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鉄道芸術祭vol.6オープニングトーク!「見えない音とかたちのないアイデアを構築する」インビジブル・デザインズ・ラボ松尾さんをお迎えして

 2016.11.16(B1事務局 サポートスタッフ大槻)

鉄道芸術祭vol.6「ストラクチャーの冒険」がいよいよ幕開けとなり、展覧会初日11月12日、参加アーティストの一組であるインビジブル・デザインズ・ラボの代表、松尾謙二郎さんをお迎えしてトークイベントを開催しました。

オープニングトーク.jpg 松尾謙二郎さん.jpg

 

インビジブル・デザインズ・ラボは、「音」という見えないメッセージと「アイデア」という見えないデザインを「見える」ようにしていくことを目標に、CM制作やアート作品の発表など多方面で活動されている音楽クリエイティブチームです。本展には新作として、目に見えないシステムによってピアノと木琴が音楽を奏でる音楽作品「Do you feel "THE RED" just like "THE RED" I feel?」を出品してくださっています。

「生きていくためには、食わねばならん」。そんな一言から始まり、松尾さんはまず、ご自身のご活動の経緯についてお話してくださりました。中学時代から、すでに音楽で生活していくことに危機感をお持ちだったという松尾さん。音楽で、クリエイティブで、食べていくのは難しい。そのためには、何か他人と違うことをしなければならない。広告業界に仕事を求め、音や音楽に対して他の人とは異なる視点を持って制作活動をしてきたのも、「アーティストとして生きて行く」ことに現実的な意識を持ち、戦略的に臨む意識があったからだそうです。

一人ではできなくても、できる人とコラボレーションすれば、いろんなことができる。"チーム"でものを作るという活動形態は、広告づくりの手法から学び得たものだそうです。インビジブル・デザインズ・ラボの現在のあり方は、広告の仕事と切り離して語れないもののようでした。

広告の仕事を資金源にしてクリエイターとしての技術や発想を更新していくような、"クリエイトのループ"の中で制作をしていくというのも、松尾さんが大切にされていることの一つです。先の「食べていくこと」の問題にも重ねて、現代におけるアーティストの生き方・生き延び方を考える上で、大変参考になる具体例だと感じられました。

トークでは、2011年にNTTドコモのCMとして制作され、大きな話題となった《森の木琴》を始め、アルコール飲料ブランドZIMAの依頼で制作されたロボットバンド《Z-MACHINS》にまつわるエピソードや、様々なCM制作の裏話について、写真や動画でたっぷりとご紹介いただきました。インビジブル・デザインズ・ラボの皆さんが、クライアントの依頼を見事にこなし、仕事の幅を広げていく様を追体験するようで、大変刺激的な時間となりました。

 

また、松尾さんがインビジブル・デザインズ・ラボのコンセプトを"「音」という見えないメッセージと「アイデア」という見えないデザインを「見える」ようにしていくこと"として活動を始められたきっかけの多くは、29歳の時のイギリス留学の経験にあったそうです。

現地では音楽の作り手よりも、モノを作るアーティストやプロダクトデザイナーと親交を持っていたという松尾さんは、友人たちの影響で音についても"機能性"や"デザイン性"に関心を持つようになりました。そして、「単に音楽を作るのではなく、音の機能や、音のデザインといったことに着目して制作をしていきたい」と考えはじめたそうです。

本展の出品作「Do you feel "THE RED" just like "THE RED" I feel?」において、松尾さんの中でのテーマの一つとなっている"コミュニケーション"も、言葉の通じないイギリスでの体験から生まれたものだそうです。言葉が通じなくてもコミュニケーションは成立する、むしろ本質的に分かりきらないものである。だから、面白い。本作においては、そんな曖昧なものとしてのコミュニケーションを、言葉ではなく音楽によって試みたいという意図が含まれています。

 

最後に場所を展示会場内へと移し、松尾さんに出品作のパフォーマンスをしていただきました。「楽器ごと作った曲のつもりだ」という今作は、ピアノの音が解析されて指令が飛び、三つの木琴が動き出すことでアドリブ的に音楽が奏でられる楽器群です。パフォーマンスでは、松尾さんが「印象」によって演奏された即興的なピアノのメロディーと、木琴の素朴でリズミカルな音色が呼応し合い、美しい音楽が生まれていました。

演奏中の松尾さん.jpg 松尾さんと会場内の木琴の協奏.jpg

その後作品を囲んで、制作にあたったインビジブル・デザインズ・ラボの他のメンバーの方々の紹介や作品解説、来場者の方々の演奏体験、質疑応答を経て、トークは終了となりました。

メンバー紹介.jpg 質疑応答.jpg

 

アーティストとしていかに生きていくか。それを考えるためには、社会の見えない構造に目を向けて、自らの身の置き場を探っていく必要があります。

音と人間のあいだにある"よくわからない仕組み"に関心を持ち、そこで作品をつくっていこうとする試みも、見えない構造への挑戦です。

今回のトークをお聴きして、松尾さん、そしてインビジブル・デザインズ・ラボの挑戦が、まさに本展のテーマである「ストラクチャーの冒険」そのものであることに改めて気づかされました。

 

