2019年12月 イベントスケジュール

武田晋一アーティスト・トーク 「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.9

 2019.12.7(B1事務局 サポートスタッフ 市川)

現在開催中の鉄道芸術祭vol.9で、都市における雑草の存在に着目した作品を展示している武田晋一さんと、京都大学で雑草学を研究されている冨永達教授のトークを開催しました。

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【鉄道芸術祭vol.9】12月7日開催 武田晋一×冨永達トーク「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」

まずは、武田さんからこれまでの活動や現在展示している作品についてご紹介いただきました。

本展で展示されている武田さんの作品は、「鉄道草」と呼ばれる雑草の一つ、ヒメムカシヨモギが時計のムーブメントの動きを利用してゆっくりと回転する《running》、鉄道駅のホームベンチをモチーフとした「休眠」を意味する《quiescency》、参加アーティスト3名の作品にまつわるキーワードから考案したアナグラムを雑草から漉いた紙で制作した《saying》、武田さんの自宅の前庭で伐採したススキで構成される《standing》の4つです。スライドで展示されている写真は、自宅のある奈良県東吉野村からアートエリアB1まで電車を乗り継いで展示作品を運搬している過程が写されています。これには作品を自身の身体で持って来られることと歩くことへのこだわりがあります。人間は二足歩行になることで手が空き、荷物を運ぶことができるようになりました。武田さんはこれを人間の根源性に関わることと捉えているそうです。例として、両手にサトウキビを持って二足歩行で歩くチンパンジーの姿が突然写し出された時には驚きました。

【鉄道芸術祭vol.9】12月7日開催 武田晋一×冨永達トーク「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」

なぜ運ぶ過程を可視化するのかというと、作品が作品として成立するのは展示期間だけではなく、その状態を拡張したいという思いがあると武田さんは言います。大抵の場合、作品は荷物として運搬され、展示期間が終わればまた倉庫や自宅に戻されます。しかし、武田さんは作品が展示されている時、運搬されている時、保管されている時、それらすべての状態を作品の一部と捉えて制作されており、作品がどこから来てどこへ行くのかを考えておられるそうです。以前フランスで展示をした際には、作品を飛行機の手荷物サイズにして運搬し、展示会場で開くと3mもの大きさになるといった作品を発表されました。作品が鑑賞される時と運ぶ時で、その姿かたちが変化するということも武田さんの作品の大きな特徴です。

武田さんは現在、東吉野村でヨモギを育てていて、雑草と対峙する日々を過ごしているといいます。本展覧会の「都市」「都市開発」というテーマで雑草を考えたとき、田舎ではお盆の前など、自然の時の流れに沿って草刈りの時期が決まっていますが、都市では経済が優先され、雑草にとっては草刈りの時期が予測不可能な状況であるといえます。この状況をふまえ武田さんは不安定で予測不可能な現代の都市社会を連想されたそうです。今回、雑草学者との対談が実現するに至り、「休眠性」と「表現型可塑性」が気になっていると告げて、冨永さんにバトンタッチされました。


【鉄道芸術祭vol.9】12月7日開催 武田晋一×冨永達トーク「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」

富永さんは、雑草を取り上げたことに対して感謝の言葉を述べられて、雑草のお話が和やかに始まりました。

まずは雑草の定義について紹介されるなかで、「撹乱」というキーワードが出ました。撹乱とは、植物体の一部や全部を破壊する外部からの力のことをいい、植物にとって例えば農業、耕作、災害、動物の踏みつけや、開発による草刈りも撹乱です。山野草は撹乱のあるところでは繁殖できませんが、雑草は撹乱のある場所でないと繁殖できないそうです。農業は作物と雑草の繁殖場所が重なるために、農家にとって雑草は敵になるわけです。しかし、雑草にとって抜くという行為は撹乱ですから、抜いても抜いても出てくるという無限のループに悩まされるのです。

【鉄道芸術祭vol.9】12月7日開催 武田晋一×冨永達トーク「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」

武田さんのお話にもあった都市と田舎の環境について、たとえば田んぼでは春に田植え、秋に稲刈りをするというように、撹乱の時期が予測できますが、都市においてはビルなどの建設前に刈られるため、植物には予測不可能です。ところが、撹乱が予測できるところとできないところで生えている雑草が違うそうです。たとえば、都市の歩道の隙間などに見られるスズメノカタビラは、踏みつければ踏みつけるほど穂の数が多くなり、種をたくさんつけるということが調査でわかっています。これを「表現型可塑性」といいます。雑草は周囲の環境に応じてその生態を変化させる特性があるそうです。武田さんは、自分もその時その時の環境によって作品を変えるので、これも表現型可塑性と言えるかもしれないというコメントがとてもユニークでした。

【鉄道芸術祭vol.9】12月7日開催 武田晋一×冨永達トーク「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」

話は、武田さんの作品に使われている鉄道草へと移ります。展示されているヒメムカシヨモギなどの鉄道草は、その名の通り鉄道沿いに見られますが、種が小さく軽いために列車が通る風に乗って線路沿いに広がっていくそうです。ヒメムカシヨモギは外来種ですが、外来種が新しい土地で定着するためには、運ばれる・生きる・繁殖する・広まっていく・広まった先の環境に適合するなど、いくつものステップをクリアしなければなりません。鉄道草はそれらを達成したエリートであると冨永さんはいいます。

