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サーチプロジェクトvol.6 クロージングトーク&イベント「クロージング・スパークパーク」

2015年から3回にわたって開催してきたアート&サイエンスの企画展の最終章「ニュー"コロニー/アイランド"3〜わたしのかなたへ〜」は6月25日(日)に最終日を迎え、「クロージング・スパークパーク」と題したクロージングイベントを開催しました。 

本イベントは、大きく分けて2部構成で開催しました。
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■第1部 ギャラリーツアー&トーク
プロジェクトメンバーによるギャラリーツアー&クロージングトーク〜展覧会の振り返り〜

■第2部 ライブ&パフォーマンス
Drone Development Departmentによるドローン飛行
光と音が交差するスパークパーク・ライブパフォーマンス
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6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」クロージングトーク

■■第1部■■

第1部では、本展のプロジェクトメンバーとともに巡るギャラリーツアー&デモンストレーション、続いてトークをおこない、会期中に開催した6本のトークプログラムや約3ヶ月の展覧会の様子を振り返りました。 

 

〜ギャラリーツアー&デモンストレーション〜

ギャラリーツアーのはじめに、本展のコンセプターである大阪大学 生命機能研究科/医学系研究科 特別教授の吉森保さんより、改めてご自身の研究活動についてご紹介いただきました。吉森さんのご専門はオートファジーの研究です。オートファジーとは私たちの体の細胞が毎日細胞のなかでものを分解する仕組みのことです。私たちの体を構成する主要な成分であるタンパク質は、絶えず合成と分解を繰り返していますが、細胞内でタンパク質を分解するための主な機構も、オートファジーです。

タンパク質は20種類のアミノ酸の組み合わせでできています。アミノ酸が直線上に並んでいる状態がタンパク質の一次構造で、らせん状となるのが二次構造、折りたたまれると三次構造です。さらに、三次構造のタンパク質どうしが結合して意味や役割を持つようになったものを四次構造と呼びます。このように複雑な階層構造を持つタンパク質を、オートファジーは再びアミノ酸へと分解するのです。この仕組みが、本展の根底にあるコンセプトとなっています。

展覧会では、会場全体を"体内公園"に見立てました。建築ユニット dot architectsは、タンパク質が20種類のアミノ酸からできていることになぞらえて、約20種のパーツと接合方法で設計した"細胞的遊戯装置"を作りました。

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ギャラリーツアー

広い壁面には、やんツーさんによる体内をイメージしたバーチャル映像がパノラマで映写されました。

会場の遊戯装置と壁面の映像が連動していて、来場者の動きに反応して映像の中にも遊戯装置を3Dスキャンしたものがごろごろと増殖したり、くっつきあって固まったりします。

つまり、階層構造においては三次構造である"細胞的遊戯装置"は、会場で人が遊ぶことによって、やんツーさんの映像の中で四次構造へと至るのです。

さらに、やがて映像内の天井が降りてきて全てが一層されるのですが、これはオートファゴゾームという構造体が細胞内のものを包み込んで分解するという、オートファジーの仕組みを再現しています。

また会場には、細胞の中をイメージした映像が流れるVRメガネを付けて遊べるブランコとシーソーがあり、まるで自分がタンパク質となって体内を浮遊するような感覚を体験することもできました。

ギャラリーツアーの途中では、VR付きのシーソーや、体内公園を縦断する大きなスロープの先端に設置された空中ブランコを、来場者数名に実演体験していただきました。空中ブランコが宙に飛び出すと、会場の皆様から大きな拍手が起こる一幕もありました。

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ギャラリーツアー 〜トークプログラムの振り返り〜

本展は、学術的な題材と建築・メディアアートを融合して、未知で不確かである"私たち自身"について来場者に多様な角度から問いかけることを企図していました。会期中はテーマについてさらに多方面から掘り下げるために、6回のトークプログラムを開催しました。クロージングトークでは、様々な専門分野の方々と、プロジェクトメンバーがくり広げたトーク内容を振り返りました。

学術的な内容ゆえ容易には理解しにくい回もありましたが、様々な視点から私たち自身を考える大変刺激的な機会となりました。

※関連トークプログラムの内容につきましては、下記リンクよりスタッフブログをご覧ください。

5月24日(水)開催
「膜である人の内と外」
ゲスト:永田和宏さん(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)

