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「見えない世界の現し方」(五十嵐大介さんをお迎えして)

 2017.3.20(B1事務局 スタッフ 菊池)

展覧会「ストラクチャーの冒険」最終日の前日、1月21日(土)に、出展作家の一人である漫画家の五十嵐大介さんをゲストにお迎えして、トークプログラム「見える世界と見えない世界を描く/漫画家・五十嵐大介」を開催しました。今回は、進行役として京都マンガミュージアムの研究員である伊藤遊さんにもお越し頂き、五十嵐さんの作品の魅力に迫りました。

「魔女」紹介

五十嵐さんは、緻密な描写と独特の世界観で、自然と人間の繋がり、神話や伝承の世界、生態系や生命のなりたちを描き出す漫画家として知られています。今回の鉄道芸術祭では、五十嵐さんの代表作の一つである短編集『魔女』(小学館)などの原画をもとにしたインスタレーションにより空間を構築しました。

五十嵐さんの代表作には、
魔女という一貫したテーマに独自の視点を加えて描かれた短編集『魔女』、
海と港町と水族館を舞台に、宇宙と生命の成り立ちに迫る長編作品『海獣の子供』、
五十嵐さんご自身の自給自足の経験をもとに描かれ、2014〜2015年に映画化された『リトル・フォレスト』などがあります。

今回のトークでは、それぞれの作品のルーツを紐解きながら、展覧会のテーマである「ストラクチャー」(文明や歴史を内包する世界の構造)に対する、五十嵐さんの視点や考えをお伺いしました。

 展覧会使用コマ

五十嵐さんの作品に共通する魅力の一つとして、非常に緻密に描かれる風景・景色がありますが、それらの風景や景色のほとんどは、実際に五十嵐さんが見てきた景色が多いそうです。

五十嵐さんにとって、旅先での風景のスケッチは、初めて行った場所や空間と仲良くなる為の行為だと言います。

もともとは、周りの生き物を観察したり、好きな歌を口ずさんだりすることで、その場所と徐々に馴染んでいく感覚があったそうですが、次第にその詩や言葉が自分のもので無いことが気になりはじめます。そして、自分なりの手法で場所へアプローチすることを考えた結果、スケッチという手法に行き着きました。
スケッチを通して、初めて会った場所と仲良くなり、描き終わった時にはその場所と繋がる感じがして、顔を上げると景色が違って見えるそうです。

「自分と空間を隔てている距離感がなくなり、"自分がちゃんとそこにいる感じ"」

その行為は、漫画のためのメモというわけでも、練習というわけでもなく、五十嵐さん曰く、その場所に「あいさつ」をする行為なのです。 

意外にも、漫画という平面的な表現に対して、空間の捉え方がすごく身体的で驚きました。

 スケッチ

今回の展覧会「ストラクチャーの冒険」では、社会や経済、そして生命のシステムを構成する既成概念や既知のストラクチャー(様々な構造や制度、仕組みなど)をアーティストが独自の視点で捉え直し、創造的にそれらを超えていく、ということが狙いの一つです。

では、五十嵐さんは、どんなふうに世界を捉えているのでしょうか。

以前、沖縄の取材から帰ってきた五十嵐さんは、飛行機から見た都市の姿が、地面にくっついている瘡蓋のように見えたと言います。何か下にあるんじゃないか、うごめいているんじゃないかと。 

また、五十嵐さんは「絵を描く」ということは「見る」ことが前提であり、「描く」より「見る」ことの方が大事で、大きな要素を占めていると言います。その結果として、こうした作品が出力されていっている、と。

おそらくこの「見る」という行為の背景には、表面的な情報をただ受け取るだけではなく、どのように見るのか、何を見るのか、そして何が見えていないのか、ということが非常に大事なこととしてあると思います。

五十嵐さんの作品をみていると、現代の日本に生きる私たちにとって、とても見え辛くなっている世界があることを再認識します。五十嵐さんにしか見えない、感じられないものを丁寧に漫画へと変換して、もう一つの世界のストラクチャーを示して下さっているのだと思いました。

 海獣の子供

 五十嵐さん

「圧倒的物質で人と社会を揺さぶる/現代美術家・榎忠」(榎忠さんをお迎えして)