もしもインビジブル・デザインズ・ラボの作品や活動に少しでもご興味をお持ちになりましたら、新作である「Do you feel "THE RED" just like "THE RED" I feel?」を、ぜひ本展覧会の会場で体験なさってみてください。音楽を奏でる、見えない仕組みの存在を感じることで、今まで見えていた世界にも新鮮な気づきが生まれてくるかもしれません。

 

ご来場をお待ちしております。

ブリッジシアター ダンスボックス アーカイブプロジェクト「Nước biển / sea water」

アートエリアB1では、10月12日〜29日にNPOダンスボックスの企画による展覧会「『Nước biển / sea water』特別展示上映」を開催しました。

アートエリアB1を運営する団体の一つであるNPOダンスボックスは、1996年に大阪で始動し、現在は神戸・新長田に拠点を移して、今年20周年を迎えます。

今回の企画展は、ダンスボックスの20年の軌跡を整理・公開する「アーカイブ・プロジェクト」のプレイベントとして開催。本展では、ダンスボックスディレクターでありcontact Gonzo主宰の塚原悠也のディレクションによる舞台作品「Nước biển / sea water」 (作・出演/ジュン・グエン=ハツシバ、垣尾優、松本雄吉)を特別公開しました。(Nước biểnはヌックビエンと読みます)

会場では、神戸と東京の公演の記録映像を上映するとともに、松本雄吉さんが読み上げられたテキスト、衣装、小道具なども合わせて展示。

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海の水と、身体のなかに存在する水分のあり方、循環する水のあり方と仏教的な生死感を頼りに制作が進められた本作の公演では、体内にある血液の量に近い30リットルの海水を、出演者が汲みに行くところから舞台が始まります。

今回の展覧会場では、同じく30リットルの水が入れられたタライ、松本雄吉さんが舞台で読み上げられたテキスト、小道具や衣装なども展示され、それらを介して作品の断片を垣間見る空間となりました。さらに、本展では、Skypeでの打ち合わせの音声記録も展示されました。そのなかには、ふっとダンスが立ち上がる瞬間があり、本番の映像だけでは触れることのできない体験となりました。

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最終日に開催された、クロージングイベントでは、「アーカイブ」をどう捉えるか、ということをテーマに、共同製作者の垣尾優さんと、舞台芸術批評にも携わる高嶋慈さんを迎え、作品のディレクションを務めた塚原悠也と、NPO法人記録と表現とメディアのための組織理事でもある久保田テツ、 ダンスボックスの20年間の活動に携わる文が対話を繰り広げました。

アーカイブをする側の意識とされる側の意識、技術の状況、記録から公開までの時間間隔、そして公開する側の意図によって、アーカイブのあり方は多様に変化し続けます。

個人的な思い出として記録された映像も、記録されてから長い時間が経てば、それは"人類の記録"にもなり得ます。

本企画を皮切りに始まる「ダンスボックス アーカイブプロジェクト」では、過去20年分のアーカイブを公開する予定です。そこでは、生の舞台とは異なる身体の魂が見えるかもしれません。そして、アーカイブ展が作品としてアーカイブの対象となり、それがまたどこかで異なる形で公開され、アーカイブされる......。そうしてどんどん拡張し、変幻自在にかたちを変えていくのかもしれません。

2月にアートエリアB1で開催するダンスボックス アーカイブ展も是非ご期待ください!

「写真家/畠山直哉との対話」

6月11日(土)、現在開催中の企画展「サーチプロジェクトvol.5」関連プログラムとして、写真家の畠山直哉さんをお迎えして、トークイベントを開催しました。

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畠山さんの本展への出展作品《陸前高田》は、会場の入口の正面にあります。たくさんの方が、立ち止まったりベンチに腰掛けて、静かにその写真に見入っておられます。

畠山さんは、ご自身がこの陸前高田のご出身です。ご実家も被災して家の土台だけが残っていたそうですが、それも壊して別の土地へ移転しなければいけなくなった、と土台だけになったご実家の写真を映しながらお話をしてくださいました。

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出展作品《陸前高田》の写真には、畠山さんのご意向で、撮影された日付が一枚一枚それぞれに入っています。

畠山さんは、「当初は日付の重要性を感じていなかった」とおっしゃいます。

けれど2014年、この陸前高田の写真を本にすることになったとき。一連の写真をざっと見直して、これらの写真には日付が必要だ、と思われたのだそうです。

同時期に撮影された写真でも、一方では瓦礫の片付けが進み高台造成がはじまっている写真もあれば、もう一方では手付かずで物が散乱したままの校舎内部を写した写真もあります。畠山さんはこういった手付かずの状況を撮った写真も見せたいと思われました。でも、整備の進んだ状況の写真の後に未整備の写真が出てくると、見る人が前後関係がわからなくなって混乱してしまう。

それを避けるために、写真集のページには全て日付を入れたのだそうです。

 

今回出展されている200点のスライドショーの写真に日付を入れたのもそのためです。と、畠山さんはおっしゃいます。「あぁ、5年たってもあまり変わっていないんだな」等、写真を見た人がそれぞれに考える助けとしての日付なのだと。