【鉄道芸術祭vol.9】12月7日開催 武田晋一×冨永達トーク「アーティストと雑草学者のみちくさ談義」

続く対談では、武田さんから冨永さんにいくつか質問が投げかけられ、みちくさ談義はどんどん深まっていきます。

日本で勢いを増している西洋たんぽぽは、外来植物として広く知られていますが、実は関西では西洋たんぽぽと関西たんぽぽの雑種が多く生息しています。関西の熱い夏に弱い西洋たんぽぽに対して、在来の関西たんぽぽは、夏場に休眠することによって暑さを凌いでいます。現在、関西で繁殖している雑種は、西洋たんぽぽの繁殖力と関西たんぽぽの休眠の知恵を合わせ持っている種なのです。また、地中では雑草の種がたくさん休眠していて、だらだらと時間をかけて芽を出すという特徴も紹介がありました。
武田さんにとって会場に展示された作品は「休んでいる」状態らしく、作品が展示を終えて運ばれて行く過程も含めて作品という考え方は雑草の生態の特徴に近しいのかもしれません。

参加者からもさまざまな興味深い質問や感想をいただき、終始活発に対話が展開されました。冨永さんは地面を見ながら歩いて欲しいとおっしゃって笑いを誘っていましたが、これから地面を見る目も変わりそうです。

電車公演「texts in the train」を開催しました。
鉄道芸術祭vol.9 イベントプログラム

 2019.12.1(B1事務局 サポートスタッフ 三村)

12月1日(日)に鉄道芸術祭vol.9電車公演「texts in the train」を開催しました。
電車公演とは、走る貸し切り電車を舞台に、実験的なパフォーマンスを繰り広げ、観客も電車の乗客として参加することができる、その日その場限りの特別な公演です。

今回の公演では、チェルフィッチュ主宰で作家の岡田利規さんが、身の回りにあふれる情報や文献などの一部から"テキスト"を選び出し、それらを女優の青柳いづみさん、シンガーソングライターの七尾旅人さんYPYさん(日野浩志郎さんによるソロプロジェクト)が言葉と音、身体を通して独自の表現へと変えていきます。多種多様な"テキスト"が、パフォーマンスと移動する空間によってどのように乗客のみなさんと出会うのか、当日の様子をご紹介します。

▶︎電車公演「texts in the train」のイベント詳細はこちらから

 


京阪電車中之島駅では参加者のみなさんが特別切符を受け取り、貸切電車に乗りこみます。
公演車両は3車両で、座席に座ってゆっくりと旅を楽しみながら公演を鑑賞したり、車両間を自由に移動してパフォーマンスを間近で観ることができます。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

 

全車両の吊り広告のスペースには、岡田さんの選んだ日常生活で見かける看板のテキストや小説の引用など、宣伝広告とは違う印刷物が吊りさげられ、これから繰り広げられるパフォーマンスへいざないます。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

 

15時15分、電車が中之島駅を出発しました。
青柳さんの声が聞こえてきます。その声は「中之島」からはじまり続く駅名を告げていきます。そして、YPYさんと七尾さんが放つノイズのような音が徐々に重なり始め、電車が走る音と重なって車内に非日常な空気が漂います。

 

電車は地下から地上へ出て、車内が外の光で明るくなります。
青柳さんが告げる駅名は、車窓から見える広告などの"テキスト"に変わります。走る電車から眺める流れる景色のように、青柳さんの言葉となった"テキスト"も聞く人の耳と頭の中を流れていくようです。聞き取った広告を、車窓から楽しそうに探す方もいらっしゃいます。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

 

電車は駅を通過しながら、京都方面へ進んでいきます。
車内はYPYさんの放つ音が響き渡り、岡田さんの選んだ"テキスト"を七尾さんと青柳さんが抜粋し、声にして放っていきます。それらはとても意味があるようにも聞こえ、単なる情報の羅列のようでもあります。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

 

車内は昼下がりの穏やかな空気に包まれています。その中を七尾さんが、文献の一部を朗読しながら移動していきます。座席や椅子に座り、電車の中で本を読んでいるかのようです。

 

15時58分、枚方駅で電車は一時停車。
段々と陽が落ちてきて、窓からやわらかな光が差し込みます。電車の外から聞こえるまちの音と、車内で繰り広げられる音と言葉が呼応して、和音のように重なっていきます。
そして、車窓から見える夕焼けを背景にして、電車は再び走り出します。

 

16時01分、樟葉駅で電車は少しの時間停車。
七尾さんのギターが奏でられると、車内は一気に叙情的な雰囲気となり、優しくシャウトする声に聴く人は夢うつつになりそうです。今まで放たれた音と言葉が飽和状態となった車内は、幻想的な夕焼けの情景と相まって、時間が止まっているかのように見えました。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

 

そして、非日常な世界から現実へ引き戻されるように電車は折り返し、大阪方面へ走り出します。

大阪の都市部へ近づくほど七尾さんの放つ音はハウリングして、YPYさんのノイズ音も激しくなります。電車は止まることなく都市へと戻っていきます。雑誌『WIRED』からの引用「人間中心デザインよ、さらば」を青柳さんと七尾さんが連呼すると、めまぐるしい都市の日常生活が蘇ってくるようです。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

 

七尾さんと青柳さんが「触らないでください。」「引き込まれないようご注意ください。」と呼応しあう中、終着駅に引き込まれるように電車はなにわ橋駅へ到着します。

 

17時、なにわ橋駅に到着した電車の扉が105分間の旅を終えて開きます。
駅のホームからは日常音が聞こえてきます。車内で鳴りやまぬ音を残して、乗客は普段通り駅を利用するように、電車を下車して日常へと戻ります。

 


 

都市で生活していく内に、あふれる情報は視覚や頭で何気なく処理されます。今回の電車公演では日常の感覚とは違う、じっくりと言葉と音を堪能しながら心身に響き渡らせる公演でした。

ご乗車いただいた皆様、誠にありがとうございました。

 

12/1 鉄道芸術祭vol.9 電車公演「texts in the train」

写真:表恒匡

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