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神戸はどこへ向かうのか 〜アートプロジェクト:TRANS- が目指すもの
プロジェクトミーティング

 2019.6.4(B1事務局 下津)

新開地、兵庫港、新長田の3つの地区を舞台に、今秋初の開催となる「アートプロジェクトKOBE 2019:TRANS- 」。歴史的に海外との交流が多く、外来文化と交わりながら独自の文化を育んできた神戸という地で行われる今回の芸術祭は、「何かを"飛び越え、あちら側へ向かう"ための試み」とされています。

今回のトークイベントでは横浜トリエンナーレ2014でもキュレーターを務めたディレクターの林寿美さんをお招きし、その取り組みをご紹介していただくとともに、現代アートとまちの関係や国際展/芸術祭のあり方、その可能性について語っていただきました。

 

6/4 プロジェクトミーティング「神戸はどこへ向かうのか 〜アートプロジェクト:TRANS- が目指すもの」ゲスト:林 寿美(TRANS- ディレクター)

TRANS- の会場は主に湾岸エリアに設けられています。文化的に洗練された北野坂やポートタワーのあるハーバーランドなどの街中ではなく、あえて下町や工業地帯を選び、そこで面白いことをやってみようという試みからこのプロジェクトはスタートしました。さらに一つの場所や拠点に絞り込まずに日常の風景の中に溶け込むように作品を展示することで、多義的な意味をその作品の中に見いだすことができます。ここで2名の参加アーティストの作品を少しだけ紹介しましょう。

 

ドイツの炭鉱町、ライト出身のグレゴール・シュナイダーさんは16歳の頃から自宅の部屋の中に別の部屋をつくるなど、異空間と非現実的な体験の創出を得意とするアーティストです。2001年にはヴェネツィア・ビエンナーレでドイツ館代表として選出され、最優秀作品として選ばれたものにだけ与えられる金獅子賞を受賞しました。

まず、今回のプロジェクトのために新たに制作される作品《虚構か現実か》(仮称)。
この作品の舞台となるのは昭和43年に兵庫県の衛生研究所として設立された旧兵庫県立健康生活科学研究所です。シュナイダーさんはこの廃ビル全体を作品化し、大型インスタレーションにしてしまうという試みを企てています。ビルに足を踏み入れた観客たちは非日常的な検査室、研究室、動物舎などの昔の痕跡が残る空間をさまよいながら違和感あるいは恐怖に近い体験に遭遇し、現実と虚構の間を行き来することができます。なお、建物は展示終了後に取り壊しが決定しているため作品はTRANS- 開催期間のみの限定公開となっていることも注目すべき点です。

廃墟を利用したり非日常的空間要素を取り入れた作品は他の会場でも展示される予定です。
兵庫港エリアでは昨年の3月頃まで1泊50円で宿泊できたといわれる、日雇い労働者のための一時宿泊施設「兵庫荘」を作品化した《消えゆく兵庫荘》(仮称)を設置、さらに新長田エリアの駒ヶ林駅構内には数年前にCIAによる収監者への拷問で話題になった、キューバのグアンタナモ湾収容所内の施設を再現したインスタレーション《白の拷問》(2005〜)を展示します。

 

6/4 プロジェクトミーティング「神戸はどこへ向かうのか 〜アートプロジェクト:TRANS- が目指すもの」ゲスト:林 寿美(TRANS- ディレクター)

 

一方、もう一人の参加アーティストであるやなぎみわさんは、中上健次の小説を原作にした2016年初演の野外劇《日輪の翼》に、神戸という地域性に合わせた新演出を折り込み上演します。公演場所はやなぎさんの生家の近くである神戸市中央卸売市場埠頭。芝居、歌、生バンド、サーカス、ポール・ダンスなど華やかで生々しく不思議なパフォーマンスで構成される幻想的な世界が今回どのように生まれ変わったのか、そしてやなぎさん自身の生まれ故郷である神戸とどのように交わるのか、大変注目度の高い作品です。

 

6/4 プロジェクトミーティング「神戸はどこへ向かうのか 〜アートプロジェクト:TRANS- が目指すもの」ゲスト:林 寿美(TRANS- ディレクター)

 

今回のアート・プロジェクトの背景には「兵庫県の海岸線を活性化させたい」という願いがあります。林さんもまた神戸市の須磨区出身だそうですが、神戸で生まれ育った林さんの目から見ても特に海岸沿い地域では時代とともに様々な変化が生まれてきつつあるようです。特に南部は元々在日韓国人の多い地域でしたが、昨今ではベトナムやミャンマーからの移住者やクリエイターの移住も増えており、下町芸術祭が開催されたことからも独特な地域性と新しいムーブメントが誕生しはじめている土地でもあります。さらにTRANS- の会場の一つでもある新開地も数十年前までは地元の人たちの間でも「子供や女性が一人で行ってはいけない場所」と呼ばれるような地域でしたが、現在では高層マンションが次々と建設され大きな商業施設ができるなどファミリー層が集まってくるようになりました。このように時代とともにその土地の雰囲気や文脈が変化していく中で、アートの持つ力も何か役に立てられるのではないか?というのがTRANS- が探求する可能性です。

 