そのお話を伺いながら、展覧会へご来場くださった方々が、畠山さんの作品の前で、写真と日付を静かにじっとご覧になっている後ろ姿を思い返していました。畠山さんの作品を見ながら、来場されたおひとりおひとりが様々なことを考えられています。そしてそこから、一緒に来られた方々や会場スタッフとの対話が日々生まれています。

  

そして畠山さんは、「自分は災害写真家ではない」とおっしゃいます。"被災状況を伝えたい"という他の人とは違って、まさにこの場所で生まれ育った、その自分の想い出やある種の嘆きと共に撮っているのだと。

そんな中、畠山さんの事情を知らない人が写真を見て、「この人はこの土地に何か関わりのある人だ」と会いに来てくれたことがあったそうです。

言語情報を越えて、写真から多くのことを受け取ってくれたことが嬉しかった。と、畠山さんは笑顔でおっしゃっていました。

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会場からも、たくさんの質問が挙がりました。その中のひとつに、「畠山さんにとっての風景とは?」という質問がありました。

畠山さんは、風景とは元々中国の言葉で「風光」とほぼ同義語であるとおっしゃいます。草原にぼんやりと立っていて、ふと風が吹いて草がなびき、太陽の光を受けてキラキラと反射する。そんな今、ここのあなたの心を問題にした言葉だと。

けれどヨーロッパ語的な「ランドスケープ」や「ペイサージュ」は、土地や国、領土の眺め。つまり出来事から距離をとって俯瞰して観察する態度のことなのだと話を続けられます。そして畠山さんは、ご自身がヨーロッパの風景芸術の歴史に親しまれているので、どちらかいうとランドスケープの感覚で風景を理解されているのだそうです。

でも、他の日本の方はもう少し心や心理に近い風景観を持っている可能性がある。そう言いながら、「山」を例に出してさらにお話を深めてくださいました。

山は物体であり、岩が盛り上がっているだけ。でもそこに物体以上の意味、ある種の気持ちを込めて山と呼ぶのだと畠山さんはおっしゃいます。そしてそのように、人間の精神と物質世界がまじわるところにあるのが風景なのだと。

ランドスケープの西洋にあっても、自然の中に身をおいた人間が何かを感じるのは世界共通。けれどその感じ方には地域性時代性がある。そしてそれを考えるためには、「風景芸術」はいい入口になるのだそうです。

最後に、「陸前高田の『風景』は、これらの話から推測してほしい」そうおっしゃって、畠山さんはお話を締めくくられました。

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畠山さんのお話から、充実した対話が繰り広げられました。

 

今後もサーチプロジェクト関連プログラムは続きます。

皆さんで対話を行う機会を共有してみませんか?

会場へのご来訪をお待ちしております。

薄れていく記憶やバラバラになっていく個々人をつなぐアーカイブ(せんだいメディアテーク学芸員・清水チナツさんをお迎えして)

5月27日、「記録と想起/災害とアーカイブ」というテーマで、せんだいメディアテーク学芸員の清水チナツさんをお招きして、対話プログラムを開催しました。
「カフェマスターの久保田テツさん、参加者のみなさんを交え、紡いでいけたら」とおっしゃる清水さんのあいさつから、プログラムはスタートしました。

「記録と想起/災害とアーカイブ」01.JPG

せんだいメディアデークは「美術や映像文化の活動拠点であると同時に、すべての人がそれらを使いこなして自由に情報のやりとりを行うこと」を支援する公共施設です。せんだいメディアテークでは、市民協働を掲げ、市民が自らスタジオ機能を持つメディアテークを利用し、たとえば、昭和の街の風景が記録された8m/mフィルムなどを収集し、デジタル変換し、それらの成果がメディアテークに保管、ライブラリーに公開され、また新たな市民の活動に利用されていくことなどに主眼が置かれています。
東日本大震災後、部分的に再開する際にもこのモデルを活用し、市民協働での「3がつ11にちをわすれないためにセンター(わすれン!)」プロジェクトがスタートしました。わすれン!には、実際にたくさんの方々が参加され、清水さんはこの方向で進んで行くことに見通しを持ったそうです。

「記録と想起/災害とアーカイブ」02.JPG

市民が主体となっていく中でいろいろな課題が現れました。
たとえば、その経験のなさゆえ、職業としてカメラマンをしている人々に交じって記録をすることに委縮してしまったり、あるいは、記録はしたいがそもそも手段を持たなかったり。こういった場合には、わすれン!のロゴが入ったプレスキットを渡したり、ビデオカメラの基本的な操作を教えるワークショップなどを開くことで、「記録活動」へのアクセスを図ったそうです。
また、集まった映像の公開も早い段階から着手し、来館者からアーカイブを見たいという声も増え、アーカイブの一部を英訳したものも公開したといいます。

こういった取り組みは、時間の経過とともに当時の経験が語りづらくなっていくことへの抑止になり得ます。また、受動的に映像を浴びるのではなく、自らが能動的に「まなざす(眼差しをもつ)」主体へ回帰を促すという点でとても重要です。