5月31日(水)開催
「ビデオゲームにおける『遊び』を考えてみる」
ゲスト:飯田和敏さん(ゲームクリエイター/立命館大学映像学部インタラクティブ映像学科 教授)

6月1日(木)開催
「"わたし"という彼方を巡る思考の旅」
ゲスト:島薗進さん(宗教学者、上智大学大学院 実践宗教学研究科 教授)

6月8日(木)開催
「『超ひも理論』から捉える未知なる"私"と"彼方"」
ゲスト:橋本幸士さん(物理学者、大阪大学大学院理学研究科 教授)

6月15日(木)開催
「視覚がもたらす不思議と脳細胞の秘密」
ゲスト:藤田一郎さん(脳科学者、大阪大学大学院生命機能研究科 教授)

6月16日(金)開催
「『遊び』から見る人間の本質」
ゲスト:西村清和さん(美学者、國學院大學文学部哲学科 教授)

 

〜展覧会でのできごと〜

今回の展覧会は、体験型の展示ということもあって、老若男女問わず様々な方々にご来場いただき、会場で実施した来場者アンケートには、子どもから大人まで多様な感想が寄せられました。他方、会場で日々来場者を案内し、その安全を見守っていたのが、サポートスタッフ(ボランティア)の皆さんです。トークの後半では、来場者アンケートと、サポートスタッフの感想を元に、会場での出来事をふり返りました。

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」クロージングトーク

アンケートの感想では、遊戯装置について、大人の方は総じて怖いというご意見多かったようですが、一歩踏み出して楽しんでくださった方も多くいらっしゃいました。一方で、遊ぶ子ども達を見守る保護者の方々からは、危なさを感じながらも子ども達は満足そうであることを冷静に見つめていらっしゃる様子が感じられました。展覧会のテーマや内容については、細胞を公園に見立てる発想や自分たちの細胞内の営みそのものに対して、驚きの声が寄せられました。

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」クロージングトーク遊戯装置で大いに楽しんでくれた子ども達からのご感想では、VR装置のことを「げんだいのメガネみたいなもの」と言い換えるなど、独創的なことばの表現がみられました。「てづくりなのでこわかった」という建築家にとって興味深い意見が紹介された際には会場に笑いが起こり、「大学生になったら大阪大学に入ってもっといろいろしりたい」という声に、吉森さんから「100点!」の声が上がりました。

続いて、本展のサポートスタッフの声を抜粋し、ご紹介しました。 

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」クロージングトーク

男性よりも女性が積極的な場合が多かったということや、遊戯装置がコミュニケーションの場になって他者を結びつけるということが起こっていた様子、現代の子ども達のことを思ったり、体に触れるという行為が大人になるにつれ少なくなっていることに気づいた等、様々な感想がありました。

サポートスタッフは危険な場合もありうる遊戯装置で遊ぶ来場者の姿を緊張感を持って見守っていましたが、「はっきり危ないとわかるので、これまでの展覧会より案内時が気楽だった」という意見もあり、危険を危険ですと示すことで、どのように関わってもらうかという個人の判断を促し、コミュニケーションが明確であったのではないかと思われます。

 

〜締めくくり〜

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」クロージングトーク

吉森さんが全体を通して熱く語っておられたことは、細胞一つひとつに宇宙があること、その宇宙はまだまだ解明されておらず、尽きせぬ謎が皆さんの体の中にあり、研究者が見つけたことは皆さんと分かち合いたいという研究者からのメッセージでした。普段芸術やスポーツを観たり体験したりして感動されるように、「科学を通して一緒に感動したいというのが科学者の夢です」と語られたのが印象的でした。

やんツーさんは、本展を通して出会った「生命を規定するのが膜である」という定義に衝撃を受けられたようで、今後の創作活動に繋がる新しいアイデアの元に出会えた場にもなったようです。

 dot architectsの土井亘さんは、サーチプロジェクトでは研究者と議論しながら、全てを想像し得ないところで話を重ねて進めていく過程が面白く、本展は単なる「遊び」でも「企て」でもない射程の深いところまで行けたのではないかと話し、同じくdot architectsの寺田英史さんは、今回は細胞のための建築物をつくったが、今後建築家が「人間でないもののためにどうアクションできるのか身につけていきたい」と語られました。
また、家成さんは、素粒子レベルでは個と個の間に違いがないこと、いわば「わたしのかなたへ」行けば行くほど私がなくなっていくという感覚が感動的であったと語りました。