そしてTRANS- の新奇性は、地域のアート・プロジェクトにおいて、シュナイダーさんの作品のような恐怖や違和感、今まで味わったことのない不思議な感覚に陥りながらも「興味深い」という気持ちに腹落ちするような作品で挑戦しようとすることにあると本トークの中で明らかになりました。地域性の高い芸術祭は「元気になる」「励まされる」あるいは「町おこしになる」といった価値観へと転換することを目指す傾向がある中で、こうした形での非日常との交差を試みることは地域性と芸術性の交わりに対する大いなる期待になるかもしれません。

「アートプロジェクトKOBE 2019:TRANS- 」は今年9月14日(土)〜11月10日(日)開催予定です。日常と非日常の往来、時代とともに変化する地域性を体感できる新たなプロジェクトに期待大です。

 

「アート・プロジェクトKOBE2019:TRANS- 」開催概要
会期:2019年9月14日(土)~11月10日(日)
出展作家:グレゴール・シュナイダー、やなぎみわ
ディレクター:林 寿美
開催エリア:兵庫港地区、新開地区、新長田地区
▶︎詳細は「アート・プロジェクトKOBE2019:TRANS-」ウェブサイトからご確認ください。

「"情の時代" から考える〜あいちトリエンナーレ2019〜」
プロジェクト・ミーティング

2000年代から全国各地で開催されるようになった芸術祭やトリエンナーレ・ビエンナーレ。その中でも国内最大級の規模を誇り、毎回ユニークなコンセプトで成功を収めている芸術祭「あいちトリエンナーレ」。4回目となる2019年度のテーマは、「情の時代Taming Y/Our Passion」です。

今回のラボカフェでは、芸術監督を務められる、ジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介さんにお越しいただきました。

5/29 プロジェクト・ミーティング「"情の時代" から考える〜あいちトリエンナーレ2019〜」ゲスト:津田大介さん

芸術監督からじきじきにお話を聞ける貴重な機会ということで、定員を大きく上回るみなさまにご参加いただきました。

 

「情の時代Taming Y/Our Passion

今回のテーマは「情」。

世界が情報メデイアによってどんどん感情的になりつつあることへの危機感がきっかけだったと言います。情には幾つかの意味があり、「感情によるこころのうごき」「実情、情報など本当の姿」「なさけ」など、かなり多義的です。昨今の状況を考えたとき、こうした複合的な意味合いをもつことばがふさわしいということで「情の時代」に決定しました。

そんな時に飛び込んできたのが、2018年の東京医科大の女子受験生が一律減点されていたというニュースでした。津田さんは先進国で客観的と思われていたペーパーテストで男女差別が行われていたことに強い衝撃を受け、アート業界の男女比について改めて調べてみたところ、そのバランスに愕然としたといいます。

 5/29 プロジェクト・ミーティング「"情の時代" から考える〜あいちトリエンナーレ2019〜」ゲスト:津田大介さん 

アート業界は男女平等?

学芸員、キュレーター、美大生などは圧倒的に女性が多い領域です。そのため、アート業界は女性が活躍している領域であると当初、津田さんは思っていたそうです。ところが調べる中で判明したのは、館長クラスや美術館に作品が多く収蔵されている作家、大学教員になると、男女比がきれいに逆転しているという事実でした。

この背景には男性教員が多く、作品制作の助手として男子学生が選ばれやすく、女子学生がゼミに所属しづらい状況や、管理職となると女性進出が難しい状況があることがわかりました。

この状況を知り、現代で芸術祭をやるのであれば、一部のアートファンだけに意味があるものではなく、社会全体に対して「共生」「アファーマティブ・アクション」として打ち出したいと考え、選定作家の男女同等を掲げることにしました。ちょうど、100年以上の歴史を持ち文化のオリンピックと言われる今年の芸術祭のヴェネツィア・ビエンナーレにおいても選定作家の男女比が同数であることが表明されており、追い風になったと言います。

「大きな芸術祭がはっきりと数の平等を打ち出すことで、美術業界や、今後の芸術祭はそのことを意識せざるを得なくなっていくのではないか」とのこと。

芸術祭がこうした社会の動きを取り入れて新たな手法で内容を構成することで、これまでにない芸術祭に挑戦するという点で非常に意義のあることだと感じました。

5/29 プロジェクト・ミーティング「"情の時代" から考える〜あいちトリエンナーレ2019〜」ゲスト:津田大介さん

ラボカフェ後半では、会場からの多くの質問もいただき、参加者のみなさんが津田さんのお話をうけ、ひとりひとりが「情」や「芸術祭のあり方」について考えを巡らせていることが伝わってきました。

あいちトリエンナーレは8/1〜開催予定です。開催地の名古屋は大阪からは新幹線で1時間かからない距離です。ぜひ足を運んで現代のわれわれを取り巻く状況に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

 

「あいちトリエンナーレ2019」開催概要

テーマ:情の時代 Taming Y/Our Passion
会期:2019年8月1日(木)~10月14日(月・祝) [75日間]
芸術監督:津田大介 ジャーナリスト/メディア・アクティビスト
会場:愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、名古屋市内のまちなか(四間道・円頓寺)、 豊田市(豊田市美術館及び豊田市駅周辺)

▶︎参加アーティストなどの詳細は「あいちトリエンナーレ2019」ウェブサイトからご確認ください。

中之島リサーチプログラム
饗庭伸「都市計画の視点で巡る中之島フィールドリサーチ」
ラボカフェスペシャル featuring クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島08

