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「膜であるヒトの内と外」(永田和宏さんをお招きして)

 2017.6.6(B1事務局 サポートスタッフ 川原)

5月24日(水)、現在絶賛開催中のサーチプロジェクトvol.6「ニュー"コロニー/アイランド"~わたしのかなたへ~」の関連企画として、「膜であるヒトの内と外」というトークプログラムを開催しました。

ゲストには細胞生物学者で歌人の永田和宏さんをお迎えしました。細胞膜の研究、そして歌人として著名な永田さん。今回のプログラムでは、まるでひとつの社会を形成しているような細胞の世界を通じて、"わたしたち"の内にある未知なる世界を見つめ、そしてそこから人間社会を見つめ直すようなトークになりました。

会場は超満員!皆さんの期待が伝わってくるなか、始まりました。

5月24日「膜であるヒトの内と外」ゲスト:永田和宏(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)
永田さんのお話しは、大学教育論から、細胞のミクロ度合をどう印象付けるか、学問とはなにかといったところから始まり、細胞の専門的な話から細胞膜の働き、細胞で起こっている現象へと進みます。

やがて話は細胞から飛び出して、社会の中の自己と他者とは、グローバリズムと多様性とは、など、話がどんどん展開し、そしてあっという間に終演を迎えました。

今回お話し頂いたどの話題も面白く、頭を刺激するものでした。その中からいくつかご紹介します。

5月24日「膜であるヒトの内と外」ゲスト:永田和宏(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)

①大学における教育

「大学における教育は、小中高とは別のものである。極論をいれば、教科書はいらない。研究者は、教科書に載っていないことを、何がわかっていないのかを教えるべきである。答えが必ずあるのではないこと、答えが一つではないことを、社会に出ていく準備として教えることが大切である。」
このお話を聞いて、かつて、大学で講義を受けていた課程では、ひたすら図書館で調べれば、解がありレポートが書けましたが、研究室に入ると全く違い、思った以上にわかっていないことが多くて、わかっていることも結果と考察と検証の上に成り立った、小さな断片をつなげていったものだと感じたことを思い出しました。

 

5月24日「膜であるヒトの内と外」ゲスト:永田和宏(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)

②本当のことを知りたいということが基礎科学の動機である。

「最近、ヒトの細胞数が60兆個から37兆個に訂正されたことは、大きく何かの役に立つ訳ではないが、その事実をうれ

しい、面白いと思う人はいる。知識を学問(学ぶ意欲)につなげるには、感動が必要である。例えば、細胞の数、DNAの長さを地球と比較するなど工夫する。ヒトのすべての細胞を一列に並べると60万キロメートル、一方地球は一周4万キロメートル。」
TEDのプレゼンテーションでヒトの全ゲノム配列のすべて印刷した書物のようなものが登場したことがありました。「A、T、G、C」の文字が並んでいるだけの印刷物です。しかし、初めて全ゲノムの配列のことを知った人には、あまりに膨大なボリュームに驚く人もいるはずです。アートも、役に立つかどうかを目に見える数値としては、測りにくいものです。この点で、基礎科学とアートは共通するところがあります。違うところは、科学が提示するものは、提示した時点においては、普遍性を持った事実であることが求められることに対して、アートの事実は、場所、時間、他者から自由である点だと思います。それゆえに、物事を大胆に変換し、拡張し、五感に働きかけることができます。そして、面白いことに、自然科学は、アートに多くのインスピレーションを与えることがあります。今回の展覧会は、まさにその場になっていますので、ぜひ、体感してみてください。


③細胞の膜の内と外

5月24日「膜であるヒトの内と外」ゲスト:永田和宏(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)「細胞生物学の視点では、生命の最小単位は細胞。生命は膜による区画から始まり、生きているということは外界から内部を区画していること。細胞が自分の内部とすると、腸内は外部ともいえる。細胞膜は10ナノメートル(細胞を1メートルとすると0.5ミリメートル)と非常に薄い。薄く、脂質2重膜から成り立つため、物質を移動させるゲートが適切に生まれては消える。恒常性の維持のため、膜は激しい変化を繰り返している。」

久しぶりに、専門的な話を楽しく聞いていて、ふと、これはわたし自身に初歩の知識があるから、すっと入ってきているのだと気づきました。知識を持っていると、理解し、考える余裕が生まれ、その次のことに興味も湧くのだと思います。そういった意味では、高校までのある程度の詰め込み学習も意味があると思えました。
同一の状態を保つことは、変わり続けることであるという。一見禅問答のようですが、原子の世界も交換や揺らぎが日常であって、視点がかわると、"わたし"というのはかなりマクロなのだと、相対は面白いと感じました。

トークの終盤からは、細胞膜がたゆみないせめぎあいの中で折あいをつけている姿に、社会における自己と他者、グローバリズム、国境の在り方、国の在り方をなぞらえて見つめるお話もありました。

5月24日「膜であるヒトの内と外」ゲスト:永田和宏(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)ヒトは細胞でできていて、社会は人でできていて、国家は社会からできていて、地球は国家からできていると考えられるとすると、細胞の営みと、国家と地球の在り方が似通うほうが自然なのか?、正しいのか?、そうなると、人間の思考とはなんなのか?、人間の思考はどう生まれるのか?、思考は、単なる物質の移動に以上のものがあるはずか?など、ふわっと別のところに心が連れていかれるような、不思議を感じた時間でした。

会場からの質疑では、学生の自信喪失論やミトコンドリアの話、集団となる時の細胞の話、研究者の悩みなど、様々な質問が飛び出し、本当に、熱く語り明かしたいトピックスが満載のラボカフェでした。

5月24日「膜であるヒトの内と外」ゲスト:永田和宏(細胞生物学者、歌人、京都産業大学 タンパク質動態研究所 所長/総合生命科学部 教授)

 
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▽ オープニングトーク「ニュー"コロニー/アイランド"3 ~わたしのかなたへ~」 - 2017.4.7(B1事務局 三ヶ尻/サポートスタッフ川原)

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