12月17日、鉄道芸術祭vol.6「ストラクチャーの冒険」参加アーティストのお一人、現代美術家の榎忠さんをお迎えして、トークイベントを開催しました。

ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭
「圧倒的物質で人と社会を揺さぶる/現代美術家・榎忠」

榎忠さんは、「グループZERO」として、神戸の市街を都市劇場に見立て集団でハプニングを繰り広げたり、大阪万博のシンボルマークを体に焼き付けた 「裸のハプニング」や、「ハンガリー国へハンガリで行く」など独特のパフォーマンス活動を展開する他、 大砲や銃、原子爆弾、ゴミなど、身の回りに潜む危機や不穏因子に着目し、鉄の廃材や金属部品を用いた全長数十メートル、 総重量数十トンといった超スケールの作品でも知られる現代美術家です。
今回のトークでは、見るものを圧倒する力強い作品を生み出し続ける榎さんの創作活動について、また、その作品の背景に見えてくる人類の文明の歴史や、世界の様々な構造(ストラクチャー)などについて、お話いただきました。

榎忠さんトーク.JPG

超満員で立ち見が出る中、トークが始まります。
榎さんは、20代の頃には絵画制作をされていましたが、絵だけではご自身の考えを表現しきれないと感じ、体を使ったパフォーマンスもされるようになりました。 写真に写っているスライドは1970年の「裸のハプニング」。これは、日光でご自身の腹部に大阪万博のシンボルマークである桜型を焼き付けて行われたパフォーマンスの写真です。
そして、"自分の生活は自分でまもる"という榎さんの信念を表した「LSDF(Life Self Defense Force)」、「ハンガリー国へハンガリ(半刈り)で行く」、榎さんの願望から生まれた"ローズねえさん"が営む幻のバー「Bar Rose Chu」、神戸ポートアイランド博覧会で発表された巨大な「スペースロブスター」等々、歴代の代表作の制作経緯をユーモアを交えてお話いただきました。

超スケールの作品の印象からか、「『大きな人』とイメージをされがち」と笑いながら語る榎さんは、神戸で旋盤工として勤めながらアーティスト活動をされてきました。
榎さんの作品は、どれも廃材にアクセスできる特殊な環境にいたからこそ生まれた問題意識が元になっているといえます。

榎忠さんトーク.JPG

榎忠さんトーク.JPG

「いつまでも繰り返される戦争や紛争。開発する一方で、後の処理を考えない人間。
新聞やニュースで得られる情報はごく一部で、正しいのかも定かではない。だから想像し、表現する。
戦いが起こらないようにアートで戦っている」。 
そう語る榎さんは、作品を発表する場として、より社会や人々の日常に近い場所を選ばれます。「美術館など制約がある場所ではなく、好きな場所でやりたい」という言葉通り、毎回時間をかけて展示のための場所を探し、交渉し、困難な搬入や設営を経て、作品が生み出されていきます。そしてそのなかでは、様々な人との出会いも重ねられていきます。
そうして、いろいろな人々と関わり合いながら生み出される作品からは、そこに関わった人たちの存在を感じることができ、だからこそ、 対峙する鑑賞者を圧倒する力強さがあると感じました。

榎忠さんトーク.JPG

トークの最後は、会場のみなさんからの質問にお答えいただきました。
作品にある種の宗教性・精神性みたいなものを感じるが、意図されているか。という質問に対して、榎さんご自身は「意識していないが、見る側の意識がそこにあるからそう感じるのではないか。」とのお答えでした。
また、あえて危険なもの、重いものなど、ヘビーなマイナスの印象がある素材・テーマを扱われることが多いことについて。という質問には「見る人が、見る人の問題として考えて欲しい。精神性などを考えて制作することは構わないが、あくまで語るのは作品」と表現者としての強い覚悟を語られました。
働きながら制作されてきた榎さんにとって、労働は食べるため、生きていくために必要な当たり前のことで、食べていくために芸術をしているのではありません。

今回のトークでは、常に社会に対する問題意識を持ち続け、表現し続ける作家としての榎忠さんの強さを伺うことができました。

榎忠さんトーク.JPG

鉄道芸術祭vol.6「ストラクチャーの冒険」では、榎さんの作品は《LSDF(Life Self Defense Force)》と《薬莢 Cartridge》を実物で、《スペースロブスター P81》と《GUILLOTINE1259〈ギロチンシャー〉》は展示当時の写真を拡大出力し展示、さらに1972年に行われたグループZEROとして行ったハプニングの映像、「ハンガリー国へハンガリで行く」などの過去作の記録映像を展示場入口で上映しています。