 2019.1.29(B1事務局 下津)

ゲストに首都大学東京都市環境学部都市政策科学科で教授を務める饗庭伸さんをお招きし、都市計画の視点から見た中之島のフィールドリサーチについてお話をしました。中之島でおこなったフィールドリサーチについて語っていただくとともに、参加者の皆さんと都市計画を主体となって考える場となりました。

1/29 中之島リサーチプログラム:饗庭伸「都市計画の視点で巡る中之島フィールドリサーチ」

ラボカフェスペシャル featuring クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島 08
中之島リサーチプログラム
饗庭伸「都市計画の視点で巡る中之島フィールドリサーチ」
1月29日[火] 19:00ー21:00

饗庭さんは人口減少時代における都市空間の変化や都市計画のあり方について論じた『都市をたたむ:人口減少時代をデザインする都市計画』を2015年に上梓し、都市の計画とデザイン、そのための市民の参加手法や市民自治の制度など、幅広く実践的なまちづくりの研究をされています。

本イベントでもワークショップ形式でゲームを行い、参加者の皆さんに都市計画に'参加'していただきました。

1/29 中之島リサーチプログラム:饗庭伸「都市計画の視点で巡る中之島フィールドリサーチ」

参加者は8名ほどのチームになり、中之島を舞台にそれぞれチームごとで与えられた条件や制約のもとでどれくらい都市計画を展開させることができるかを話し合いながら進めていきます。「ライオン」「桂枝雀師匠」「マウンテンバイクに乗った若者」など一風変わった様々な立場の役割を振り分けられ、その役になりきってそれぞれの立場から意見を出し合い都市計画を進めていこう、というゲームです。

饗庭さんは、一つの目標に対する様々な実現手段の組み合わせをつくることが'プランニング'なのだと言います。このゲームではあらゆる立場の人々が、どのようなまちをつくりたいか、どのようなまちになってほしいかを意見を出し合うことで最大公約数となる目標を設定し、そこへ向かうための手段を皆さんと考えることを目的としました。

1/29 中之島リサーチプログラム:饗庭伸「都市計画の視点で巡る中之島フィールドリサーチ」

実際の都市計画においてもあらゆる制約や条件の下でできる限り様々な人の意見を取り入れていくことは必要不可欠です。しかし時として、適度な制限はかえって発想を意外な方向へ広げるきっかけになりうるそうです。このワークショップではそうした都市計画の難しさと意外な転換の楽しさの両方の側面を体験してもらえたのではないでしょうか。

イベント終了後、参加者から「意外な自由度からどんどん展開していきながら計画が進んでいくのが大変面白かった」「適度に制限を設けることで発想が広がることを、体験を通じて実験できたことが収穫だった」などの声があり、都市計画や建築に関わりのない方々からも新たな方向からまちづくりに関心を抱いていただくことができました。

「カラスが見た都市」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8

 2019.1.24(B1事務局 江藤)

町でふとカラスに出会ったら、なんだか気になる。カラスもこちらを気にしているような気がする。なぜだろう。カラスって...。

鉄道芸術祭vol.8の会期も残り数日となった1月24日に、カラスの研究者である松原始さんにお越しいただき、都市に生活するカラスについてラボカフェをおこないました。

東京大学総合研究博物館特任准教授の松原始さんは動物行動学がご専門で、京都大学の学部生、院生時代からカラスを観察していらっしゃいました。その頃の資料やデータとともにユニークなエピソードも披露していただき、カラスの生態や行動についてお話しいただきました。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

ラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭
「カラスが見た都市」
1月24日[木] 19:00ー21:00
ゲスト 松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

カラスはスズメ目カラス科カラス属の鳥で、世界には約40種類のカラスがいるそうです。日本で繁殖しているのは、嘴の太さの違いで名前がついているハシブトガラスとハシボソガラスで、この他に冬鳥として渡ってくるカラスや迷って来てしまったカラスなどが時折見られます。

ハシブトガラスは、もともとは森林の鳥ですが、町中によくいるのが見られ、ビル街なども問題にしません。対して、ハシボソガラスは水田や畑、河川敷など景色の開けたところが好きで、ビルの密集地などは好まないようです。

カラスは、ペアは縄張りの中で生活し、周りの縄張りの外で非繁殖集団が群れをつくっています。縄張りを持たないカラスは集団で寝ぐらをつくって眠ります。集団でいることで安全を確保しているそうです。木の上などでカラスが集まっている様子を不気味に思うことがあるかもしれませんが、ここにいるカラスは子どももいないので、人間にとっては安全だということです。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

カラスの縄張りは、1つ直径200〜300mぐらいの大きさで、松原さんの調査によると京都の町は縄張りでぎっしりと隙間なく埋まっているそうです。人間が生活の上空では、カラスの生態のレイヤーが存在しているということです。

ちなみに、カラスは捕獲することが大変難しく、足輪をつけて行動範囲を知ることができにくいそうです。松原さんが目視で見失わないように追いかけるという苦労を重ねて蓄積された貴重なデータです。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