また、活動は「記録」だけにとどまらず「てつがくカフェ」など、さまざまな立場を超えた対話の形もとられました。ここでは、「震災を語ることへの負い目」「震災の当時者とは誰か」「故郷(ふるさと)を失う?」などの問いから対話が進められました。
5年経った今でも、原発事故により広域避難を強いられている方がいて、その課題に向き合うために、一年目の対話「〈ふるさと〉を失う?」を文字起こして冊子にまとめ、当時の感覚を多くの人に呼び戻した上で対話するてつがくカフェも予定されています。

こういった、活動のなかで清水さんは人々の力を実感したと言います。
「こういった活動から寄せられる記録はマスメディアの映像や写真と比べ、一見とても小さく、個人的な記録のようにも思えます。ですが、個人の視点を手放さない記録は、見るひとに「そこに自分たちのことが映っている」という実感を生みます。そういった記録が公の場へ持ち込まれ、多数の個人の目に触れる機会があると、それを見たひとのなかに埋もれていた感情や記憶を呼び覚ます装置になっていく。」

また「誤解を恐れずに言うならば」、と前置きした後に清水さんは以下のように続けました。

「震災はとても辛いことや、悲しいことがたくさん起こりました。けれど、同じくらいのユーモアもあったと言う方もいます。過酷な日々が続くなか、それを跳ね飛ばすように生まれたユーモアはつらい状況を乗り切るうえでは大事なことだったと感じました。」
アーカイブは悲しみや悲惨さに焦点が当たりがちですが、そうなると、向き合うこともつらくなり、距離をとることでしか、守れなくなってしまう。そうならないためにも、今後はその裏に流れていたユーモア、力強さにも焦点をあてていきたい。そう切々と語る清水さんの姿が印象的でした。

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会場を交えたトークに移ると、「当事者」と「非当事者」を巡って問いかけがありました。
震災後、自分よりも被害を受けた人々への気配りがあるがゆえに、語ることを躊躇(ためら)われる方も多くいらっしゃったと言います。しかし、語りつぐことが困難になると、今後重要になってくるであろう共有、蓄積ができなくなってしまいます。
また、「非当事者」でない人間が震災を語ることで、考えや経験が伝えられる一方、また別の意味を帯びてしまうという難しさもあります。 こういった課題には、肯定、否定の二択ではなく、「獲得される当事者性もある」という気づきを得ながら、どう肯定していくのか、どのような向き合い方の可能性があるのかが話し合われました。

「記録と想起/災害とアーカイブ」04.JPG 

清水さんは、今後の活動について、まず震災アーカイブを震災だけに結晶化する方向ではなく、地域のアーカイブとして統合していく取り組み。そして、被災地の外での発信を挙げられました。もちろん、被災地の外への発信は、受け取り方に差がでてしまうという側面もありますが、同じように災害を経験した土地やそこから歩き出そうとする人々がいる。地域や災害の種類で分類していくことよりも、すこし抽象度をあげて、そこにある困難や課題に対して対話出来る場をつくり、薄れていく記憶やバラバラになっていく個々人をつないでいくことはやはり重要な課題といえます。

当事者・非当事者の二分法を抜けて、私たちはどう考え、どうつながりを構築していったらよいのか。正解のない問いを考えるうえで、とても大切な時間となりました。

「記録と想起/災害とアーカイブ」05.JPG

分からないものを形に描き出すこと。

「災害にまつわる所作と対話」をテーマに開催している展覧会「ニュー"コロニー/アイランド"2」。会場では、展示作品や災害にまつわる資料をきっかけに、来場者の方々と様々な対話が繰り広げられています。そこで、このブログでも会場で重ねられてゆく対話の記録を、会場運営を支えるサポートスタッフの視点からご紹介します。

今回のサーチプロジェクトvol.5「ニュー"コロニーアイランド"2」のサブタイトルは「災害にまつわる所作と対話」。ちょっと重いイメージもありますが、会場に足を運んでいただくとそこには、2011年の東日本大震災だけでなく阪神淡路大震災や室戸台風、スマトラ沖地震に関する作品や資料があり、見応えのある展示内容となっています。
その中の一つに、漫画家のしりあがり寿氏が東日本大震災後に立ち上げたプロジェクトから出来上がったクッションがあります。
みなさんは「漫符」ってご存知ですか?
マンガには感情や場の雰囲気、自然現象など見えないものを可視化する便利な符号があります。それが「漫符」です。
この「漫符」の描かれたクッション、会場内の寝室やソファに溶け込んでいますが、あるイメージを元に募集して描かれた漫符から作られたものです。さて、何をイメージして作られたものでしょうか。

居間の漫符クッション居間の漫符クッション②

会場では、「この漫符、何だと思いますか?」と問いかけると、「微生物」と答えてくださったお客様もいらっしゃいました。
3.11の後、しりあがりさんは、放射能を表現した漫符がないことに気づき、これから必要になるであろう放射能の漫符を一般の方から募集するプロジェクトを立ち上げました。
本展では、プロジェクトで集まった漫符のスケッチをファブリックにプリントアウトしてオリジナルクッションを制作。会場の居間や寝室のスペースにそっと置いてあります。
お客様に答えをお伝えすると、「へぇ!」と驚かれたりご納得されたりします。
今回の展示では、このようにスタッフと対話を交えながら作品をご覧いただければと思います。

さらに会場では、今回ご来場いただいた方々からも漫符を募集しています。
これまでに玄関のポストに投函(=提出)していただいた漫符の一部を、ここでご紹介します!

