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イノシシとブタとヒトの関わりから見えるストラクチャー(野林厚志さんをお迎えして)

 2016.12.22(B1事務局 三田)

12月21日は、「イノシシと人間の関係を野林さんにきく。そして考える。」と題し、国立民族学博物館の野林厚志さんをお迎えしてトークを開催しました。

 野林厚志さんのご専門は、人類学や民族考古学です。イノシシという動物を通じて、人間と動物との関係、狩猟や食生活といった人間の暮らし、動物観や自然観からまちづくりまで幅広い研究活動をされています。そんな野林さんの、イノシシ、ブタ、ヒトをめぐる話題は、イノシシとブタの関係のお話からはじまりました。

まず、イノシシとブタの違いについて。

両者は、見た目、発育速度、出産頭数等、様々な面で異なっています。けれど実は、イノシシとブタは生物学的には同じ(同族亜種)で、ブタはイノシシの「家畜亜種」なのだそうです。

ブタとイノシシの違い

 

ブタの誕生(イノシシの家畜化)は、多地域的に発生した可能性が高いけれど、中でも西アジア、中国という説が有力だそうです。そして、干支の十二支でイノシシを扱っているのは日本だけで、他の国でイノシシのあたる動物はブタなのだとか。

というのも、干支が入ってきたときには、日本にはまだブタがいなかった(まだ家畜化されていなかった)からなのだそうです。意外なところにもイノシシとブタとヒトの関わりが影響しているのだと、改めて気付かされました。

そしてお話は、野林さんが研究されている台湾での、イノシシとブタとヒトとの関わりのお話へと進みます。

台湾の原住民族パイワン族にはイノシシ狩猟の文化があり、今も伝承として受け継がれています。

けれど16世紀頃台湾に入ってきた漢族にはこの狩猟文化がなく、漢族にとって、狩猟は野蛮なものと考えられていました。国民党統治時代には、狩猟も禁止されていたそうです。

やがて1980年代の民主化運動の流れの中で原住民の権利運動も活発になり、今では、狩猟は法律で原住民族の権利として認められました。憲法の中にも「原住民」という文言が明記されていますが、これは世界的にも珍しいのだそうです。

そして中国ではブタを大変尊ぶ文化があって、それは台湾の儀礼の中にも現れています。

台湾の客家人には、義民節という、日本でいうお盆のような行事があります。この行事では、灯籠流しなどと共に、「神猪」としてブタの奉納も行われています。

ブタの奉納 義民節で祀られる義民とは、かつて客家を守るために戦って亡くなった戦没者のこと。そしてブタは、神様に捧げる動物です。ではなぜ、義民に神猪を祀っているのでしょうか?

客家の人たちは、自分たちのために戦ってくれた先祖を敬うために、ブタを奉納することで義民を道教の神様と同格にして祀ったのだそうです。

神猪とは 今回のトークでは、台湾における、動物の中のブタの地位や、人々の生活との関わり。また、漢族が台湾に入ってきた16世紀頃からの、漢族、原住民族、客家各民族の関係等。信仰や文化が凝縮された義民節を元に、順を追って丁寧に解説してくださいました。

「イノシシと豚、野生と野生ではないもの、先住民と漢族、動物と人間の関係などから、自然観や宇宙観がみえてくる」と野林さんは仰られます。そして、「人間と動物の構造、ストラクチャーが儀礼として成立している」とお話しを締めくくられました。

動物とともにある人間の営み。

イノシシとブタとヒトの関係の中から、人間と動物の関わり、文化や儀礼、社会や歴史など幅広い営みの構造=ストラクチャーに想いを馳せる、貴重な機会となりました。

 

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