さて、生きていくのに大事な食事についてですが、カラスは雑食です。セミやカマキリなどの虫、カエル、ザリガニなどの生物、柿、みかんなどの果実、くるみ、どんぐりなどの木の実、同じ鳥でも卵やヒナなど自分より弱い相手なら食べるそうです。また、魚の死骸などを食べるスカベンジャーでもあります。カラスは、生態系の食物連鎖のピラミッドで、光合成以外はすべての連鎖に関係しているジェネラリストと呼ぶそうです。

都市では人間の食べ残しのゴミをあさる姿をよく見かけますが、米、麦、ソーセージや焼き芋、スパゲティやジャンクフードも好きなようです。自然のものでは死骸を食べ、都市では人間の食べ残しを片付けるスカベンジャーだということです。

松原先生は学生時代に京都大学の近くで、カラスが居酒屋やお好み焼き屋のゴミやお墓のお供えを食べる様子を観察していたそうです。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

では、カラスにとって都市は生活する場としてどのように見えているのでしょうか。
食料は、都市でも果実や小動物など天然のエサも捕食でき、スカベンジャーとして人間の食べ残しも摂取できます。営巣場所としては、公園や並木、そして送電線やビルなどの建築構造の中にもしたたかに巣を作っています。家庭の針金ハンガーでつくった巣をご覧になったことがあると思います。次に、敵は町中には滅多にいない。ということで、都市はカラスが生きるのに都合が良く、山の中の生活をスライドさせて生活が可能だということです。

なんといっても、松原さん曰く、鳥にとって都市は「超・都市計画 〜そうなろうとするCITY」ならぬ、「鳥・都市計画 〜そうなっちゃってるCITY」なのですから。

1/24 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「カラスが見た都市」ゲスト:松原始(東京大学総合研究博物館 特任助教)

町かどでカラスの存在が気になるのは、近所ですれ違う人の存在が気になるのと同じようなものかもしれない。なんだか、あいさつをしようかしまいか逡巡してしまう。カラスと人間の関係はそんなものかもしれないなという気がしてきました。

「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8

 2019.1.17(B1事務局 江藤)

11月から始まった鉄道芸術祭vol.8の期間中には、都市に関連した様々な観点のラボカフェを開催してきましたが、今回は大阪大学大学院工学研究科准教授の入江政安さんにお越しいただき、"水の都"と呼ばれる大阪の水についてお話をしていただきました。 入江さんの研究は土木の分野で、普段は大地震などで津波が起こった際にコンテナや石油コンビナートのタンクなどがどのように漂流するのかをシミュレーションし、天気予報などの最新の気象情報と組み合わせて実際に生かすための研究をされています。

1/17 鉄道芸術祭vol.8「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」ゲスト:入江政安さん(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

ラボカフェスペシャルfeaturing鉄道芸術祭
「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」
1月17日[木] 19:00ー20:30
ゲスト 入江政安(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

まず、大阪の水と人との関係について、明治28年の水道の敷設までの大阪の風景を、四天王寺の伽藍配置から落語で語られる場面まで幅広く紹介してくださいました。上方落語『矢橋船』『三十石』『百年目』などで登場する淀川は、ゆったりした流れを想像させます。流れが緩やかな分、水運が非常に発達してきました。大阪の代表的な川である淀川と大和川のつけ替えは、大阪の都市計画に大きな影響を与えたといいます。大和川のつけ替えによって、天然の良港だった堺の河口に土砂が積もって港の機能が悪化してしまったという経緯もあります。そういえば、ここ中之島も江戸時代の地図を見ると東側の先端の位置がもっと西側にあったのを思い出しました。このように川が流してくる土砂が大阪の地形を変えて、都市の機能を変えてきました。

1/17 鉄道芸術祭vol.8「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」ゲスト:入江政安さん(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

さて、現在の大阪の川はどうかといいますと、BOD(生物化学的酸素要求量)という水の汚染度の基準になる数値で比較してみると、清流と呼ばれる東北の奥入瀬川で0.7〜1.2㎎/ℓ、四国の四万十川で0.5〜0.9㎎/ℓに対し、大川で1.1㎎/ℓ、堂島川や土佐堀川で2.2〜2.9㎎/ℓ、道頓堀川で2.0㎎/ℓ、寝屋川で3〜10㎎/ℓとなっているそうで、意外ときれいな水になっているのがわかります。(数値は入江氏の説明資料から)とても嬉しいことがあって川に飛び込みたくなった時には、大阪のこれらの川のうち、道頓堀川に飛び込むのが正解とのことです。

川の水がきれいになり、大阪の飲み水も平成10年頃から設備が整ってオゾン処理が施され、美味しい水になっています。一方で、大阪の川は低い土地にある干潮河川であり、海水が入ってきやすい地形で、中之島の真ん中のあたりまで海水が入ってきているそうです。では、海の水はどうかというと、水自体はきれいになっているそうですが、底の泥が汚いまま残っているために、時折"青潮"という現象が起こっています。一見、水面は遠浅の海のように美しく見えますが、実は硫化水素の白い粒が水面に浮いてくるためにそのように見えるそうです。

1/17 鉄道芸術祭vol.8「水の都・大阪の川と海は、きれい?汚い?」ゲスト:入江政安さん(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

一方で、高度経済成長時代の海の水が汚い時代の方が瀬戸内では魚がたくさん獲れたともいわれます。下水処理場の処理能力を少し落として、海に栄養分を補給するという施策までが検討されるぐらいだそうです。