漫符スケッチ①漫符スケッチ②居間の漫符クッション③

漫符スケッチ④漫符スケッチ⑤漫符スケッチ⑥

あたまの中にぼんやりとあるイメージをスケッチすることは、個々の思いや考えを他者と対話することと似ているな、と思います。 
これも今回の展覧会の対話のひとつの形。何が描かれているか、じっくり拝見させていただいています。
災害についての思いや考え方を表現することは決して容易いことではありませんが、スタッフとの会話や、来場者ノート、漫符スケッチなどで、対話の形跡を残していただけると嬉しいです。

ご来訪、もしくはまたのお越しを、お待ちしております。

サーチプロジェクトvol.5特設サイトhttp://search5.jimdo.com/

書籍との対話から気づくこと

 2016.5.28(B1事務局 サポートスタッフ)

こんにちは。アートエリアB1サポートスタッフの竹花です。

サーチプロジェクトvol.5「ニュー"コロニー/アイランド"2 〜災害にまつわる所作と対話」は、オープンからおよそ2カ月半が経ちました。
わたしは昨冬の展覧会、鉄道芸術祭vol.5ホンマタカシプロデュース「もうひとつの電車 ~alternative train~」にもサポートスタッフとして参加していたのですが、その時とはまた違う層の鑑賞者の方々にお会いし、美術の様々なアプローチの仕方を感じています。

今回はリビングにある本棚を紹介いたします。

書籍の閲覧中

居間の本棚

本棚には、3がつ11にちをわすれないためにセンターの「わすれン!レコード」、小田山徹さんの《握り石》、出展者のみなさまの関係書籍、災害に関する書籍が配架されています。 展覧会の初日からさらに書籍の種類が増えました!再度いらした際はぜひラインナップをもう一度見直してみてくださいね。
鑑賞者の皆様も時折足を止めて、写真集や雑誌をご覧になられています。

災害史、津波史などの災害に関する書籍の中には、『被災ママ812人が作った 子連れ防災実践ノート』『生き延びるための非常食[最強]ガイド』といった、災害に備えるための書籍も置かれています。
私も空いている時間にめくって、「これやってみよう」「これは買い足したほうがいいかも!」などなど防災のヒントを探したりしています。 ちなみに次にやってみたいことは常時持ち歩きの避難グッズの用意です!

こうした書籍や、contact Gonzoさんの《shelters》などを見ながら、「災害が起こった時にどうするか?」を考えることもまた、「災害にまつわる所作と対話」の一つだな、防災の方法も、災害と防災の繰り返し、「災害にまつわる所作と対話」のなかで生まれたものなのではないか、と考えました。
「災害にまつわる所作と対話」という言葉を与えられて、「これがそうだったのではないか」と気づくことが時折あります。
同様に今回の展示が、皆様のそうした気づきのきっかけ、災害に対する備え(地震に限らず!)を考えるきっかけとなってくれるといいなと思います。

6月26日(日)まで、様々なイベントと共に展覧会は続きます。ぜひ一度ご来場ください!
サーチプロジェクトvol.5特設サイトhttp://search5.jimdo.com/

惹かれてやまない「石」の魅力!(鉱物学者・佐伯和人さん×美術家・小山田徹さんトークプログラム)

5/20(金)、惑星地質学、鉱物学の専門家でありサーチプロジェクトvol.5アドバイザーの佐伯和人さんと、同展覧会出展者の美術家・小山田徹さんをゲストに迎え、対話プログラムを開催しました。
今回の対談は、展覧会場内の一番奥、佐伯さんの書斎をイメージしている、月球儀や鉱石、ドローンのある(佐伯さんの研究室からお借りしています)部屋を背景にしての開催でした。
かなり天気がよく夏日なみに気温の上がったこの日、会場内も少し蒸すような空気でしたが、それとは別の、「石」に対する情熱が人一倍強いゲストお二人からの熱気が静かに出ていたように思います。

小山田さん×佐伯さんトーク


この日が初対面だったお二人は、自己紹介を兼ねて、まずご自身の活動についての紹介をすることに。
小山田さんからは、人と人が対話を行える場所づくりを行っていることについて。
人の集まるコミュニティーを芸術の側面から捉えるという枠組みをつくり、焚き火をおこしたり、《握り石》を使った対話WSを行ったり、共有スペースの設置で機会をつくっていく活動を説明されました。

小山田さん×佐伯さんトーク

そして佐伯さんからはご自身の研究の専門領域の惑星地質学、鉱物学の説明をされてから、科学的な視点から見た「石」についてのレクチャーがスタートしました。

「石」や「鉱物」とは、そもそも何を指すのでしょうか。
それらの持つ形や色味、触った時の感触などの性質から学術的に分析した場合の詳細を、実物を映像で投影したり時には参加者の皆さんに触ってもらい、紹介頂きました。
レクチャーは「岩石」と「鉱物」の違い、形での分類の仕方などから始まりました。
「岩石」とは、「鉱物」の集合体のことを言います。
「鉱物」は物質の性質が現れてくる最小の単位で、地球上に元々ある、あらゆる物質の基となるものです。(人工物はその限りではありません。)
「鉱物」を半分に割った場合に対称になるかどうか、割って対称になるカット面がいくつあるか、などの分け方があります。

