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「都市の身体―世界の内と外からの考察」
鉄道芸術祭vol.9 オープニング・トーク

 2019.11.8(B1事務局 サポートスタッフ 野村)

 鉄道芸術祭vol.9「都市の身体 ~外から眺める私たちの輪郭、遠くから聞こえてくる私の声~」の開幕に伴い、初日10月26日15時からオープニングトーク「都市の身体―世界の内と外からの考察」を開催しました。

 この日は本展覧会の参加者である、ジョンペット・クスウィダナントさん、小沢裕子さん、武田晋一さんの3人のアーティストに、展示作品を通して、それぞれの視点から今回のテーマである「都市と身体」について語っていただきました。

10月26日開催 鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」

 まず、ロビーにて参加アーティストそれぞれの自己紹介からスタートしました。

 ジョンペット・クスウィダナントさんは、自国インドネシアの成立や歴史、文化を背景に現代の社会状況に焦点を当てたインスタレーションをこれまで発表されてきました。例えば《Noda》(インドネシア語でしみ、汚れを意味する)は、白い部屋の様々な場所から墨がしたたり落ち広がっていく様子を撮影した作品で、インドネシアの中で、暴力などの問題=しみが対話されずに残っている現状を抽象的に表現されているそうです。

10月26日開催 鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」

 小沢裕子さんは、「言葉と体を引きはがす」ことをテーマにした映像作品やインスタレーションを制作されています。これまでに制作された作品は字幕を用いたもの、文字を用いたもの、《SPEAKERS》という作品の3種類に大別され、それらは「私」という単語に始まる言葉と、その言葉を話す・書く主体としての「私」の関係を揺さぶります。知らない言語の文字を書き写すことをリレー形式で行った作品では、伝達していく中で何が失われ、何が残り、何が生まれていくのかを追うことができ、今回の展示はそういった作品が発展したものとみることができます。

10月26日開催 鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」

 武田晋一さんは空間に応じて多様な素材やオブジェクトを配置したインスタレーションを発表されてきました。作品を制作する中でその作品を「運ぶ」ことにも関心を持ち、自身の作品をいかにして運ぶか、どのように収納するかまでの過程全てを作品と捉え、作品を運びやすいように工夫をこらしてコンパクトにまとめ、自身で運び、その様子を写真に残すことをされています。

   

 次に、展示会場に移動して、それぞれの作品に関して話していただきました。

10月26日 鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」Jompet Kuswidananto作品

 ジョンペットさんの作品は2012年に制作された《The Contingent #5》と今回大阪滞在中に制作された《Procession》の2つの部分に分けることができます。"Contingent"とは分遣隊や小部隊のまとまりといった意味を持ち、マスクの代わりに頭に巻き付けた衣類や、旗やマイク、太鼓を持った人々が一定の共通性を持ちながら何かを主張する様子を表現しているように見えます。今回の新作は《The Contingent #5》を拡張したとも言えるもので、インドネシア工場で作られた木製のおもちゃや日本の蚤の市で手に入れた物品を組み合わせたものが《The Contingent #5》を先導するように床に並べられています。新作で使われた材料は、ノスタルジーを感じるものが選ばれ、また《The Contingent #5》の隊列からは、かつてインドネシアが軍事政権下で統制されていたポップミュージックが時折流れます。

   

 武田さんの雑草から作られた紙を用いた作品《saying》では、3名のアーティストが一つずつ出し合った文字を切り抜き展示しています。「multitude」はジョンペットさんが、「mobility」は武田さんが、「intonation」は小沢さんが選んだ単語です。この3つの単語をアナグラムにして「nation」「tumult」「deity」「moil」「biotin」が構成されました。

 武田さんの作品は、ジョンペットさんの作品と小沢さんの作品を緩やかに繋ぐようにして展示されています。ジョンペットさんの隊列の隣には、レールを思わせるように外来植物が並べられた作品《running》があります。整列された外来植物たちは、時計のムーブメントの動きを利用してゆっくりと回転しています。

10月26日鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」武田晋一、解体の様子のサムネイル画像のサムネイル画像10月26日鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」武田晋一、解体の様子のサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像10月26日鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」武田晋一、解体の様子のサムネイル画像のサムネイル画像のサムネイル画像

 鉄道駅のホームベンチをモチーフとして制作された《quiescency》は、この時まで2つ並んでいましたが、このギャラリーツアー中に、武田さんが1つのホームベンチを解体し、それらの部品を組み替え大小のプラカードに変容させました。デモ行動の象徴的な道具であるこのプラカードは、ジョンペットさん作品への武田さんからの応答として展示されました。

 

10月26日鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」小沢裕子作品

 ギャラリーの奥にある5つ並んだディスプレイと、3台のプロジェクターから壁面いっぱいに映し出された映像は、小沢さんの作品です。ディスプレイの作品《石松三十石船道中》は、浪曲を耳で覚えたものを伝言ゲーム形式で5人の異なった言語を母語とする方に歌ってもらった映像です。その向かい側には《SPEAKERS》の最新作で、日本語の先生である二人と、日本語を勉強している中国人の学生二人による奇妙な会話の映像が映されています。小沢さんが大阪滞在中に外国人が多く住む地域を訪問したり、浪曲を鑑賞したりした体験が、今回の作品を構成する要素の一部となっています。

   

10月26日鉄道芸術祭vol.9オープニング・トーク「都市の身体─世界の内と外からの考察」小沢裕子

 再びロビーに戻り、最後に今回の展覧会のテーマ「都市の身体」について改めて伺いました。

 本展の副題である「外から眺める私たちの輪郭、遠くから聞こえてくる私の声」は小沢さんにつけていただいたものです。小沢さんは、自身の作品から見えてくる"身体を通して何かが伝わっていく様子"や大阪での経験から、副題をつくられ、この言葉をとても気に入っていると言います。

 公共のものを使って作品を「運ぶ」武田さんや、私を個人ではなく集団の中のひとりとすることで何かを訴える様子を表現するジョンペットさんの作品にも、このテーマは共鳴するものであると感じました。

 今回の展覧会は身体をテーマにしていながら、身体が不在であることをもって、私たちの存在や目的から発生する必然性を浮き彫りにし、不在が新しいものを生み出す側面について考えさせるようなものであると感じました。

 鉄道芸術祭vol.9「都市の身体」は12月29日まで開催しています。
会期中には小沢裕子さんと展示作品に出演している方々によるトークや、武田晋一さんと雑草学者の冨永逹さんのトークなどを開催します。そして、会期終了間近の12月22日には、いとうせいこうさんをゲストにお呼びし、展覧会場をフィールドに本展参加アーティストとのトークセッションを繰り広げます。
 引き続き、皆さんのご参加をお待ちしております!

 

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