そして、今後日本は人口減となっていくことが予測されています。人口減になると自ずと産業活動が減退し、水はきれいになっていくのではないかと推測されます。環境規制は経済活動にとっては生産量の抑制などを強いるもので、今積極的に水質をきれいにすることがどうであるか、政治的にも考える時が来ていると入江さんはいいます。

トーク終了後、参加者からの質疑も活発におこなわれ、関心が高いことがよくわかりました。私たちの生命に欠かすことのできない水、これからの大阪、日本における人口動向や経済活動、都市のあり方とも合わせて考える必要があることを強く感じるお話でした。

電車公演「ラジオになろうとする電車」を開催しました。
鉄道芸術祭vol.8 イベント・プログラム

 2019.1.14(B1事務局 三ヶ尻)

1月14日(月祝)に鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」を開催しました。電車公演とは、走行する貸切電車を舞台にした一回かぎりの特別なプログラムです。今回は3両の電車をラジオブースに見立て、実験的かつ多彩な試みを繰り広げました。

今回の公演は、世界のナベアツこと落語家の桂三度さん、鉄道芸術祭vol.8参加アーティストであり奇才のゲーム作家・飯田和敏さん、そして、ゲーム『巨人のドシン』の音楽を手がけられたミュージシャンの浅野達彦さん、理論物理学者であり大の鉄道愛好家でもある小川哲生さん、「複製」や「コラージュ」といった手法の可能性について、コピー機やスキャナ、カメラなどのツールを用いて実験を繰り広げているアーティスト・ユニット、ザ・コピー・トラベラーズを出演者としてお迎えし、ラジオになろうとする電車が発車しました。

・ ・ ・ ・ ・

当日の様子を写真を交え、少しご紹介します。
中之島駅改札外で受付を済まされた皆さんは、特別切符と本日のチャンネル表を手にご乗車いただきます。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」当日配布した番組表

会場となる貸切電車は、大阪側から〈落語車両〉〈コピー&レクチャー車両〉〈ライブ&トーク車両〉と名付けられた3車両。参加者は、ひとつの車両に留まり他車両の様子をラジオを聞くように耳でゆっくり聞く楽しみ方や、車両間を自由に移動しパフォーマンスを間近で見る楽しみ方など、各々の味わい方でご乗車いただきました。

発車合図の笛の音が鳴り電車の扉が閉まると、鉄道芸術祭vol.8参加アーティストであるオスカー・ピータースさんによるオープニングの車内アナウンスが流れます。一気に車内は非日常的な雰囲気に。

 

車内アナウンスが終わるとお囃子の音が響き、〈落語車両〉にて高座に上った桂三度さんによる落語がはじまりました。幼少期は京阪沿線にお住まいだった三度さんは、京阪沿線にまつわる思い出話を皮切りに、リズムよく落語の世界へと観客をいざないます。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」桂三度さん(落語家)

 

ひと寄席終えると、オスカーさんの声で次の番組と会場となる〈ライブ&トーク車両〉の案内アナウンスが流れます。ゲーム『巨人のドシン』タッグ、飯田和敏さん浅野達彦さんによるライブ&トークです。

流れる車窓からの大阪の風景を眺めながら、浅野さんの奏でる音楽を聞いていると、ドシンが日々つくりあげるバルド島の様子や、人々の暮らしが想起されるようです。トークでは飯田さんも加わり、『巨人のドシン』の制作秘話や当時の話で盛り上がります。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」飯田和敏さん×浅野達彦さん

 

お次は〈コピー&レクチャー車両〉にて、小川哲生さんの8分間のミニ講座です。鉄でできた車輪と線路との摩擦関係について理論物理の視点から読み解かれました。小川さんは走る車内での講義ははじめてだと言いつつも、ホワイトボードを駆使し、誰にでもわかりやすい言葉と鉄道愛に溢れる解説を展開されました。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」小川哲生さん(理論物理学者)

 

そして同車両内には、発車してから延々と制作するザ・コピー・トラベラーズの姿が。この日は特別にコピー機を車内に持ち込み、作品をライブ制作していただきました。制作された作品は車内広告のように次々と各車両に吊られていきます。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」THE COPY TRAVELERS(アーティスト・ユニット)

 

特別電車は樟葉駅で折り返し、再び大阪方面へ走り出します。

再び巨人のドシンタッグのいる〈ライブ&トーク車両〉へ。夕方の時刻に差し掛かった車内では、日が沈みはじめ車内に夕日が差し込みます。ゲーム『巨人のドシン』の日没のテーマ「黄色い巨人」などを演奏いただき、車内は旅行の帰り路のようなセンチメンタルな空気に包まれるようでした。

 

帰路の〈落語車両〉では、桂三度さんが再登場していただきました。電車の揺れにとまどいながらも、すべてを笑いに変えていく三度さんの落語に車内は大いに盛り上がりました。

鉄道芸術祭vol.8 電車公演「ラジオになろうとする電車」桂三度さん(落語家)

そして最後の小川晢夫さんによる理論物理のミニ講座では、電車が停まる仕組みと摩擦についてお話くださいました。

一回限りの電車公演「ラジオになろうとする電車」は、終点のなにわ橋駅に予定時刻どおり無事到着しました。電波と電車に乗った小旅行は様々な試みに目と耳を奪われている間に終演を迎えました。

ご乗車いただいた皆様、誠にありがとうございました。

 