小山田さん×佐伯さんトーク小山田さん×佐伯さんトーク
さらに詳細に、鉱物の強度について。この場合の硬さというのは「ひっかいた相手にキズをつける」という意味で、衝撃による割れやすさは別の要素なのです!
「モース硬度計」という硬度の標準となる鉱物10種(柔らかい順に、滑石、石膏、方解石、蛍石、燐灰石、正長石、石英、トパーズ、コランダム、ダイヤモンドで、柔らかいものから1~10の数字が割り振られている)を使って説明されました。
鉱物好きは知らない石について調べるとき、まずこのモース硬度がいくつになるのか、というところが気になるそうです。

小山田さん×佐伯さんトーク

また、鉱物には方向による割れやすさの性質があり、実際に割ってみましょう!ということに。
佐伯さんは鉱物用ハンマーを取り出し、今までに説明のあった石を解説とともにガツンガツンと叩き割られました!

小山田さん×佐伯さんトーク 小山田さん×佐伯さんトーク
割れたあとの形や割れやすさについて説明する佐伯さんは、まるで実験をする子供のようで、とても楽しげなご様子!
レクチャーや実演が行われている時折、小山田さんからは「たまらんですねぇ。。」という言葉が何度も漏れ、お二人の石に対する情熱があふれていた瞬間でした。(石を割るため下に敷いた図鑑の紹介を佐伯さんがされると、小山田さんからすかさず「僕も持ってます!」とのお答えが。本当に楽しげでした。)
そして、宝石などに見る鉱物の光り方や温度、触感の不思議へとお話は続いていきました。
小山田さん×佐伯さんトーク

佐伯さんの鉱物レクチャーの後、佐伯さんと小山田さんの対談となりました。
小山田さんが科学とは違う石の種類の分け方として最初に出されたものに漬物石がありました。これは生活のなかで使う為の種類分けの例で、科学的にどういった種類や性質を持った石であるかは問題ではありません。ある程度の重みがあり漬け物に乗せるのに丁度いい大きさの石がそう呼ばれます。ほかにも宗教の場合で神様に見立てたりする石の使われ方など、人との関係の上で呼称され、使われる「石」のあり方からお話は展開していきました。
なぜ「石」に惹かれるのかや「石」に関する活動の具体例として佐伯さんの所属する「火山学会」と小山田さんの所属する「洞窟学会」での活動など、淡々とお二人の「石」に対する付きない興味のお話がひとつ、またひとつ、と続きました。
何時間でも話していられると仰るお二人は口調は静かながら、とても目が爛々としていました。
小山田さん×佐伯さんトーク
最後に参加者の方々からの質問の時間に。
「もしお二人の大好きな石が存在しない世界に行ったらどうするか?」という質問がありました。それに対し、この世界を構成する要素の大部分が鉱石なのできっと私は惹かれている。もしなかったらその場所を構成する別の要素を発見して、それを調べてみたい。という佐伯さんの答えがとても印象的でした。

地球を構成する要素の大部分が鉱石ということはあまり考えたことがなく、普段生活している身の回りには人工物ばかり、という事実に不思議な気持ちになりました。
私たちが日常で接している部分は地球の本当に表皮の部分でしかなく、その本質は鉱物や岩石でできています。それらによって地球は構成され火山や地中のマグマなどの活動をしています。
地球の日々の活動の結果で島や大陸は出来ており、それは時に地震や津波のような災害をも起こしているのだと、地球の活動の膨大な時間の積み重ねで生成された鉱物についてを知ることで「石」の持つ不思議な性質に考えを巡らせ、少し気づきがあったように思います。
そして、そんな「石」にかける思いが非常に強いお二人の熱が、静かに迫ってくる、対談でした。

小山田さん×佐伯さんトーク

アートプロジェクトの記録とその意味(映像家・岸本康さんトークプログラム)

現在開催中のサーチプロジェクトvol.5関連プログラムとして、出展映像作品「ジョルジュ・ルース「廃墟から光へ」(Ufer! Art Documentary) 」の監督をされた映像家の岸本康さんをゲストに、対話を行うトークイベントを開催いたしました。


この作品は阪神淡路大震災後に被災地で行われたアートプロジェクトのドキュメント映画です。現在は被災地の復興支援として一般的となった地域のアートプロジェクトですが、当時はほとんど前例もなく、このプロジェクトはそういった活動の先駆けとなったプロジェクトであり、作家の目線だけではなく企画主催者、支援者やボランティアを交えた目線で記録されている貴重な映像作品です。

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まず岸本さんの「映像家」としての活動の紹介がありました。
岸本さんは今回出品されているような美術作品の制作プロセスを記録した映像作品の制作をされていて、これまでに森村泰昌さんや杉本博司さん、田中敦子さん、束芋さんなどの日本を代表する美術作家の記録を制作されています。
美術作品の記録は写真が多く、なかなか映像で残すところまで予算が出るプロジェクトは少なく、自らの作品としての自主制作が多いとのこと。

