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使節団トーク「車窓の旅〜ポルトガル編〜」
鉄道芸術祭vol.7関連トークプログラム

 2017.12.3(B1事務局 三ヶ尻)

12月3日(日)電車公演「電車と食堂とコントと」終演後、 トークプログラム「車窓の旅~ポルトガル編~」を開催しました。

鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」のはじまりにもなったポルトガルの旅について、リサーチメンバーである建築家の荒木信雄さん、作家の石田千さん、料理家・文筆家の高山なおみさん、そして鉄道芸術祭vol.7メインアーティストの立花文穂さんをお迎えし、それぞれの視点から見たポルトガルの旅と展覧会についてお話し頂きました。

12.03使節団トーク「車窓の旅〜ポルトガル編〜」

─ポルトガル・リサーチの旅の経緯について─

2017年11月10日から開催している本展は、2017年の夏、メインアーティストである立花さんの提案により、荒木さん、石田さん、高山さんとともに、ポルトガルをリサーチする旅から始まりました。

 

なぜポルトガルをリサーチ?とお思いかもしれませんが、これには経緯があります。

立花さんは何かを生み出す時に建築家の荒木信雄さんとお茶を飲むことが慣例で、今回も例によって立花さんと荒木さんはお茶をしながら本展のアイデアを生み出していきました。2人が鉄道芸術祭を企画するにあたって、荒木さんがよく訪れていたポルトガルのポルトとリスボンは、京都と大阪に共通している点が多いということに気がついたそうです。

また日本とポルトガルは歴史的にみても関連が深く、安土桃山時代、日本からポルトガルへ旅立った天正遣欧少年使節が活版印刷や宗教の概念など様々な技術や文化を持ち帰り、それらが日本の近代化に大きな影響を与えました。

このような共通点もあり、今回、現代の使節団として4人はポルトガルへ渡ることとなったのです。

 

ポルトガルに何度も行かれている荒木さんは、リスボンにあるパスティス・デ・ベレンのエッグタルトは絶品で忘れられない味らしく、【エッグタルト→食べること→高山なおみ】と立花さんの中で線が結ばれた結果、3人目の使節は料理家であり文筆家の高山なおみさん。そして、雑誌「球体」で『もじの緒』を連載されており、旅の情景を文字で形にする作家の石田千さんが4人目の使節となりました。

12.03使節団トーク「車窓の旅〜ポルトガル編〜」

─ポルトガルの日々─

高山なおみさん「ポルトガル料理の盛り付けと食べ方」
ポルトガルではイワシの塩焼きやたこを煮付けたもの等、日本人が普段食べている料理とそっくりなものによくお目にかかります。またポルトガル料理の薄い味つけも日本人の舌に親しみ深いと言われています。

高山さんはポルトガル料理そのものや味ではなく、食べ方やお皿の盛り付けなどを観察されていました。ポルトガル料理はメインディッシュの上に規則的な大きさに切り揃えらた副菜がおおいかぶさるように盛り付けられていることがよくあるそうです。
また、電車公演で上演された『イワシとムサカ』では、高山さんがイワシと付け合わせの野菜たちを細かく刻み、混ぜ合わせて食べる様子が印象的でした。立花さんは高山さんのイワシの食べ方をみて、料理を口に運ぶまでの過程も料理をしているようだと言い表していました。

12.03使節団トーク「車窓の旅〜ポルトガル編〜」

石田千さん「ポルトガルのサウダージ」
ポルトガルの民謡歌謡、ファドを好きな方も多いのではないでしょうか。ファドの歌詞には、サウダージ=郷愁、懐かしい気持ちを表わす言葉が度々登場します。石田さんは、ファドに限らずポルトガルの文学や詩にもこのサウダージを大切にしている印象があると言います。そして、ポルトガルの人たちの言うサウダージをリスボンの坂から見る街並みにも感じたそうです。リスボンは坂の多い町で、歩いているとすぐに息がきれます。その度に立ち止まり、振り返る。振り返ると青いテージョ川。石田さんは、この立ち止まり振り返るからだの行為と心情にポルトガルの人たちのサウダージがぴったりだと感じました。

また、旅の間は亡くなった人たちのことを考えていたという石田さん。旅の最中に訪れる余白の中に、今はいない人たちの姿が浮かび、ポルトガルへの旅はとくに記憶や気持ちの整理をする時間だったと言います。

 

荒木信雄さん「何もない感じに引き寄せられる」
荒木さんがはじめてポルトガルに行ったのは30代の頃でした。はじめて行った時から、荒木さんはポルトガルの何もない感じに引き寄せられたと言います。その経験から、何もない余白の部分をどう捉えるのか、他者といかに余白のような時間を共有するのかということをよく考えるようになったそうです。 またある時、ポルトガルで夕日を見た荒木さんは心を打たれ、「人は一瞬の記憶でもつのだ」と考えるようになりました。その夕日を見た時の感覚が荒木さんの思考に多大な影響を与えていると言います。

12.03使節団トーク「車窓の旅〜ポルトガル編〜」

立花文穂さん「見るタイミングが変われば、見るポイントが変わる」
立花さんは鉄道芸術祭vol.7に取り掛かる為にまず、電車に乗ることから始めました。京阪電車で〈京都─大阪〉間を何度も往復したそうです。電車に乗ったら外を見たいので、必ず窓側に座るという立花さん。しかし撮影中に感じたのは、外の風景を見ているようで意外とガラス面を見ているかもしれないということでした。 立花さんの作品「川の流れのように」では、車窓からみえる風景、そして車窓のガラス面に反射して写り込んだ車内の様子、双方を映し出しています。車窓からみえる風景などは立花さんが意図して映したものですが、車窓のガラスに反射していた車内の様子などは意図せず写り込んでいたものも多くあったそうです。今回作品をつくる際、後者が意外と良いと感じられたと立花さんは言います。鉄道芸術祭vol.7のメインビジュアルになっていた車窓に映った女性は立花さんにとって意図せず写り込んでいたものだったようです。この女性が本展のメインビジュアルとなったように、見るタイミングが変われば、見るポイントが変わるとおっしゃられた言葉がとても印象的でした。

また立花さんは、ともに現代の使節となった荒木さん、石田さん、高山さんについて、"自分時間で動く人"と表現されていました。それぞれのタイミングでものを生み出せる人たちなので、ポルトガルの旅が何にもならないはずがないと確信があったと立花さんは語ります。それぞれの時間で動いてもらうために「もしかしたら一緒に旅をしないほうが良かったかもしれない」という立花さんの言葉に、会場では笑いが起こりました。

12.03使節団トーク「車窓の旅〜ポルトガル編〜」

それぞれのエピソードを聞く中で、ポルトガルの土地から受け取ったもの、また、それぞれの感覚や経験がゆるやかに混じり合い、影響し合う旅だったのだと感じました。そして、鉄道芸術祭vol.7「STATION TO STATION」と「球体7号」としてアウトプットされた時、展覧会場の中で端々に感じる異国の文化の匂いが、わたしたちに旅に出向く直前の時のようなワクワクとした気持ちを想起させたのではないかと思いました。

 

 

 

 

 
△ 「レールの曲げ方概論」 - 2017.12.8(B1事務局 菊池)
▽ 電車公演「電車と食堂とコントと」を開催しました。 - 2017.12.3(B1事務局 三ヶ尻)

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