吉森さんがおっしゃられた「細胞まで行くとあなたも私もみな一緒である。」という言葉でクロージングトークは締めくくられました。私たちの体の中の、細胞や素粒子などのごく小さな世界では、人間関係や社会問題の解決のきっかけになるのではないかと思わせる不思議な真実が存在しています。

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■■第2部■■
ライブ&パフォーマンス

〜ゲスト・Drone Development Departmentによるドローン飛行〜

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ドローン映像

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ドローン飛行

トークが終わり、ドローンの羽音が聞こえてきました。スクリーンにはドローンに搭載されたカメラが写す体内公園があります。中之島を拠点に活動するDrone Development Departmentによるパフォーマンスです。

ドローンのカメラを通して、これまでとは全く違う視点、全く違う視線の動きで見ると、人間の視覚で捉えていた体内公園とは別の世界である

かのような感覚にもなります。また、シーソーをしている人間を斜め上から見る感覚は、体内公園で繰り広げられていた遊びの思い出を回想するようでもありました。2周の飛行を終え、スタート地点に降り立った後に、会場からは拍手が起こりました。

 

〜ライブ&パフォーマンス〜

舞台は最終章のDJ KΣITOさん、やんツーさん、dot architectsによるライブ&パフォーマンスへ。ここからは、舞台、客席ともに"体内公園"(展覧会場)へと移動します。

ほどなくして、ビート音が鳴り響き始め、公園のあちらこちらで勢いよく電灯が点滅しはじめました。スロープの先のDJ台でパッドを叩き、トラックメイクをおこなうのは、トラックメイカー、DJのKΣITOさんです。様々な音やリズムが重なり、やんツーさんによる"仮想の体内公園"(映像)の中を歩くおじいさんの姿、暗闇の中で不意に点いては消える灯り...。

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ライブ&パフォーマンス

緩やかなリズムに変わると、KΣITOさんがインラインスケートを滑りながらDJ台を離れました。駆けのぼったり滑り下りたり、ジャンプしたりと、体内公園で縦横無尽に滑りまわるKΣITOさんの動きに合わせて、やんツーさんがKΣITOさんの靴に施した仕掛けによって新たな音が加わりました。

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ライブ&パフォーマンス

再び軽快なリズムが始まると、dot architectsの皆さんが会場に入り、遊戯装置の解体が始まりました。音楽に加えて電気ドリルの音や床に置かれる部材の音が鳴り響き、さらに体内公園は渾然一体となりました。 

6月25日サーチプロジェクトvol.6 「クロージング・スパークパーク」ライブ&パフォーマンス

タンパク質が自立的に異なる役割を持って働き、それらが私たちの体内で驚くべき巧妙なシステムをつくりあげ、宇宙にも似た壮大な世界が繰り広げられている。今回のクロージングイベントは、展覧会を通して考察した体内世界や、"わたし"という存在の不思議さや不確かさ、そして会場での様々な出来事がこのライブ&パフォーマンスというかたちで結実したように思います。

本展は、たくさんの来場者と会話をし、時には身体的も接触することで、たくさんの気づきや学び、そして未来への何らかの手がかりを感じることができました。また、関連トークプログラムを重ねながら様々な専門分野を超えて、新たな気づきも見出すことができたことも大きな特徴でした。

ご来場くださいました皆様、展覧会を支えてくださった皆様、どうもありがとうございました。

 

アートエリアB1では、この「ニュー"コロニー/アイランド"3〜わたしのかなたへ〜」の3カ年の軌跡を記録集というかたちでまとめ、未来に残していきたいと考えています。発行はまだ先になりますが、ぜひご期待いただければ幸いです。

 
▽ 「遊び」から見る人間の本質(西村清和さんをお迎えして) - 2017.6.21(B1事務局 大槻、鄭/サポートスタッフ 石原)

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