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『アート&サイエンス「ニュー"コロニー / アイランド"」のその先へ』

日々さまざまに会場の状況が変化し、多種多様なトークプログラムを開催しながら3ヶ月間に渡って開催してきた「ニュー"コロニー/アイランド"」もいよいよ628日に閉幕。

その前日、本展のプロジェクトメンバーと企画を立ち上げたアートエリアB1運営メンバーが勢ぞろいして、締めくくりとなるクロージングイベントを開催しました。

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ラボカフェスペシャル×サーチプロジェクト関連企画
知と感性のネットワークシリーズ
クロージングトーク 『アート&サイエンス「ニュー"コロニー / アイランド"」のその先へ』
http://artarea-b1.jp/archive/2015/0627755.php
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出演メンバーはこちらです。
ゲスト:上田昌宏(大阪大学理学研究科教授)
    中垣俊之(北海道大学電子科学研究所教授)
    dot architects(建築ユニット)
    yang02(アーティスト)
    稲福孝信(アーティスト、プログラマー)
カフェマスター(進行):木ノ下智恵子、久保田テツ(大阪大学CSCD教員、アートエリアB1運営委員)
          塚原悠也(ダンスボックス、アートエリアB1運営委員)

 

トークの前に、まずはプロジェクトメンバー全員でギャラリーツアーを開催。アーティスト、建築チームそれぞれが担当した部分を紹介しながら展示全体の概要を説明していきました。
今回の展覧会では、「アーティストと作品」というかたちはなく、企画趣旨に対してプロジェクトメンバーがそれぞれの分野で尽力しコラボレートして展覧会ができあがっています。

 サーチ4クロージング1

 サーチ4クロージング2

 

トーク前半では、研究者として本展にご参画いただいた上田昌宏さん、中垣俊之さんにそれぞれの研究についてご紹介いただきました。

北海道大学の中垣俊之さんは、本展のために粘菌の培養方法を伝授してくださり、また、本展で培養した「キイロモジホコリ」をご提供くださいました。
北海道大学電子科学研究所の教授であると同時に、「単細胞地位向上委員会」の会長であられる中垣さん。今回のレクチャーでは、ご自身の研究対象であられる「キイロモジホコリ」が含まれる「真正粘菌」の生態をご紹介くださいました

サーチ4クロージング3

彼ら(彼女ら?)は、どういった特性をもっていて、どのように生きているのか。
知性を持っているという粘菌は、迷路を解くことができるといわれています。
その方法は、粘菌が迷路全体を埋め尽くしたあと、最後に一番短いルートだけを残して他の通路にいる部分は撤退していくというものです。

粘菌はそうして最適なルートを探し出します。中垣さんが行った東京の地形を再現した実験では、駅のある場所へ粘菌と餌を置いてやると実際の鉄道網とほぼ同じ形をしたルートをつくったそうです。

サーチ4クロージング4

そのような「知性」が注目されている粘菌ですが、単細胞生物である粘菌は、「切っても切っても粘菌、くっつけてもくっつけても粘菌」だそうで、「自分と他者」という存在がない生き物です。

そして、実験に用いられた黄色いアメーバ状の状態(変形体)は、粘菌の姿のひとつでしかなく、子実体となり、胞子となり風にのって飛んでいくのも粘菌の姿です。

今回の展覧会でも、中之島の形をした培地の上で、粘菌がくっついたり離れたり、そして子実体になり胞子になり、と様々な姿を見せてくれました。

 

続いては、大阪大学の上田昌宏さんによるレクチャー。上田さんが研究されているのは、キイロモジホコリとは異なる種類の「細胞性粘菌」です。

サーチ4クロージング5

キイロモジホコリなどの真正粘菌よりもずっと微小な細胞性粘菌は、「くっつけてもくっつけても粘菌(単細胞)」の真正粘菌とは異なり、飢餓状態に陥ると細胞が集まり、多細胞体制になって子実体をつくって胞子となります。(例えていうと、米の形がなくなり全体が同一化した餅と、米の形を残したまま一体化したおにぎりのような感じでしょうか)

細胞が集まる際、細胞から化学物質が放出され、それに同調するように周囲の細胞が集まってきます。そこから子実体に変化する時、植物でいう茎にあたる部分となりやがて死んでいく細胞と、実になり胞子となって生き延びる細胞とに分かれます。全体の約20%の細胞は、残りの80%の細胞を生かすために死んでいくそうです。

このように、個々の細胞が役割をこなすことで生き延びるため、社会的な生物というふうにも言われています。

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様々に姿を変えながら、動物とも植物ともつかない曖昧で不確かな粘菌の生き方は、我々人間の目から見ると、とても合理的で潔くも見えます。
今回の展覧会では、上田さんの粘菌に対する考えから多くの重要なキーワードをいただきました。それらの言葉は、会場のキャプションに表され、来場者を導く言葉になっていたと同時に、本展の内容を様々な分野に開く(繋げる)キーワードになっていたようにも思います。

(展覧会場のキャプションに表された上田さんの言葉)
「生き続けていれば間違いでもよい」「無限のバリエーション」「1回も死んでない」「多様な性とマッチング」「閉じるのではなく、開いている状態」「マシンは最適解を目指している」「プログラムできないことに対応するためにプログラムされている」「進化のスピードは早い」

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さて、トーク後半は、プロジェクトメンバー、アートエリアB1運営メンバー、そして客席を巻き込んでのディスカッションとなりました。

サーチ4クロージング6

アーティスト、建築家、研究者がタッグを組んだ今回の展覧会。
それぞれの知恵と知識と技術を集結させた展覧会であることは言うまでもないですが、この出会い自体がとても重要な出来事でもありました。
後半のトークのなかで印象的だったのは、上田さんがこのメンバーと出会えたことが面白かったと仰られていたことや、今回の企画が初対面だったにもかかわらず、クロージングトークのなかでは、上田さんがyang02さんの活動を紹介する、という場面があったことでした。

プロジェクトメンバー同士の出会いが様々なアイデアを芽吹かせ、展覧会ができ、さらにそこから新たな知見が生まれた今回のサーチプロジェクトvol.4「ニュー"コロニー/アイランド" ~"島"のアート&サイエンスとその気配~」。展覧会はこれで終了しますが、この軌跡は記録集として出版予定ですので、ぜひご期待ください。

また、プロジェクトメンバーはじめ、展覧会のトークにご出演いただいたゲストの皆様の今後の活躍にもぜひご注目ください。

最後に、展覧会、トークプログラムにご来場いただいた皆様、本展開催にあたりご協力いただいた皆様にお礼申し上げます。

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サーチプロジェクトvol.4「ニュー"コロニー/アイランド 〜"島"のアート&サイエンスとその気配」

プロジェクトメンバー:
上田昌宏(大阪大学理学研究科教授) 
中垣俊之(北海道大学電子科学研究所教授) 
dot architects(建築ユニット)
yang02(アーティスト)
稲福孝信(アーティスト、プログラマー)

トークゲスト(開催順):
西川勝(大阪大学CSCD教員)
岡村淳(映像作家)
清水徹(一級建築士事務所アトリエ縁代表)
福島邦彦(ファジィシステム研究所特別研究員)
畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]主任学芸員)
植島啓司(京都造形芸術大学教授)
今福龍太(文化人類学者、批評家)
岡田一男(東京シネマ新社代表取締役)
江南泰佐(作曲家、鍵盤演奏者、快音採取家)
久保田晃弘(アーティスト、多摩美術大学情報デザイン学科教授)
原正彦(東京工業大学大学院総合理工学研究科教授)

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キクチ、川口

 

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