込めて、そして開幕を祝って、お越しの皆さまで乾杯をし、参加アーティストを交えて歓談の時間を過ごしていただきました。 

11月10日開催 鉄道芸術祭vol.8オープニング・プログラム

鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画〜そうなろうとするCITY〜」は来年1月27日(日)まで、そして1月14日(月・祝)には電車公演「ラジオになろうとする電車」を開催します。引き続き、みなさまのご来場、ご参加お待ちしています!

(撮影:Yuki Moriya)

 

鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」
鉄道芸術祭vol.7イベントプログラム

 2018.1.20(B1事務局 三ヶ尻)

11月10日より、約2ヶ月半にわたり開催してきた鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」

展覧会最終日の前日となる1月20日(土)、ゲストとして太陽バンド野村卓史さん(a.k.a.グットラックヘイワ)、そして鉄道芸術祭vol.7メインアーティストの立花文穂さんにお越し頂き、鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」 を行いました。

太陽バンド(=畑俊行さん)と野村卓史さんによる音楽ライヴは「ハタチのわたし」を皮切りにスタートしました。

1.20鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」

■セットリスト

M1.ハタチのわたし

M2.ガールフレンド

M3.UZMAKI

M4.つらら

M5.東京グラフィティ(with とんちピクルス)

M6.夢の中で泣いた(with とんちピクルス)

M7.セレナーデ

M8.IL TRENO(THE TRAIN)

M9.かつて彼らが旅したように

アンコール. 夏の終わりの大三角形

 

今回ライヴ会場となったのは、鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」の展示会場の真ん中。

壁に写る立花文穂さんの映像作品「川の流れのように」を背中に、太陽バンドの力強く熱のこもった声と、野村卓史さんの心地よく五感に染み込むような音が混ざり合います。

 

1.20鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」メロウな曲で会場をしっとり、そしてうっとりさせていた時、今回シークレットゲストとしてお越しいただいたとんちピクルスさんに登場して頂きました。

「東京グラフィティ」では、痛快でリズミカルなとんちピクルスさんのラップで一気に会場を盛り上げます。 全国津々浦々、鈍行電車を乗りついでライヴ会場へと向かうとんちピクルスさん。乗り継ぐ電車の中でつくられた曲「夢の中で泣いた」では、参加者の方々が左右に揺れたり、目を瞑ったりして、音に心地よく身を委ねる様子が度々みられました。

 

1.20鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」

そしてライヴのクライマックスとして、鉄道芸術祭vol.7の為に用意された曲「IL TRENO(THE TRAIN)」を初生演奏していただきました。

こちらの曲は、鉄道芸術祭vol.7のはじまりとなったポルトガルの旅の途中、立花さんが蚤の市でみつけた古楽譜「IL TRENO(THE TRAIN)」を野村さんに託したことからはじまりました。今回のライヴでは曲の最後に「中之島ブルース」をミックスし、クロージングイベント特別バージョンとして演奏されました。客席から手拍子が起こり会場が一体となります。(ポルトガルの旅については、使節団トーク『車窓の窓から〜ポルトガル編〜』からご覧下さい。)

さらに、こちらも鉄道芸術祭vol.7に出展された作品のひとつ「かつて彼らが旅したように」でライヴは締めくくられました。こちらは、本展参加アーティストであり、ポルトガルの旅のメンバーでもある作家・石田千さんが作詞され、そして作曲を太陽バンドにして頂きました。

1.20鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」

続いて会場は、立花文穂さん、太陽バンドと野村卓史さんによる鉄道芸術祭vol.7クロージングトークへうつります。

はじめに、さきほど演奏いただいた曲「IL TRENO(THE TRAIN)」からトークはスタートしました。

「IL TRENO(THE TRAIN)」は、約50年前にウォルター・ベルトラミという音楽家が即興で演奏した音を譜面に書き起こしたものです。とくにこの曲は、タイトなリズム、曲芸のような変拍子基調というようにウォルターの超絶テクニックを持ち合わせた演奏だったため、譜面をみた者を驚かせるほど難解な楽譜となったそうです。
立花さんからこの楽譜を渡された野村さんも例外ではなく、真っ黒になるくらいに音符が並ぶ譜面をひとめ見ただけで、これは難しい曲だと感じたと言います。しかし、野村さんは一度曲を聞いてみて興味が湧き、立花さんからの申し出を受けたくなったと言います。

 

そして話題は、本展のタイトル「STATION TO STATION」へ。

そもそもこのタイトルは、デヴィッド・ボウイが "いかに異文化を取り入れるか" をテーマに制作した9作目のアルバムのタイトルから引用したものでした。このアルバムには、新しい文化を取り入れるメタファーとして、タイトルに「駅」が使用されたと言われています。

展覧会が進むにつれ立花さんは、《AからB》《場所から場所》《文化から文化》へなど2点が繋がること、その繋がる過程、またはレールのように2本の鉄が横に並ぶことによりはじめて鉄道が走ることができるなど、ひとつではなく【ふたつある】ということの重要性に改めて気がつき、「STATION TO STATION」というタイトルが本展に相応しいと日々重ねるごとにさらに実感していったと言います。

1.20鉄道芸術祭vol.7クロージングイベント「IL TRENO(THE TRAIN)」クロージングトーク

本展は【鉄道と身体・知覚・行動】をテーマに、21組の異なるジャンルのアーティストたちによって展開されました。立花さんが責任編集長を務める雑誌『球体七號』としても展開していた本展では、「七號(上リ)」「七號(特別臨時便)」「七號(下リ)」「七號(下リ・最終便)」を刊行。本展のオープニングトーク『立花文穂、STATION TO STATIONを語る』で立花さんがおっしゃった「『球体』はできあがってからできていく。」という言葉のとおり、展示会場も日々進化していきました。

たくさんの点と線が行き交い、約2ヶ月半にわたり開催した鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」。ご来場くださいました皆様、展覧会を支えてくださった皆様、誠にありがとうございました。

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