また、1月9日には展示している《LSDF(Life Self Defense Force)》を使っての「成人の日」祝砲パフォーマンスを開催します。

ぜひ、会場で榎忠さんの力強い作品に触れてください。

「芸術実行犯 Chim↑Pomの超戦」(卯城竜太さんをお迎えして)

 2016.12.17(B1事務局 サポートスタッフ大槻)

12月10日、鉄道芸術祭vol.6「ストラクチャーの冒険」関連プログラムとして、アーティスト集団Chim↑Pom(チンポム)の卯城竜太さんをゲストにお迎えしたトークイベントを開催しました。

 ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭 
「芸術実行犯 Chim↑Pomの超戦」

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Chim↑Pomは、現代社会に全力で介入し、強い社会的メッセージを持つ作品を発表し続けている6人組のアーティスト集団です。アートを武器として社会の"見えない構造"に挑み、ときに超越しながら、世の中に物議をかもすアクションを次々と実行されています。そこで今回のトークでは「芸術実行犯Chim↑Pomの超戦」と題し、そんなChim↑Pom の活動における"ストラクチャーの冒険"について、今年の10月に東京の新宿歌舞伎町で開催した個展「"また明日も観てくれるかな?〜So see you again tomorrow, too?」に関するお話を中心にお聞きしました。

Chim↑Pom02.JPG 

今年で結成11年目であるChim↑Pomは、国内や海外で様々なプロジェクトを展開してこられていますが、デビュー当時からずっと東京を活動のベースとしており、東京の街中で数多くのアクションを起こされています。トークではそれらのうち、野良ネズミやカラスといった「都市における野生」への関心から生まれた《スーパー☆ラット》や《BLACK OF DEATH》、「大量生産・大量消費」への反発心を逆手にとって挑んだ渋谷パルコでの展示、「愛が目的のデモ」として新宿の路上で敢行したメンバーのエリィさんの結婚式《LOVE IS OVER》など、代表的な作品の数々をご紹介いただきました。一見すると悪ふざけのようにも見えるのですが、そこには必ず東京という都市を生き抜く若者としての鋭い感性と行動力に裏打ちされた強度があり、現代社会の在り方をあぶり出し問い直すアートの力をヒリヒリと備えているので爽快です。

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そんな東京の申し子とも言えるChim↑Pomが、"東京"について改めて考え直すことから始動した新たなプロジェクトの第一弾が、新宿歌舞伎町にある解体予定のビルを舞台とした展覧会「"また明日も観てくれるかな?〜So see you again tomorrow, too?」です。

歌舞伎町は、戦後なにもない焼け野原となったところから、一部の地主たちが様々な理想を掲げながら構想し、誕生した街です。今回会場とされたビルは、その地主たちから発足した「歌舞伎町振興組合」の拠点となってきた場所です。ビルが建てられた時期を遡ると、なんと前回の東京オリンピック開催年である1964年。そして現在、ビルは2020年のオリンピックにむけて、再び「建てこわし・建てなおし」されようとしています。
4年後のオリンピックを大義名分とした「スクラップアンドビルド」は、歌舞伎町のみならず、現在東京のあちこちではじまっています。日本は途上国から先進国へと発展し、状況も価値観もがらりと変わっているにもかかわらず、オリンピックに際し、かつてと全く同じような発想でまちづくりがされようとしていることへの違和感。今回の展覧会は、東京で日本人が繰り返すこういった「未来の描き方」を問い直すものとして企画されたそうです。

