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アートプロジェクトの記録とその意味(映像家・岸本康さんトークプログラム)

現在開催中のサーチプロジェクトvol.5関連プログラムとして、出展映像作品「ジョルジュ・ルース「廃墟から光へ」(Ufer! Art Documentary) 」の監督をされた映像家の岸本康さんをゲストに、対話を行うトークイベントを開催いたしました。


この作品は阪神淡路大震災後に被災地で行われたアートプロジェクトのドキュメント映画です。現在は被災地の復興支援として一般的となった地域のアートプロジェクトですが、当時はほとんど前例もなく、このプロジェクトはそういった活動の先駆けとなったプロジェクトであり、作家の目線だけではなく企画主催者、支援者やボランティアを交えた目線で記録されている貴重な映像作品です。

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まず岸本さんの「映像家」としての活動の紹介がありました。
岸本さんは今回出品されているような美術作品の制作プロセスを記録した映像作品の制作をされていて、これまでに森村泰昌さんや杉本博司さん、田中敦子さん、束芋さんなどの日本を代表する美術作家の記録を制作されています。
美術作品の記録は写真が多く、なかなか映像で残すところまで予算が出るプロジェクトは少なく、自らの作品としての自主制作が多いとのこと。

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また、作品に映像を使用する美術作家の機材面・システム面など、映像作品を出力する際のテクニカルの仕事もされています。トーク会場では束芋さんの2011年ヴェネチアでの作品制作を追ったドキュメンタリーをご紹介頂き、円筒状に映像を出力する作品の、スクリーンの制作からプロジェクターの選定やレンズ、出力の方法の考案など作家と共同でテクニカルスタッフとして作品制作に関わられている姿をご紹介頂きました。
「美術家」と言うと一人ですべての制作を行っているような印象受けますが、実際には様々なテクニカルスタッフの協力で成り立っている作品も多く、演劇の場合で言うと美術家は演出家のようなポジションであることが多いそうです。

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このように、岸本さんは様々な形で映像に関わるお仕事をされているのでご自身の肩書きが難しく、今回考案した「映像家」という肩書きを使用していきたいと仰っていました。

美術作品の制作プロセスを記録撮影するということについてのお話で、いわば作品の舞台裏とも言える制作現場を見せたがらない作家さんもいらっしゃるそうです。作品として最高の瞬間を残すことを目指しているため、中途半端な状態を残し公開することを嫌う作家さんと意見が対立することもあったそうですが、何度も制作記録のあり方を話し合った結果、現在は映像制作を許可されているという経験もあった、と仰られていました。

制作記録の映像は、作品を紐解く貴重かつ重要な資料となりうるという話もありました。どのような手順や状況でその作品が制作されたのかを映像で残すことは、作品に込められた思いやコンセプトを、作品そのものを鑑賞することとは別の角度から、写真や文章などより更に具体的に残すことが可能で、制作された作品を時間が経過してから再度考えていく場合など、とても重要な手がかりとなります。

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美術作品の制作へ関わることはない方々にとって、作品展示だけでは知り得ない制作の過程や作家さんやスタッフの思い、コンセプトに触れる機会があるということは、展覧会などで展示されている作品を鑑賞するよりも、さらに奥まで知る事の出来る(作家に話を直接聞くなどを除いては)作家を近くに感じる事の出来るとても有意義なものだと感じました。記録映像には作品を一見しただけでは気づかないようなこだわりや構造が、作家自身の姿や所作、またその時代背景などと合わせて映り込んでいる場合があり、とても興味深かったです。

 

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