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ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8
「都市計画の思想と場所」(中島直人さんをお迎えして)

 2018.11.13(B1事務局 江藤)

鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画 そうなろうとするCITY」の第1回目のラボカフェスペシャルは、まずは都市計画について、過去と現在の考え方そして未来のあり方を皆さまと考える場を持ちました。

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ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8
「都市計画の思想と場所」中島直人(東京大学工学系研究科 准教授)
2018年11月13日(火)19:00-21:00
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ゲストの中島直人さんは、都市の空間ができた意図とそのデザインを研究される一方で、都市の再生や構想のプロジェクトに取り組まれています。これまでの研究は、日本では関東大震災の2年後、1925年に始まった"都市美運動"に関するものと、日本都市計画学会の学会賞"石川賞"の名のもとになっている石川栄耀に関する研究が主なもので、それぞれ著書を刊行されています。石川栄耀は東京の戦災復興の責任者であり、現在の新宿・歌舞伎町をデザインした人物ですが、「『都市計画』と云う華々しい名前を有ちながら自分達の仕事がどうも此の現実の『都市』とドコかで縁が切れてる様な気がしてならない」註1)ということばを残しています。お話をお聞きするにつれ、このことばが、中島さんの都市計画に対する考え方の原点になっているように感じられてきました。

中島さんは、自身の研究を通しての都市計画のあり方について、「もっと多くの市民が共有したり参画できるものがあったのではないか。今でもそれがあるし、大事なのではないかということを考えて研究している」と言います。 現在では私たちも耳にすることのあるアーバニズムという都市計画の思想の変遷を辿りながら、中島さんの考え方に近づいていきました。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

アーバニズムの潮流

20世紀に入って都市の集中化が進むにつれ、都市においてかつて強かったコミュニティが解体される様子に問題意識を持つ人が増えてきました。そこで、社会学の分野で"アーバニズム"ということばが生まれ、アメリカのシカゴで研究が始まりました。これまで都市を考える学問は細分化され専門家の仕事でありましたが、これを包括的に、あるいは別の視点を入れて考える必要性が出てきたということです。

1990年代には自動車中心社会やそれによる都市の姿の弊害からさらに関心が高まり、サステナブルな未来を志向して都市を考える"ニュー・アーバニズム"という思想が興ってきます。ここで大事な点は、アーバニズムの思想には、都市に暮らしている人々の"実態の概念"と、社会をより良いものに変えていこうとする"規範的概念"の二つの要素が組み合わさっていることだと中島さんは言います。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

2000年代には、人工の構造物でつくられている都市空間を、もとある土地の自然の水系や生物など生態的なものを都市のインフラとして回復させるという"ランドスケープ・アーバニズム"や"エコロジカル・アーバニズム"が生まれました。

そして、2010年頃からは、行政主導で都市全体を大きく変えるトップダウンの進め方に対して、小さなアクションを試し、そこから出てくる課題を計画に組み入れていく"タクティカル・アーバニズム"が多く実施されています。

中島さんが現在進めておられるプロジェクト『高島平プロムナード再生』註2)は、1970年代に生まれたニュータウン高島平への新しい居住者の流入を目的として実験的なプロジェクトから始められたもので、タクティカル・アーバニズムの例と言えるかもしれません。かつては道路と鉄道のエリアと居住エリアを隔ってきた干渉緑地を、役割を捉えなおして、休憩できるスペースや腰かけ台を設置してみるなどの実験をおこないました。すると、住民たちはその空間を使い出し、実験を重ねることでニーズが見えてきたり、ここを使いたい人や用途が新たに生まれてきたりしているそうです。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

都市計画と人の関係、未来の都市の姿

都市計画の思想の変遷を辿ると、都市が交通インフラや建物などのハードを中心に計画されていた時代から、現代ではそこに住む人々の生活との関連性がより強まってきているのが感じられました。中島さんは、コペンハーゲンやニューヨークの人々の生活が都市の空間にデザインされた例を挙げながら、同時に「いいまちにはそのまちを面白いと思っている人、面白い場をつくっている人がいる」と言います。アーバニズムには、アーバニスト(都市計画家)の存在が、欠かせないということです。

大阪は日本では水辺の利用が進んでいるといわれますが、来場者の質問に中島さんは「大阪の人は水が都市をつくってきたという意識が強いのではないか」と答えられました。まちの人の気質が都市をつくっている顕著な例だと言えるのかもしれません。では、未来の日本の都市はどうなっていくのでしょう。多数となる高齢者のモビリティが確保される姿になっていかざるをえないであろうと、中島さんは考えています。それは、自動運転や他の新しい技術革新を伴っていくでしょう。未来のアーバニストはどのような生活スタイルを求め、都市は様々な要素を包み込みながら、どのようになろうとするのでしょうか。

鉄道芸術祭vol.8関連トークプログラム|「都市計画の思想と場所」 中島直人さんをお迎えして(2018/11/13)

註1)  中島直人氏スライドより 「『盛り場計画』のテキスト 夜の都市計画」、『都市公論』、15巻8号、1932年
註2) プロジェクト名『高島平プロムナード再生』は当日配布資料より

 

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