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トークでは、たくさんの写真をお見せいただきながら、ビルの4階から地下に至る各階の展示の様子をご紹介いただきました。ビルの持つ歴史や特性に深く迫り全力でインスパイアされながら、Chim↑Pomのこれまでを集大成して作り上げられた作品のお話はどれも面白くて、展示空間をその場で体験できなかったことが悔やまれました。そしてなんと、会期が終了した現在、ビルと一緒に展示作品も「全壊」させられています。なぜなら、作品をビルごと「スクラップ」し、その残骸を再び「ビルド」して展示することこそ、「スクラップアンドビルド」がテーマである今回のプロジェクトのフレーミングだからです。「まっさらなところで呆然としてから考えることが重要だ」と語る卯城さんからは、アーティストとして"ゼロ地点"に立ち続けようとする意欲と気概が伝わってきました。
会期中は展示だけでなく、全壊するこの場所を無形の"記憶"として残していくために、トークやライブといったイベントも数多く催したそうで、それらも大変濃度の高いものだったよう。「安全だけど安心でなくていい」という寛容さがある歌舞伎町は、街のど真ん中の会場でどんなに過激に騒いでも、自由に放ったらかしてくれたそうです。

 

トークの最後に、卯城さんが重要なこととして強調されたのは、今回の展覧会に関しては展示作りや運営、資金面など、全てにおいてChim↑Pomが自分たちの手で行ったという点です。それは、最近特に政治的な規制や検閲が顕著になり、美術館や芸術祭で出来ることが限られてきたことに理由があります。そういったしがらみに翻弄されるよりも、何か他の手を見つけて自分たちのやりたいことを実践していく挑戦として、インディペンデントで展覧会を開催することにこだわったそうです。その挑戦は、見えない社会のストラクチャーを超えていく試みであり、ストラクチャーを自らの目で見ようとする試みでもあるように思います。
すでに出来上がっている仕組みに身を任せていると、いろいろなことが見えないままに運び、いつの間にか大きな力に鈍感になってしまうことは、日常生活でも大なり小なり実感することです。Chim↑Pomや今回の鉄道芸術祭の出品作家の皆さんが、アートの力で見えないストラクチャーを冒険する姿に学びながら、私たちも常にそこへと意識を向け続けねばならないなと改めて危機感を持ちました。

鉄道芸術祭vol.6「ストラクチャーの冒険」は、会期残すところひと月ほど。皆さんも是非、見えないストラクチャーに思いを馳せにいらしてください。お待ちしております。

「都市の成立を通してみる日本の構造」(北村亘さんをお迎えして)

 2016.12.9(B1事務局 小西)

12月8日、行政学者で地方自治を専門とする北村亘さんをお迎えし、地方自治とはどういうことか、鉄道と街の成り立ちの関係などをお話しいただきました。

ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭
「都市の成立を通してみる日本の構造」

「都市の成立を通してみる日本の構造」

私鉄の力が強く、鉄道会社によって沿線の街がたくさん開発された関西。
大阪市は日中、市内で沢山の人が働いていますが、夜には北摂など他の市町村に帰宅される人が多く、昼間人口と夜間人口の差が大きい地域です。
また大企業は本社が東京にあることが殆どで、こちらも税収が減る要因となっています。

地方自治の予算は大きく分けて2つ。開発と再分配(福祉)があり、街の利益を増やすために福祉が手薄になり、開発が積極的になる傾向があります。
福祉を充実させるとその地の貧困率が高くなってしまうという、なんだかとても皮肉めいたことが起こってしまうそうです。

図を描いてその流れを解説していただきました。

「都市の成立を通してみる日本の構造」

Aの町の福祉を充実させると、、、近隣のBとCの町から移動しやすい不動産を持たないホームレスの人たちや低所得者の人々がまずAの町にやってくる。
福祉サービスの対象者が増えるので、サービスを拡大することになり、すぐに当初の予算を使いきってしまいます。
それでも町が頑張って政策を続けると、富裕層にとっては納税負担が増えるだけでなく町の治安も悪くなるため町を去り始めます。
お金があり、移動する力がある富裕層や企業が町を出て行ってしまい、空いた住居に流入してきた人々が不法占拠しだし、不動産の価値が下がる。
貧困層が増え、治安が悪化し、、、、という悪循環が続いてしまう。。。。
この現象は、1920年代まではNYのど真ん中で高級住宅地だった、ハーレムでかつて起こったことだそうです。

福祉政策の場合は貧困層はサービスを求めてやってくるので、支出一方。しかし、開発政策の場合は貧困層は雇用を求めてやってくるので、納税者になり、税収が増えます。
磁石に吸い寄せられる様に人が動くことから、ウェルフェア・マグネット効果という言葉で言われるそうです。