写真:守屋友樹

「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」
ラボカフェスペシャル featuring 鉄道芸術祭vol.8

 2019.1.11(B1事務局 三ヶ尻)

11月10日からスタートしている企画展「鉄道芸術祭vol.8『超・都市計画』」では、「都市」「都市計画」というテーマを多角的な視点でさらに深く読み解く試みとして、様々なジャンルの専門家をお呼びし、関連トークプログラムを開催しています。1月11日は「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」をテーマに開催しました。ゲストは、老年医学を専門に研究されている内科医の神出計さんです。

神出さんは、高齢者に多い疾患を診るだけではなく、"健康寿命の延伸に繋がるヘルスプロモーション科学の実践"をモットーに、在宅医療や医療制度など、地域の高齢者の生活を支えるための仕組みの研究をされています。今回は、これからの人やまちを考えるために基本となる知識や、神出さんの研究やその成果、ご自身のお考えも含めてお話しいただきました。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

現在日本は世界一の長寿国であり、他の国が経験したことのない"超高齢社会"となりました。神出さんの研究室では、どうすれば私たちが健康に暮らし続けられるのかを考え、異なる分野の研究者や、まちづくり・行政・法制度の専門家との共同研究が進められています。

社会の高齢化を図る基準は、65歳以上のひとが人口の7〜14%で"高齢化社会"、14〜21%で"高齢社会"、21%以上は"超高齢社会"と定められています。2008年の時点で日本は"超高齢社会"となり、現在65歳以上の高齢者が人口の27%、75歳以上の後期高齢者が13%。つまり、高齢者が4人に1人、後期高齢者が8人に1人の割合となりました。

沢山の人が長生きできるということは、豊かで安全、清潔な環境があり、なおかつ医療が進んでいるからです。そして、私たちはこの状態をどのように保つことができるか考えていかねばなりません。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

とはいえ、将来日本は人口が大幅に減ることが予想されており、今よりさらに少子高齢化が進むとも言われています。加齢とともに病院に行かれる方も多くなり、社会保障に必要なお金も右肩上がりです。そして現在すでに、病院や病院のベッドの数、ケアする人も足りなくなっていることが問題視されています。

今までは病気をしたら病院へ行くことが常識となっていますが、これからは病気にならないようにする、介護を受けないようにする、という予防の時代がきていると神出さんは言います。疾患や介護の予防は高齢になってからでは遅く、若い時から健康について意識し予防を充実させることが大切です。そして、まちには個人個人が健康寿命を延ばす意識をもちやすい環境をつくることが必要です。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイルという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これらは病気ではなく加齢とともに起こりやすいといわれている病態です。

ロコモティブシンドロームとは、筋肉や関節・骨など運動器の衰えにより歩く、立ち上がるといった移動機能が低下する状態、サルコペニアとは、筋肉量が減少し筋力低下が起こることを示し、歩くスピードが遅くなったり杖や手すりが必要になるなど身体機能が低下した状態、またフレイルは、心身の活力の低下や他の慢性疾患の影響から、生活機能が障害され心身の脆弱性が出現した状態を指します。
フレイルに関して厚生労働省研究班の報告書では、「適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態」と示しており、ここでも予防の大切さを提唱しています。このような病態に対して、私たちひとりひとりができる予防は、良好な食栄養、身体活動、体力の増進、社会参加が有効とされています。

例えば、フレイルの症状の方に多い生活サイクルとして、以下のようなことがあります。
【あまり動かない → ︎お腹がすかない → ︎︎食事量が減る → ︎︎︎低栄養 → ︎︎︎筋肉が弱る → ︎︎︎体のバランスが悪くなる → ︎︎転倒しやすくなる → ︎︎︎転倒が怖いので動かない → ︎︎お腹がすかない → .........︎】
わたしの身近な高齢の方を思い浮かべると、当てはまりそうな方が多くいらっしゃいます。このようなサイクルを断ち切るためには体を動かすことが大切ですが、このサイクルに陥っている方が一人でモチベーションを高めることは難しいのが現状です。

1/11 鉄道芸術祭vol.8 トーク・プログラム「老年医学研究者が見る日本のまちの将来」ゲスト:神出計(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 教授)

これからのまちを考える上で、注※)ソーシャル・キャピタルの高い環境をいかに作るかということが大切だと、話の端々から強く感じました。ソーシャル・キャピタルを高く保つためには、人を信頼すること、お互い様と思う気持ち、人と人とのネットワークを大切にすることなど、ひとりひとりが意識し日々作りあげていけるものです。その日々が積み重なった結果がこれからのまちになるのだと思いました。

お話の最後には、参加者の方々から病気予防、介護予防に関する質問が飛び交い、健康への意識の高さがうかがえました。神出さんをはじめ、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

注※)
コミュニティにおける人と人との信頼感や互酬・互助意識、ネットワークへの参加などを包括して"ソーシャル・キャピタル"と呼ばれている。この構成要素が働くコミュニティの方が、住みやすく働きやすいこと、課題解決のための行動を起こしやすいこと、またその集団の人々の健康を守るという研究成果の報告も出てきている。 
参考資料:大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻 総合ヘルスプロモーション
科学講座 ヘルスプロモーション・システム科学研究室ホームページ, 研究内容紹介, 4.ソーシャルキャピタル研究 http://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/~comger/kamide/researches.html

