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「レールの曲げ方概論」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭

 2017.12.8(B1事務局 菊池)

12月8日(金)、鉄道と現代美術の企画展・鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」の関連トークとしてラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭「レールの曲げ方概論」が開催されました。

今回の展覧会「鉄道芸術祭vol.7」の展示作品の中には、本物の鉄道レールが立花さんの彫刻作品として出品されています。長さ5メートル程度、重さは300kgほどになります。
このレールは、本日のゲスト「工務部保線課」のお二人に京阪車両基地で曲げて頂いたものです。これを中心に展覧会の構成が組まれていったという経緯がある重要な作品で、保線課の方々の仕事なしには得られないものでした。
では、保線課の仕事とは何なのでしょうか。

普段電車に乗るときにはあまり意識していないものの、それがないと電車は走ることが出来ない「線路」。日々線路に危険がないかを点検し、整備し続ける京阪電車「工務部保線課」のお二人をゲストにお迎えして、保線課の日々の業務内容や、実際のレールの加工についてなど、私が日頃知り得ない「線路(軌道)」のお話を伺いました。

12.08ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.7「レールの曲げ方概論」

ゲスト:
木戸宏(京阪電気鉄道(株)工務部保線課大阪保線係主任)
築山拓矢(京阪電気鉄道(株)工務部保線課設計担当)

カフェマスター:
塚原悠也、木ノ下智恵子(アートエリアB1運営委員)

まずは今回のトークタイトルにある「レール」や「線路」が何を指すかというところからトークは始まりました。
線路とは、レールだけで構成されているのではなく、主に《砂利や砕石(バラスト)》、《枕木》、そして《レール》の三つで構成され、これらは「軌道」と呼ばれます。他にも線路には頭上の電線やそのほかケーブルや信号などの構成物もありますが、今回のトークでは、本日のゲスト「保線課」のお二人が担当される「軌道」についてのお話がメインとなりました。
ゲストの木戸さんは保線課一筋30年の職人さんであり、築山さんは設計、経理担当です。
京阪電車は住宅地の間を縫って走っている為、とてもカーブの多い路線です。今回はインターネット上の地図を使って京都の路線を俯瞰しながら話していきました。
乗っているとあまり感じないことも多いですが、地図上で見てみるとかなり急なカーブもいくつかあります。

12.08ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.7「レールの曲げ方概論」

では、そのレールは一体どうやって曲げているのかというお話に入っていきました。
1メートルあたり約50kgという、とても重くて硬い鉄の塊を曲げるには、機械ではなくレール敷設現場で人間の手で曲げています。先に設置してある枕木に沿って、テコの原理を使って人力で少しずつ曲げて入れていくので、機械であらかじめ曲げたものを入れるということはありません。機械を使って曲げるのは、ごく限られた特殊な一部分のみです。
機械で曲げる場合は専用のマシンを使って行われます。レールを左右2点で挟み、真ん中をジャッキで押すという、かなりシンプルな仕組みです。機械自体は小型のため、レール全体を一度に曲げるのではなく、機械を少しずつ移動させながら全体を曲げる作業を行います。

1208ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.7「レールの曲げ方概論」

レールの主な原料は鉄です。かなり純度の高い、上質な鉄が使われています。
鉄は温度の変化によって膨張したり収縮したりするので、鉄の塊であるレールも気温の変化によって、なんと伸び縮みします。場合によっては曲がったり千切れたり、特に夏場は急激な熱膨張で、枕木に押さえつけられているレールが一気に伸びる瞬間に「ボン!」と破裂音がすることもあります。
そういったレールの変形に対応する為に、継ぎ目には多少のすき間がわざと空けてあります。走行中の「ガタンゴトン」という電車特有の音は、この継ぎ目を通る時に鳴る音なのです。
日々軌道(線路)の状態を監視して、夏はすき間を広げ、冬は逆に間を詰め、異常があれば交換したりと、電車を運行する上で危険な箇所がないように、巡回しながら点検、補修・維持管理を行うことが、保線課の主な業務です。

具体的な点検方法は、電車の運転席の隣に乗ってレールを目視しながら車両の揺れを感じる調査や、実際に線路に下り目視で点検します。
点検の結果異常があった部分のレールを交換する場合は、枕木はそのままにレールのみを交換します。当然1mmのズレもなく、元あったものと全く同じ場所に、寸分の違いもなく設置していきます。それらは全て、人の手で行われています。
近年は機械化が進み、異変箇所の調査に機械を用いるようになりましたが、機械の数値だけでは見えないものもあるため、最終的にはmm単位のレールのズレを、身体の感覚で判断して調整していきます。「保線は経験工学」と言われており、経験を積んだ人間が判断し、作業をするという、まさに文字通りの職人の世界です。
自分の保線担当箇所は、「自分の家の庭だと思って手入れしろ」と木戸さんは入社当時に先輩社員から教わったそうです。
日々伸び縮みして変化するレールは「生き物です」というお二人のお話がとても印象的でした。

 12.08ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.7「レールの曲げ方概論」

今回のトークは、「レール」がテーマで実際の作業をされている方がゲストということもあり、非常に電車に関心の高い方が多く参加されていました。トーク後半の質疑応答では待ってましたとばかりにかなりマニアックな質問が次々と飛び交い、とても賑わいました。レールの繋ぎ目を溶接する場合の方法や、レールのより詳しい曲げ方、車輪とレールの接地面の荷重について、京阪で一番長いロングレール(溶接された、継ぎ目のないレール)の長さ、レールの敷設時の持ち上げの方法、などなど。時間ギリギリまで質問は尽きませんでした。

普段から電車に乗るときだけでなく街中でもよく目にしているはずの線路ですが、あまり気にしたこともなく知らないことばかりでした。まさかレールが温度でそこまで変化するようなものだとは思いもよらないですよね。
それは裏を返せば、鉄道利用者が「気にならない」レベルまで異常が起こらないように、常に点検と補修をしている保線課の皆さんをはじめとした鉄道会社の安全管理の徹底さを表している、という話がありました。
乗るたびに「電車は危険かもしれないから覚悟をして乗る!」などと考えるようなものは普段から気軽には利用できません。
高速で移動する電車には本来危険なことがたくさんあるはず。そこをしっかりと確実に安全を確保し、利用者が危険を感じることのないよう、電車は安全でしかも正確であるという信頼を昔から勝ち取ってきた日本の鉄道会社の仕事のレベルの高さがあるのだということを感じました。

 

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