分かりやすく解説してくださり、改めて納得することばかり。
ですが、街の人々のための福祉政策が、街を悪化させる要因になることもあるというのは、なんともやり切れない気持ちになりました。

「都市の成立を通してみる日本の構造」

地方自治という言葉は響きが良く、「地方自治を高める」ことはとても良いことのように聞こえますが、
地方自治が強くなりすぎると、自分の利益のみに目を向け、再分配に背を向ける、どんどん保守的な考えに進むことにもつながります。

そして話は鉄道と密接に関わる大阪の街の成り立ちへ。
明治時代、国の計画により国鉄・山手線が敷かれ私鉄が国鉄に従属する形で広がって行った東京とは異なり、 大阪は私鉄各線が開発されて、その後に環状線が敷かれたので、国鉄との乗り入れが前提とされておらず、私鉄が幅を利かせています。
私鉄各社が沿線開発に力を入れたお陰で、北摂や宝塚、芦屋などのブランド力がある街が生まれ、大阪市中心地から離れた場所に住み、大阪市内には仕事に通うだけ、という人が増えました。
大阪市の夜間人口(住民)が減ってしまうことは、住民税収入が減ることにつながります。
大阪市が抱える少子高齢化や市民負担の増加などの問題は、鉄道網が加速させてしまったとも言えるのかも知れません。

「都市の成立を通してみる日本の構造」

最後の30分は参加者のみなさんとディスカッション形式に。
「将来の大阪に興味があってきた。大阪がよくなるにはどうしたらいいか?」との質問に、北村さんは 「大阪がうまくいかないと、日本がうまくいくわけない。東京だけに頼っていると、東京に何かあった場合、日本がどうにもならなくなってしまう。」と答えられました。

一緒くたに「地方創生」と言ってしまうのではなく、色々な見方をして、問題を分けて考えることの大切さ、 市民ができることと、行政じゃないとできないこと、その両方について考えることの重要さを考える機会になりました。

「鉄道がもたらした社会構造の変化」(鴋沢歩さんをお迎えして)

 2016.11.23(B1事務局 サポートスタッフ小河)

11/17(木)は、現在開催中の企画展「鉄道芸術祭vol.6」の関連プログラムとして、経済史の観点から鉄道史を研究されている鴋澤歩さんをゲストにお迎えして、鉄道がもたらした社会の様々な構造(=ストラクチャー)の変化について考えるトークイベントを開催。「鉄道がもたらした社会構造の変化」と題して、大学の講義さながらの深い内容のお話をいただきました。

 

20161117鳩沢先生.jpg

 

経済学といえば、アダム・スミスに始まり、ケインズ、マルクス、フリードマンの理論が先行し、経済学史でも経済学の系譜、産業革命、近現代の金融・経済学の成り立ちがメインになることが多いものです。 その中で鴋澤さんは、鉄道会社の歴史から現代の経済システムや社会構造に与えた影響を捉えるという視点からトークをしてくださいました。 一般的には、鉄道とは、産業革命の中で短期間の大量・遠方輸送を実現したもの、重工業発展に影響を受けた産業の一つと認識されていることが多いと思いますが、そのような部分に留まらない影響があったことを今回のトークで知ることができ、大変興味深いものでした。

鉄道運営は、当時としては初の大規模経営会社であったそうです。その運営のためにはそれまでの世界になかったようなレベルでの高度な正確さをもって管理・調整を行わなければならないことから、分業を行っていくセクションを幾つも作り社長・会長をトップとした組織内の上下で管理していくという、会社としての階層組織が形成されました。
現代の会社組織が当たり前のように取り入れているライン・スタッフ管理組織の基になったのが、鉄道運営だったそうです。初めて知る話が次々に飛び出す鴋澤さんのお話に、皆さん熱心に耳を傾けられていました。

その他、鉄道会社の労働組織が、インフラに関わるため最初に政府から法規制を受けることとなり、現代の労使関係を形成するものとなったこと。
専門的管理者が育つことによって、鉄道の所有者と経営者の分離がされていったこと。
また鉄道運営という大規模でインフラの一種ともなる特殊な組織の誕生・発展によって、それを高度な正確さで管理・調整するために管理・会計部門が発達しました。それが株式・金融市場の発達にも影響をもたらしたこと。
そして、広大な鉄道網の範囲があるために異なった地域住民・社会階層に属する人々を組織化する役割も担っていたことは、個人的にもとても興味深いものでした。