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また、作品に映像を使用する美術作家の機材面・システム面など、映像作品を出力する際のテクニカルの仕事もされています。トーク会場では束芋さんの2011年ヴェネチアでの作品制作を追ったドキュメンタリーをご紹介頂き、円筒状に映像を出力する作品の、スクリーンの制作からプロジェクターの選定やレンズ、出力の方法の考案など作家と共同でテクニカルスタッフとして作品制作に関わられている姿をご紹介頂きました。
「美術家」と言うと一人ですべての制作を行っているような印象受けますが、実際には様々なテクニカルスタッフの協力で成り立っている作品も多く、演劇の場合で言うと美術家は演出家のようなポジションであることが多いそうです。

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このように、岸本さんは様々な形で映像に関わるお仕事をされているのでご自身の肩書きが難しく、今回考案した「映像家」という肩書きを使用していきたいと仰っていました。

美術作品の制作プロセスを記録撮影するということについてのお話で、いわば作品の舞台裏とも言える制作現場を見せたがらない作家さんもいらっしゃるそうです。作品として最高の瞬間を残すことを目指しているため、中途半端な状態を残し公開することを嫌う作家さんと意見が対立することもあったそうですが、何度も制作記録のあり方を話し合った結果、現在は映像制作を許可されているという経験もあった、と仰られていました。

制作記録の映像は、作品を紐解く貴重かつ重要な資料となりうるという話もありました。どのような手順や状況でその作品が制作されたのかを映像で残すことは、作品に込められた思いやコンセプトを、作品そのものを鑑賞することとは別の角度から、写真や文章などより更に具体的に残すことが可能で、制作された作品を時間が経過してから再度考えていく場合など、とても重要な手がかりとなります。

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美術作品の制作へ関わることはない方々にとって、作品展示だけでは知り得ない制作の過程や作家さんやスタッフの思い、コンセプトに触れる機会があるということは、展覧会などで展示されている作品を鑑賞するよりも、さらに奥まで知る事の出来る(作家に話を直接聞くなどを除いては)作家を近くに感じる事の出来るとても有意義なものだと感じました。記録映像には作品を一見しただけでは気づかないようなこだわりや構造が、作家自身の姿や所作、またその時代背景などと合わせて映り込んでいる場合があり、とても興味深かったです。

肉眼で見えないものを撮る(写真家・志賀理江子さんトークプログラム)

5月14日(土)、サーチプロジェクトvol.5出展作家のお一人で写真家の志賀理江子さんをお招きして、対話プログラムを開催しました。
今回のプログラムは志賀さんの写真作品《螺旋海岸》が背後に望める「庭」での開催となりました。

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志賀さんは2008年に宮城県へ移り住まれ、名取市北釜という小さな地域で地元の写真屋さんとして暮らすとともに、住民の方々の昔語りを記録し、それを基に住人の皆さんと共同で写真作品《螺旋海岸》を制作されました。今回の展覧会ではその一部が展示されています。


志賀さんが写真という表現メディアを選んだ理由からお話は始まりました。
写真というメディアの気軽さとそれの持つ問題について。
初対面でも写真を撮ればその人のイメージが手に入ってしまう、知れるという手軽な一面と、そのある種万引きのような気まずさを共に感じながらも、写真というビジュアルイメージの持つ強さに惹かれていったそうです。


そしてお話は宮城・北釜へ移り住まれたことへ。
移り住む前と後では、写真の価値観が大きく変わり、そこには写真で地域の皆さんの為に出来ることがたくさんあったそうです。
北釜の町の写真屋さんとして町の会合や婦人会、夏祭りなどを撮影していくうちに次第に人々と打ち解け、だんだんと家族写真や飲み会、亡くなった方との最後の写真、などとてもプライベートなオファーが増えていきました。

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今まで見たどんな写真や映画よりもずっとパワーを持っているという北釜の人々と家族のような生活をしていくうちに、年配の方から昔のことを聞かせてもらう機会が増え、90年前は現在といかに違い、その時代を生きてきた人々の激しさとドライさに触れていくうちに、その昔語り(オーラルヒストリー)を記録させてもらうようになりました。
その膨大な昔語りに、志賀さんは目に見えない力を感じ、大きな影響を受けたそうです。

そして、その目に見えないすごい力、北釜の人々が持つ「地霊」のような肉眼に写らないものを写真に撮らないといけないと感じ、「螺旋海岸」シリーズの制作が開始されました。
昔から町で行っている神社などの儀式では、皆さんが獅子舞や司会など普段とは違う役割を「演じて」います。
写真ではそれに則り、儀式として、お聞きした昔語りを基に何かを「演じて」もらい、「地霊」を呼び出して、撮影されています。

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そうして、たくさんのことをみんなで共有しながら、共同して作品を制作するなか、2011年に東日本大震災が起こり、海辺に位置していた北釜は津波で大きな被害を受けました。
「津波は誰にも平等に来て、被災の個人レベルが違い過ぎ、残酷だった」と志賀さんは言われます。

しかし避難所では意外にも笑いが溢れていたことや、一方で土地の再建計画から見える「資本」の暗い部分、住む場所がなく生活習慣がぽっかりなくなり、痴呆になる方もいたという身体と記憶のお話、震災以前と以後は繋がっていて括って分けるのは違う、といったお話が続きました。

