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「集団と群衆の心理学」(釘原直樹さんをお迎えして)
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭

 2018.1.19(B1事務局 菊池)

1月19日 (金)
ラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭「集団と群衆の心理学」
ゲスト:釘原直樹(大阪大学大学院人間科学研究科 教授)
カフェマスター:沢村有生(大阪大学21世紀懐徳堂 特任研究員)


鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」とのコラボレーションシリーズとして開催してきた"ラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭"、本日はシリーズ最後のトークでした。
今回の鉄道芸術祭では「鉄道と身体・知覚・行動」をテーマにしています。
人間の集団における知覚、行動とその心理についてより深く掘り下げていくための関連トークとして、ゲストに集団心理の専門家である大阪大学教授の釘原直樹先生をお呼びしてお話を伺いました。
人間社会ではある程度の人数の集団・組織が形成されると、暗黙の守るべきルールや約束事である「行動規範」が出来上がってきます。では具体的に行動規範とはどのようなものがあり、どれくらい人は影響を受けているのでしょうか。
それを検証したのが以下の「同調実験」です。

20180119集団と群衆の心理学1
最初にご紹介いただいたのは、大阪のエスカレーターにおける同調実験です。
エスカレーターに乗る場合に、大阪では右側、関東では左側に立つことが慣例となっていますが、そこへ逆方向に乗るサクラを混ぜていくとどの程度が同調して逆に乗るでしょうか。
実施場所は大阪モノレールの「門真市駅」と「大阪空港駅」の2箇所で、実験時の利用者内訳(近畿在住者の割合)は門真市駅が88%と大阪空港駅53%でした。
門真市駅では元々左並びがほとんどいなかったにも関わらず、2割近くの人がサクラにつられて左に並びました。それに比べ大阪空港駅ではサクラからの同調圧力がとても強く、数名のサクラが並ぶと、なんと最大7割以上の人が左に並ぶという結果が出ました。
サクラに続いて並んだ人数をカウントすると、サクラの人数を増やしても門真市駅は最大4人しか並ばなかったにも関わらず、大阪空港駅では10人以上の人が並びました。
こうしたことから、人は「暗黙の規範」に拘束されるとともに、その場の同調圧力の影響を受けて微妙なバランスの上に立って行動しているのではないかと推測できます。

では、集団が間違った判断をした時、人は同調圧力にどの程度耐えられるのでしょうか。
これは1950年代に行われた古典的な同調実験を2〜3年前に釘原さんが独自の方法で行った実験です。
実験には8名が参加しますが被験者は1名だけ、それ以外は全員サクラです。AとB、二つのカードのうちAには1本の直線が、Bには長さの異なる3本の直線が描かれており、その中からAと同じ長さの直線を当てます。サクラが全員間違った解答をしたあとに被験者が答えます。
一人で答えた場合はほぼ100%間違うことはありません。しかし7人のサクラが順々に全員間違いを選び、それを見て最後に被験者の番が回ってくると、同調圧力に負けて、自分ではそれは間違いだろうという態度をそれまで取っていながらも、なんと間違いを選んでしまうのです。
こういった実験からも、いかに人が同調圧力に影響されるかということが伺えます。

20180119集団と群衆の心理学2


「同調」というのは、他の人に合わせて楽をしたいという気持ちが背後にあり、それは「社会的手抜き」につながっていきます。
「社会的手抜き」とは、綱引きや神輿など、たくさんの人が一緒に行う場合、意識的・無意識的問わず、人任せになり一生懸命さが失われてしまうことを言います。それは「2:8の法則」などとも言われ、10人が集まれば大体2人は怠けている、というものです。


例として釘原さんが以前行った、「社会的手抜き」を数値で現す実験を紹介してくださいました。
9人で、壁から出た別々のロープを同時に引っ張って合計の力を計測します。計測係にのみ、個別の数値がわかるようになっています。
これの結果によると、一人の場合と複数人になった場合では一人で引いた時の方が出す力が大きく、人数が増えるほど力が弱まる傾向が見られたそうです。
この実験から、「個人が評価されない状況」や、「個人が努力しても全体の結果に対して無駄と思えてしまうような状況」になると、意図している・いないに関わらず、手を抜いてしまうことがあると言えます。
また、そういった手抜きをしている人が他にもいると思うことから、手抜きの同調といったことも起こります。

20180119集団と群衆の心理学3


そういった「社会的手抜き」や「同調」の心理を利用した仕組みが社会にはあります。
「オプトイン・オプトアウト」という、臓器提供意思表示で「臓器提供を望まない人はチェックを入れる」という意思表示の形式や、メールの返信における「返信がない場合はこのまま進めさせていただきます。」という形式などに見られる、デフォルトの選択肢の設定の仕方によって面倒臭さをなくし、なるべく選択肢を少なくすることで、望む回答を得るものなどです。


集団・組織の内にはそれぞれに役割があり、それを演じ守ることで組織の安寧やバランスが保たれています。役割には主に「ヒーロー」、「小役人」、「マスコット」、「スケープゴート」の4種類があります。
組織を運営していく上で、ルールを守らなかったり、なまけていたりする人(悪人、主にスケープゴートに該当する)がいるということは上記の「2:8の法則」からもわかるように必ずあります。
しかし、それらの人を排除してしまえば良いかというと、必ずしもそうとは言えません。そういった人の組織への影響力は、ヒーローの役割を持っている人などに比べると低いので、善(品行方正、主にヒーロー)な人が間違った場合の方が大きな過ちが起きることもあります。
「善がいいかというと、必ずしもそうではないのです。」と釘原先生は仰います。
そういったスケープゴートにヒーローが自分の落ち度を被せ、排除していくということも起こります。しかし、排除することが原因の解決にはなっていないので、同様な問題が再び起こり、そうして排除を続けていくと、組織の士気も落ちていき、運営はうまくいきません。
集団の中にいるなまけものを許容する「寛容さ」が、長い目で見ると集団の存続に役立つのではないか、集団の健全さの一つの指標になるのではないかと釘原さんが仰っていたのが印象的でした。

20180119集団と群衆の心理学4
今回のお話を聞いていて最終的に、個性を認める、寛容する、ということについての話に思えました。
ある一側面から見たら「なまけもの」は足を引っ張っているだけかもしれませんが、見方を変えればそのような人がいることで、社会や組織はバランスを保っていると言えます。また、全く違う側面では高いパフォーマンスを発揮している場合もあるかもしれません。
寛容になることによって、組織は保たれるうえ、さらに他の可能性も見えてくるのではないか、という気がしました。
今の社会では、多様な考え方がある割に価値観が一辺倒すぎるように感じます。
人の多様さを寛容に受け入れることの重要さを、改めて感じました。

 
▽ 「レールの曲げ方概論」 - 2017.12.8(B1事務局 菊池)

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