鉄道業という特殊な業種が拡大する上で必要不可欠であったことが、これだけ世界の社会構造に影響を与えていたことを知ることができる、非常に有意義な時間となりました。

 

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次回、「鉄道芸術祭vol.6」関連プログラムのトークは
12月8日(木)「都市の成立を通してみる日本の構造」です!
行政学者で地方自治を専門とする、大阪大学教授の北村亘さんをお迎えして、都市の在り方を通して日本社会の「ストラクチャー」について考えます。

ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭
『光の世紀』から『記憶の世紀』へ

 京阪電車に乗車して、こどもの頃によく乗っていた江ノ電を思い出したーそんな港さんのお話しから、リラックスした雰囲気の中でラボカフェがはじまりました。

ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭
「『光の世紀』から『記憶の世紀』へ」

 1998年の港千尋さんの著書『映像論』を引用されながらお話しが展開します。映像の歴史は、光学装置の発展によって牽引されてきたそうです。光の技術として発展してきた映像。それが1990年代に、光とは違う技術が映像を牽引するようになっていくのでは?それを「記憶の世紀」と名付けたそうです。

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映画の時代、TVの時代、バーチャルリアリティの時代。それらは技術として生まれ、表現。アートとして2度目の誕生をしました。その2度目の誕生が本当の誕生なのではないか、とお話しされました。

 港さんは、展示会場に投影されている小津とリュミエールへのオマージュ作品を見ながら、光善寺でのカメラオブスキュラを思い出されたそうです。光善寺のカメラオブスキュラ、じわーっと見えてくるその感覚の体験を「まさに現像しているときのような」と表現された港さん。お客さまも興味深く耳を傾け、中はなるほどそういう感覚か!と頷いている方もいらっしゃいました。

 

続いて、ドイツのマールブルグで出会ったカメラオブスキュラ小屋のお話。

真っ暗な小屋の中には白いテーブルがあって、そこに外部の光が映る仕組みになっていたそうです。マールブルグの名所、屋根が傾いた教会も見えます。小屋のガイドから「19世紀には普通のアトラクションとしてちょっとした観光地にはあった。費用がかからないので安価で楽しめる娯楽として楽しまれていた」という説明があったそうです。

机に投影されているカメラオブスキュラの上に置く、するとそこが急に坂道になってそこを車が走る。半円のものをおくと風景がゆがむ。そんなライブパフォーマンスとしてのカメラオブスキュラを、当時の人々は楽しんでいたのでしょうね。まさに光の世紀ですね。

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1910~20年代。映画の発明でカメラオブスキュラが急速に衰退。写真→映画→TVへととって変わられ、現代の映像の90%はデジタルデータとしてある。と、お話しは続きます。写真を暗室で現像していた時代から、現在はサーバー・巨大なデータセンターで行われるようになった「影なきイメージの時代」。先ほどまでのリアルな実感を伴ったカメラオブスキュラの話から一転してのお話。今当たり前のように過ごしているデータありきの世界が、便利ではあるけれど何かつかみどころのない、手ごたえのなさを感じました。

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 なぜ今、光善寺でリアルな世界の影を見るんだろう?お話しは、光善寺のカメラオブスキュラに戻ります。現実世界を見ているとき、私たちはほんとうに「見ている」のでしょうか。カメラオブスキュラをとおして改めて実感できる「見ること」。視覚・知覚・技術・表現。「見る」とはいったい何なんだろう、これから先どうなっていくんだろう。そんなことを、改めて考えさせられました。

サーチ最終週!

3月28日から3ヵ月に渡る、アートや知の可能性を探求(=search)する企画展「サーチプロジェクト」のvol.4「ニュー"コロニー/アイランド"~"島"のアート&サイエンスとその気配~」http://artarea-b1.jp/archive/2015/0628705.phpが最終週に入りました。
そして今週とうとう、中之島培地のすべてのグリッドに粘菌のネットワークが到達しました!

