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「見えない世界の現し方」(五十嵐大介さんをお迎えして)

 2017.3.20(B1事務局 スタッフ 菊池)

展覧会「ストラクチャーの冒険」最終日の前日、1月21日(土)に、出展作家の一人である漫画家の五十嵐大介さんをゲストにお迎えして、トークプログラム「見える世界と見えない世界を描く/漫画家・五十嵐大介」を開催しました。今回は、進行役として京都マンガミュージアムの研究員である伊藤遊さんにもお越し頂き、五十嵐さんの作品の魅力に迫りました。

「魔女」紹介

五十嵐さんは、緻密な描写と独特の世界観で、自然と人間の繋がり、神話や伝承の世界、生態系や生命のなりたちを描き出す漫画家として知られています。今回の鉄道芸術祭では、五十嵐さんの代表作の一つである短編集『魔女』(小学館)などの原画をもとにしたインスタレーションにより空間を構築しました。

五十嵐さんの代表作には、
魔女という一貫したテーマに独自の視点を加えて描かれた短編集『魔女』、
海と港町と水族館を舞台に、宇宙と生命の成り立ちに迫る長編作品『海獣の子供』、
五十嵐さんご自身の自給自足の経験をもとに描かれ、2014〜2015年に映画化された『リトル・フォレスト』などがあります。

今回のトークでは、それぞれの作品のルーツを紐解きながら、展覧会のテーマである「ストラクチャー」(文明や歴史を内包する世界の構造)に対する、五十嵐さんの視点や考えをお伺いしました。

 展覧会使用コマ

五十嵐さんの作品に共通する魅力の一つとして、非常に緻密に描かれる風景・景色がありますが、それらの風景や景色のほとんどは、実際に五十嵐さんが見てきた景色が多いそうです。

五十嵐さんにとって、旅先での風景のスケッチは、初めて行った場所や空間と仲良くなる為の行為だと言います。

もともとは、周りの生き物を観察したり、好きな歌を口ずさんだりすることで、その場所と徐々に馴染んでいく感覚があったそうですが、次第にその詩や言葉が自分のもので無いことが気になりはじめます。そして、自分なりの手法で場所へアプローチすることを考えた結果、スケッチという手法に行き着きました。
スケッチを通して、初めて会った場所と仲良くなり、描き終わった時にはその場所と繋がる感じがして、顔を上げると景色が違って見えるそうです。

「自分と空間を隔てている距離感がなくなり、"自分がちゃんとそこにいる感じ"」

その行為は、漫画のためのメモというわけでも、練習というわけでもなく、五十嵐さん曰く、その場所に「あいさつ」をする行為なのです。 

意外にも、漫画という平面的な表現に対して、空間の捉え方がすごく身体的で驚きました。

 スケッチ

今回の展覧会「ストラクチャーの冒険」では、社会や経済、そして生命のシステムを構成する既成概念や既知のストラクチャー(様々な構造や制度、仕組みなど)をアーティストが独自の視点で捉え直し、創造的にそれらを超えていく、ということが狙いの一つです。

では、五十嵐さんは、どんなふうに世界を捉えているのでしょうか。

以前、沖縄の取材から帰ってきた五十嵐さんは、飛行機から見た都市の姿が、地面にくっついている瘡蓋のように見えたと言います。何か下にあるんじゃないか、うごめいているんじゃないかと。 

また、五十嵐さんは「絵を描く」ということは「見る」ことが前提であり、「描く」より「見る」ことの方が大事で、大きな要素を占めていると言います。その結果として、こうした作品が出力されていっている、と。

おそらくこの「見る」という行為の背景には、表面的な情報をただ受け取るだけではなく、どのように見るのか、何を見るのか、そして何が見えていないのか、ということが非常に大事なこととしてあると思います。

五十嵐さんの作品をみていると、現代の日本に生きる私たちにとって、とても見え辛くなっている世界があることを再認識します。五十嵐さんにしか見えない、感じられないものを丁寧に漫画へと変換して、もう一つの世界のストラクチャーを示して下さっているのだと思いました。

 海獣の子供

 五十嵐さん

 

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