避難所で生活しながら、志賀さんは津波で流された写真を倉庫へ集めて洗い、持ち主へ返す活動に参加されていました。
家と家族を津波で流された方が写真を探しに来られ、家族の姿を見られる唯一のものである写真は、その方にとって生身の家族と同じ価値を持つものになっていました。その一方同じ場所で、自分のいらない写真を捨てる人もいて、その方にとってはそれはただの紙。
ただの紙から生身の人間まで、写真の価値は様々に変わり、目に見えない価値が揺れるからこそ関わり方次第で意味が違ってしまうのが重い、と仰られていたのが印象的でした。


最後に参加者の方からの質問の時間となりました。
志賀さんの作品は北釜の人々にどう見えているか?どれだけ北釜の方々が語ったオーラルヒストリーは事実だったと思うか?インディペンデントな小さなメディアについてどう思うか?などの質問が出ました。
志賀さんはひとつひとつの質問に丁寧に答えられ、どこで何が起こるか分からない、全て同じ星で起こっている事で、ありとあらゆることが生きていることに繋がっている実感と、今まで沢山の人が生きてきた時間の中で、自分が生きているという時間の感覚を思う、というお話で終わりました。

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志賀さんの作品は一見すると「ホラー」などとみられてしまうような、不思議な色・暗さや雰囲気を持っていますが、その根底、コンセプト、制作には非常に人との繋がりが強く結びついています。
「〈北釜の生活展〉みたいにしたらたぶん意味が違っていた」と志賀さんは話されていましたが、北釜の生活や人生、エピソード、その土地に脈々と受け継がれた目に見えない何かが輪郭を変えて、確かに写真に写り込んでいるように感じました。
震災や津波などを実際に体験されたその場のお話を聞くと、自分では想像もし得ない現実をまざまざと目の当たりにし、言葉が出て来ない、ということがありますが、その現場の感触を何万分の一かでもお話から受けるとる、ということがこれからの自分たちの災害への関わり方、所作へと繋がる大事なことだと感じます。

優しく、漫画でたたかう しりあがり寿さんの「"あの日"からの......」

この日のラボカフェスペシャルfeaturingサーチプロジェクトのゲストは出展者のお一人、漫画家のしりあがり寿さんでした。
東日本大震災の後、原発や被災地の事をテーマにマンガを描き続けてきたしりあがりさん。開催中のサーチプロジェクトvol.5では、
・戸惑って、その後笑って、支援する。ボランティア擬似体験できる《ボランティア顔出し》
・見えないものを可視化するマンガの手法「漫符」を用いた放射能の表し方を一般の人に描いてもらい、その漫符をクッションカバーにプリントした《放射能可視化》
・しりあがりさんが震災直後に震災から50年後の未来を描いたマンガからの一コマを子ども室の壁紙にプリントした《海辺の村》
の3作品が展示されています。

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ラボカフェスペシャルfeaturingサーチプロジェクト
「"あの日"からの......」

4月13日[水]19:30─21:00
ゲスト:しりあがり寿(漫画家)
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東北大震災以降、人々の心情を描き続けてきたしりあがりさんを迎えてのトークは、おのずと作品にも深く関わっている原子力発電の話題が中心になりました。

しりあがり寿さん「"あの日"からの......」①しりあがり寿さん「"あの日"からの......」②

代表作「真夜中の弥次さん喜多さん」「地球防衛家のヒトビト」の紹介から始まり、深刻な災害の最中に震災を題材にすることの難しさや、笑いの持つ攻撃性に言及されました。
当事者の方々にとってはマイナスに受け止められる可能性もあり、フランスで起きた風刺画を巡る問題にも絡めながらお話いただきました。
(出展作品であるクッションカバーにプリントした《放射能可視化》を手にお話をされるしりあがり寿さん)しりあがり寿さん「"あの日"からの......」③

しりあがりさんが広告メーカー勤務時代に、制作したCMに数件のクレームがきて映像を差し替えた、というエピソードを話していただきました。
ネット社会になり簡単に「個人の正義」が発信できるようになった今、クレームを受ける側は守りに入らざるを得ない状況が出来上がっていますが、クレームを受ける側ももう少しタフでいいのではないか、としりあがりさんは語ります。

会場からの質疑応答では、震災ボランティアに対する疑問や迷いの話も出ました。
受け入れ態勢の整っていない所に行くことは、現地の負担にならないだろうか?それでも行くべきだろうか。との問いかけに、「偽善と言われることを恐れるあまり、色々なことを考えてしまうけれど、善は偽善の中に含まれることだから、行けばいいんだよ。でも、行かなくてもいい。」という正しいか間違っているかで結論を出してしまわない、しりあがりさんらしいコメントを聴くことが出来ました。

しりあがり寿さん「"あの日"からの......」④会場からの質問では更に、「火力発電と原子力発電、どっちがいいですか?」とのストレートな質問もありましたが、
賛成か反対かで答えを出すのではなく、それぞれが異なる意見を出し合える、ラボカフェらしい貴重なトークだったと感じました。

しりあがり寿さん「"あの日"からの......」⑤

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