中之島培地を覆う粘菌1.JPG中之島培地を覆う粘菌2.JPG 

展示場内の丸柱が鳥居となり、ビニールテントが張られた中には3Dプリンターが置かれ、椎茸栽培用の原木が組まれ、霧吹きは自動で霧を吹き続ける。
ハイテクのようで、アナログなような。非現実的な空間に白衣を着て立つ。
それが「サーチプロジェクトvol.4」の第一印象でした。

粘菌培地となる「中之島仮設空間」には最初は3Dモデルも粘菌もいない土が広がり、壁面にプロジェクションしている「中之島仮想空間」にはシンプルな空間にアバターが歩いていました。

そんな、非現実的でシンプルな空間に、ワークショップで参加者のみなさん・スタッフのスケッチから生まれた、バグ/ノイズを含んだ画像が「仮想空間」にGPSデータを元に配置され、その画像の3Dモデル化したものが次々に「仮設空間」に置かれていく。それを縫うように粘菌がアメーバ状に広がり、覆い、姿を変える。
日々刻々と姿を変え、リアリティが加わり、一つの生き物のような展示空間になりました。
仮想空間.JPG

粘菌としいたけ.JPG 
映像が動くだけでなく、全体が微動しているような展示。
通りがかりに立ち寄られた方が、その後何度も来られたり、長い時間滞在していただけたり。
見るタイミングによって、見る人によって、様々な印象を持たれたと思います。
粘菌をスケッチする.JPG 
日々の粘菌の変化を、スタッフみなで観察スケッチしています。
過去のスケッチと比較出来るよう、トレーシングペーパーに描いて重ねて展示しています。
会場お越しの際は、過去のものもめくって、ご覧いただけると嬉しいです。 

会期終了まであと5日。関連プログラムも27日のクロージングトーク『アート&サイエンス「ニュー"コロニー / アイランド"」のその先へ』を残すのみとなりました。
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【6月27日16:00〜19:00 クロージングトーク『アート&サイエンス「ニュー"コロニー / アイランド"」のその先へ』】
プロジェクトメンバーとともに、約3ヶ月間におよぶ本展の実験と実践の軌跡を辿り、会期中に開催した多彩なゲストトークで得られた知見や感性を踏まえ、アート&サイエンスの可能性について語り合います。
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0627755.php
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アートエリアB1にて、お待ちしております!

コニシ

ハイブリッドなトーク

ラボカフェスペシャル×サーチプロジェクトvol.4の関連企画として、トーク「生物と工学と藝術〜ハイブリッドの創造性〜」が開催されました。
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ラボカフェスペシャル×サーチプロジェクト関連企画
知と感性のネットワークシリーズ

「生物と工学と藝術〜ハイブリッドの創造性〜」
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0619754.php
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「粘菌コンピュータ」の研究・開発者である原正彦さんとバイオアートなどの分野で活躍されているアーティストの久保田晃弘さんをゲストにお迎えしての本イベントは、まさに生物と工学と芸術を融合したハイブリッドなトークイベントとなりました。
異なる分野を専門にされているお2人によるハイブリッドなトーク、観客の皆さんも楽しんでいただけたのではないでしょうか。

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原正彦さんのプレゼンテーションでは、自己組織化、時空間機能、揺律創発をキーワードに、「粘菌コンピュータ」についてお話ししていただきました。
現在のコンピュータは正確な答えを出すことができる代わりに、想定外やノイズに弱く、情報量が多いと処理にとても時間がかかってしまいます。しかし、「粘菌コンピュータ」は情報量が多くても、現在のコンピュータのように情報爆発を起こさずに、平均よりもそこそこ良い答えを出すことができます。

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久保田晃弘さんのプレゼンテーションでは、「計算する粘菌と芸術について」というタイトルで、地球外生命体や人工知能のための芸術や人間と依拠しない芸術など、とても興味深いお話しをしていただきました。
人間の人間による人間のための芸術ではなく、地球外生命体や人工知能のための芸術というのは今までに考えたことのない観点で、とても衝撃的でした。

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サーチプロジェクトvol.4の会期も残りわずかとなりました。
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0628705.php
本展覧会もサイエンスとアートという異なる分野を合わせたハイブリッドな展覧会となっております。
展覧会場の粘菌たちも日々変化し、さまざまな表情を見せてくれます。
0619粘菌06.JPG
皆さまのお越しをお待ちしております。

なかくぼ

粘菌と音楽の夜

2014年秋-冬に開催した鉄道芸術祭「音のステーション」会期中に行った関連イベント「公開ラジオ 『快音採取 世界の音旅』」のパーソナリティ・江南泰佐さんが再び!
テーマはもちろん「粘菌」!
 