「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」
鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム

 2018.12.22(B1事務局 三ヶ尻)

鉄道芸術祭vol.8「超・都市計画〜そうなろうとするCITY〜」の参加アーティストであるTHE COPY TRAVELERSは、それぞれが美術家として活躍する加納俊輔さん、迫鉄平さん、上田良さんで結成されたユニットです。12月22日に開催した「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」では、彼らの活動経緯や制作手法、また本展出展作品についてさまざまな角度からお話ししていただきました。

 

鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」

 

THE COPY TRAVELERSのはじまりは、加納さんと迫さんのアルバイト先にあったコピー機でした。
スタートボタンを押すだけでイメージが瞬時に紙にうつしとられ、どれだけ失敗してもすぐに次の制作に取りかかれるコピー機の面白さに魅了され、夜な夜な実験的に作品制作するようになったそうです。また、2人のアルバイト先に出入りする友人のひとりであった上田さんも参加し、現在のユニットとなりました。

コピー機の上に乗せるものは、スナップ写真、ドローイング、雑誌の切り抜きなど、3人それぞれが持ち寄ったあらゆる素材です。持ち寄ったものは出どころを問わず、切り刻む、何かに貼りつけるなど、どのようになっても構わないというのがルールだそうです。三人三様思うようにコピー機に並べ、どんどん出力していく、出力したものがまた素材のひとつになるなど、終わらないコラージュ作業の連続から作品が制作されていきます。

また展示する際は、机の上に作品を同等に並べ、現場で選び、展示位置を決定していくのが通例だそうです。長時間の話し合いになると疲れてきて展示作業が進まず、また、体力が有り余っていると喧嘩になるなどの経験を積み重ね、自分のアイデアを通すために他の2人が疲れるのを待ってみたり、黙って素材を追加してみたりと、ユニットならではのエピソードも明かされました。

 

鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」

 

展覧会を行う度に、美術業界や写真業界における作法をくずしていくようなチャレンジを行い、新たな視点を模索し続けてきたTHE COPY TRAVELERS。これまで彼らの作品制作は、スタジオやアトリエに篭りその場で完結していたそうです。そして今回、はじめてスタジオを飛び出し作品制作を行ったことが特徴のひとつだと言います。

本展のタイトルが「超・都市計画」と聞き、まず都市を体験することが大事だと感じたそうです。舞台となったのは大阪・中之島。彼らはたびたび中之島に出向いては、風景写真や素材となるものを採集し、それを一旦スタジオに持って帰り、雑誌の切り抜きやドローイングなど他の素材と同等に並べて制作し、できたものを再び中之島に持っていく作業を繰り返し行いました。

 

また、本展の副題である「そうなろうとするCITY」は、3人の発案から付けられたものです。
「CITY」という言葉は、あらゐけいいちさんの漫画〈CITY〉から引用されました。あらゐさんの描く〈CITY〉では、たくさんの登場人物、動物、モノが行き交い、一見関連性がないと思われたことが何かの拍子に繋がる瞬間や、読み手という視点で街を俯瞰していると予期していなかったコトやモノにスポットライトが当たる瞬間などを切り取り、物語る街の様子が、本展のイメージと重なったと言います。
また「そうなろうとする」という言葉には、街自体が主体をもっているイメージと、街を構成している人やモノ、コトなどの全てのものが、それぞれのゴールを目指して動き、勝手に組み上がっていくイメージを込められました。

これに対し迫さんは、コピー機の上でフレキシブルにモノを移動させながら作品をつくっていくTHE COPY TRAVELERSの作品制作と、漫画〈CITY〉で登場人物を固定せずたくさんの人やモノを出入りさせ物語る街の様子、制作のためにたまに訪れる中之島の風景が、時間帯や季節、道行く人の服装などによって異なってみえて感じることを重ねてみていたそうです。そして、フレキシブルに様々なことが行き交い、固定されない状態に"コラージュの未来"をみたと言います。

 

鉄道芸術祭vol.8 アーティスト・プログラム 「ザ・コピー・トラベラーズのオールザッツなエトセトラ」

 

トークの最中、素材を何層も重ねている内に、そもそも誰のものであったのか、何を見ていたのかすらわからなくなってくるというような話が何度もでてきました。都市の風景とは、各々に動く人や動物、モノ、コトが重なり、固有名詞も見えなくなった頃、立ち上がって見えてくるのかもしれないと感じました。

 

DSC05713.JPG

しかし、THE COPY TRAVELERSの描く都市風景は、決して個人やちいさなモノやコトを無慈悲に切り刻んでしまうものではなく、ひとつひとつに対する愛着や尊敬をもって素材を扱っていることが、作品から、そしてトークの端々からもひしひしと感じられました。

展覧会場では、上田さんのドローイングや中之島で撮影した写真を含む、本展をさらに深く読み解く報告書「THE COPY TRAVELERSのそうなろうとするCITY」を販売しています。ぜひお手に取ってみてください。

THE COPY TRAVELERSの皆様、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島
「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」
サイトツアー/トーク06 国立国際美術館

 2018.12.21(B1事務局 鄭)

アートエリアB1では、中之島の文化拠点と連携する「クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島」を展開しています。

