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鉄道芸術祭vol.6オープニングトーク!「見えない音とかたちのないアイデアを構築する」インビジブル・デザインズ・ラボ松尾さんをお迎えして

 2016.11.16(B1事務局 サポートスタッフ大槻)

鉄道芸術祭vol.6「ストラクチャーの冒険」がいよいよ幕開けとなり、展覧会初日11月12日、参加アーティストの一組であるインビジブル・デザインズ・ラボの代表、松尾謙二郎さんをお迎えしてトークイベントを開催しました。

オープニングトーク.jpg 松尾謙二郎さん.jpg

 

インビジブル・デザインズ・ラボは、「音」という見えないメッセージと「アイデア」という見えないデザインを「見える」ようにしていくことを目標に、CM制作やアート作品の発表など多方面で活動されている音楽クリエイティブチームです。本展には新作として、目に見えないシステムによってピアノと木琴が音楽を奏でる音楽作品「Do you feel "THE RED" just like "THE RED" I feel?」を出品してくださっています。

「生きていくためには、食わねばならん」。そんな一言から始まり、松尾さんはまず、ご自身のご活動の経緯についてお話してくださりました。中学時代から、すでに音楽で生活していくことに危機感をお持ちだったという松尾さん。音楽で、クリエイティブで、食べていくのは難しい。そのためには、何か他人と違うことをしなければならない。広告業界に仕事を求め、音や音楽に対して他の人とは異なる視点を持って制作活動をしてきたのも、「アーティストとして生きて行く」ことに現実的な意識を持ち、戦略的に臨む意識があったからだそうです。

一人ではできなくても、できる人とコラボレーションすれば、いろんなことができる。"チーム"でものを作るという活動形態は、広告づくりの手法から学び得たものだそうです。インビジブル・デザインズ・ラボの現在のあり方は、広告の仕事と切り離して語れないもののようでした。

広告の仕事を資金源にしてクリエイターとしての技術や発想を更新していくような、"クリエイトのループ"の中で制作をしていくというのも、松尾さんが大切にされていることの一つです。先の「食べていくこと」の問題にも重ねて、現代におけるアーティストの生き方・生き延び方を考える上で、大変参考になる具体例だと感じられました。

トークでは、2011年にNTTドコモのCMとして制作され、大きな話題となった《森の木琴》を始め、アルコール飲料ブランドZIMAの依頼で制作されたロボットバンド《Z-MACHINS》にまつわるエピソードや、様々なCM制作の裏話について、写真や動画でたっぷりとご紹介いただきました。インビジブル・デザインズ・ラボの皆さんが、クライアントの依頼を見事にこなし、仕事の幅を広げていく様を追体験するようで、大変刺激的な時間となりました。

 

また、松尾さんがインビジブル・デザインズ・ラボのコンセプトを"「音」という見えないメッセージと「アイデア」という見えないデザインを「見える」ようにしていくこと"として活動を始められたきっかけの多くは、29歳の時のイギリス留学の経験にあったそうです。

現地では音楽の作り手よりも、モノを作るアーティストやプロダクトデザイナーと親交を持っていたという松尾さんは、友人たちの影響で音についても"機能性"や"デザイン性"に関心を持つようになりました。そして、「単に音楽を作るのではなく、音の機能や、音のデザインといったことに着目して制作をしていきたい」と考えはじめたそうです。

本展の出品作「Do you feel "THE RED" just like "THE RED" I feel?」において、松尾さんの中でのテーマの一つとなっている"コミュニケーション"も、言葉の通じないイギリスでの体験から生まれたものだそうです。言葉が通じなくてもコミュニケーションは成立する、むしろ本質的に分かりきらないものである。だから、面白い。本作においては、そんな曖昧なものとしてのコミュニケーションを、言葉ではなく音楽によって試みたいという意図が含まれています。

 

最後に場所を展示会場内へと移し、松尾さんに出品作のパフォーマンスをしていただきました。「楽器ごと作った曲のつもりだ」という今作は、ピアノの音が解析されて指令が飛び、三つの木琴が動き出すことでアドリブ的に音楽が奏でられる楽器群です。パフォーマンスでは、松尾さんが「印象」によって演奏された即興的なピアノのメロディーと、木琴の素朴でリズミカルな音色が呼応し合い、美しい音楽が生まれていました。

演奏中の松尾さん.jpg 松尾さんと会場内の木琴の協奏.jpg

その後作品を囲んで、制作にあたったインビジブル・デザインズ・ラボの他のメンバーの方々の紹介や作品解説、来場者の方々の演奏体験、質疑応答を経て、トークは終了となりました。

メンバー紹介.jpg 質疑応答.jpg

 

アーティストとしていかに生きていくか。それを考えるためには、社会の見えない構造に目を向けて、自らの身の置き場を探っていく必要があります。

音と人間のあいだにある"よくわからない仕組み"に関心を持ち、そこで作品をつくっていこうとする試みも、見えない構造への挑戦です。

今回のトークをお聴きして、松尾さん、そしてインビジブル・デザインズ・ラボの挑戦が、まさに本展のテーマである「ストラクチャーの冒険」そのものであることに改めて気づかされました。

 

もしもインビジブル・デザインズ・ラボの作品や活動に少しでもご興味をお持ちになりましたら、新作である「Do you feel "THE RED" just like "THE RED" I feel?」を、ぜひ本展覧会の会場で体験なさってみてください。音楽を奏でる、見えない仕組みの存在を感じることで、今まで見えていた世界にも新鮮な気づきが生まれてくるかもしれません。

 

ご来場をお待ちしております。

 

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