梅雨の夕暮れにぴったりの、一夜限りのラジオ番組になりました。
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ラボカフェスペシャル×サーチプロジェクト関連企画
知と感性のネットワークシリーズ

公開ラジオ番組「快音採取 粘菌の音楽」
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0618753.php
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粘菌の音楽スタート.jpg

様々に姿を変える粘菌から連想して万華鏡の音楽、粘菌を用いた実験から生まれた音楽などなど。粘菌から妄想される江南さんセレクトの音楽が続きます。
前回の「快音採取」同様、今回もUstream配信を行い、Twitter、Facebook「#粘菌音楽」でお便りを募集しながら進行しました。

後半に入り、本日のカフェマスター、大阪大学教員の久保田さんを交えてラジオは続きます。
粘菌の音楽_後半.jpg
いま開催中のサーチプロジェクトvol.4「ニュー"コロニー/アイランド"島"のアート&サイエンスとその気配」のタイトル・展覧会の意図について江南さんから久保田さんへ質問が。
地下のコンクリート空間で何かを栽培できたら面白いのではないか、という企画会議でのアイデアから派生したサーチvol.4。
アートエリアB1が、中之「島」という地理的に孤立した特異な場所にあることもテーマの一つであることをお話されました。
アートとサイエンス。音楽とサイエンスも繋がるか。ということでここからはサイエンスを主題に、雰囲気ががらりと変わる選曲に。
徳島の阿波踊りを題材にした作品や、先週ラボカフェにお越しいただいた野村誠さん・やぶくみこさんの「瓦の音楽 musik genteng」から「粘土の協奏曲」など。
瓦のプロジェクトは淡路島・津井が舞台。こちらも島つながりです。瓦の可愛らしい音色が響きます。

最後は江南さんの粘菌へのファーストイメージ、久石譲で「風の谷のナウシカ〜オープニング〜」。
オープニング曲が締めくくり。驚きでしたが、形を変えて生き続ける粘菌の様に、また形を変えてラジオ番組があるのでは、、、と期待を感じずにはいられませんでした。

雨にも関わらず、会場にはたくさんの人にお越しいただき、ありがとうございました。
みなさん、思い思いに粘菌の音楽、楽しんでいただけたのではないでしょうか。

3月28日から開催しておりますサーチプロジェクトvol.4は会期残すところ10日を切りました。
仮設中之島培地の3Dモデルも密集度を増し、粘菌も華麗にネットワークを広げております。
今日の粘菌.JPG

今日の粘菌2.JPG
 
会期中に是非、お越しください。
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0628705.php

コニシ

瓦の音

2014年秋-冬に開催した鉄道芸術祭「音のステーション」で「京阪沿線46駅の音楽」を手がけた音楽家・野村誠さん。
今回はラボカフェゲストとしてお越しいただきました!

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ラボカフェスペシャル・ミュージックカフェ
「瓦の音楽 ー伝統産業と作曲家の出会い」
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0611750.php
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野村さん・やぶさんとNPO法人 淡路島アートセンター/淡路島の伝統産業「瓦」との出逢い、叩いてみるといい音がしたことからオリジナル音楽づくりに至るまでをお話しいただきました。
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映像には瓦の産地である津井のまち、色々な形の瓦と、瓦に関わる人たち。
野村さん・やぶさんの音づくりを不思議に思いながらも関わっていく津井の人たちのコメントが印象的でした。

いよいよ瓦のコンサート。
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鉄琴のような、聞いたことの無い可愛らしい音色。
 
なんと、「瓦の音楽」は、1曲ごとに使われる瓦が違うのです!
スタッフの方々が瓦を並び替えている間に野村さんのトークをはさみつつ。
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出番の曲を待機する瓦たち
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瓦を叩くバチも試行錯誤された手づくり!
素材はゴルフボールや漂着胡桃の殻など。。。
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「瓦の音楽」プロジェクトが今後、どのように展開していくのでしょうか。
 
野村さん・やぶさん、NPO法人 淡路島アートセンターのみなさま、素敵なトークと生演奏を、ありがとうございました!

コニシ

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