その一環として、国立国際美術館の展覧会「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」(現在、展覧会は終了しています。)に合わせて、ナイトミュージアムツアーとトークを開催しました。この展覧会は、1980年代の現代美術を通して、この時代がどういうものだったのか振り返ることのできる展示となっています。

ゲストは、本展覧会の企画者である国立国際美術館主任研究員の安來正博氏と、80年代より『宝島』『別冊宝島』編集部など、雑誌全盛期の本の現場に携わってきた著述家・永江朗氏のお二人です。

安來さんに解説いただきながら展覧会を巡ったあと、トークでは永江さんのナビゲートのもと、80年代という時代について広く文化の側面から紐解きます。

 

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島【12月21日サイトツアー/トーク06 国立国際美術館 「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」】

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島
サイトツアー/トーク06 国立国際美術館
「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」
日時:12月21日(金)18:00─19:45
会場:国立国際美術館
ゲスト:永江朗(著述家)、安來正博(国立国際美術館主任研究員)

▶︎ イベント概要はコチラから

ナイトミュージアムツアーということで、18時という普段のラボカフェよりもやや早めの開始でしたが、たくさんの方にお集まりいただきました!

 

まず最初に、全員で展覧会場へと移動し、安來さんから各作品や展示についてレクチャーを受けながら巡ります。

「自分にとって、80年代の現代美術は現代アートの原風景とも言えるもの。この時代はすべてごちゃごちゃでどこに向かっていくのかすらわからなかったが、とにかくエネルギーがあった。」と言う安來さん。会場には当時一躍有名になった日本の作家から一世を風靡したニューペインティングの作品までが並びます。

 

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島【12月21日サイトツアー/トーク06 国立国際美術館 「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」】

 

実際に企画された学芸員からお話を聞けるということで、みなさん熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

 

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島【12月21日サイトツアー/トーク06 国立国際美術館 「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」】

 

後半は別会場へ移動し、永江さんと一緒に80年代とは一体どういう時代だったのかについて振り返ります。

 

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島【12月21日サイトツアー/トーク06 国立国際美術館 「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」】

 

まだインターネットが一般に普及する以前の「デジタル時代のあけぼの」だった80年代には様々な変化が起こっていました。

ひとびとの生活の中心が生産活動から消費活動へと移り、全国的にスーパーマーケットや百貨店が勢いをもって展開していった時代。消費すること、すなわちモノを買うことが、単なる貨幣との交換を超えて、ひとつの社会参加とみなされるようになり、POPEYEやoliveなどの情報誌やファッション雑誌が次々と創刊され、DCブランドが流行しました。企業が文化戦略として美術展を開催するようになったのもこの時代だと言います。物を食べること、服を着ることが、身体的な満足というよりも社会的な記号を身に纏うことへと変化していった、と永江さんは振り返ります。

 

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島【12月21日サイトツアー/トーク06 国立国際美術館 「ナイトミュージアムツアー 80年代とは何だったのか」】

 

そんな中で現代アートはどのような状況にあったのか。安來さんも交えてのトークセッションでは、当時の時代背景との関連や美術業界内部についても話が及びました。

美術館が次々に開館し、海外の最先端の作品群をタイムラグなしに触れることができるようになったのが80年代。横尾忠則氏などに代表されるような商業的なアートと、ファインアートが混在するようになり、技術の良し悪しではなく面白いか面白くないかがひとつの判断基準となりました。

その作品の背景や美術の歴史を抜きに表面だけで語ってもいい、という姿勢もこのときに出現したと言います。

「アートは時代の鏡。時代は時間と共に消えてしまうが、作品はその時代の熱気や状況を留めて、永久のものにして私たちの目の前に差し出してくれる。」と永江さん。安來さんも「当時の作品を振り返ると、リアルタイムではなかなか掴むことができなかった時代の輪郭を理解することができる。」とお話しされ、こうして美術館が作品をきちんと保存し、現代につなげていくことの重要性を強調されていました。

2時間足らずにもかかわらず、ツアー、レクチャー、トークセッションと盛りだくさんな内容でしたが、1980年代について考える上でとても有意義な時間となりました。

 

アートエリアB1では今後も中之島の文化施設とコラボレーションした企画が進行中です。
ぜひ今後もご期待ください。

クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島 シンボルイベント「クリエイティブ・アイランド -創造的な都市の本質とは何か−」

 2018.12.16(B1事務局 下津)

この日は「創造的な都市と芸術の関係」をテーマに「クリエイティブ・アイランド -創造的な都市の本質とは何か−」と題し、芸術・都市建設・学術、多方面からゲストをお招きしてシンポジウムを開催しました。

2018.12.16 クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島 シンボルイベント「クリエイティブ・アイランド─創造的都市の本質とは何か─」

早くから沢山の申し込みをいただき、寒さの厳しいなか開始時間よりずっと早くにいらっしゃるお客様も見られました。多くのみなさまにご来場賜り会場内は満員でした。ありがとうございます!

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■第1部
基調講演「水辺の都市における創造的都市論」
ゲスト:ドリュン・チョン(M+ 副館長兼チーフ・キュレーター(香港))

■第2部
ディスカッション「中之島の共創のビジョン─クリエイティブ・アイランドに向けて」
登壇者:植木啓子(大阪新美術館建設準備室 研究副主幹)
    大谷燠(NPO 法人 DANCE BOX 理事長/神戸アートビレッジセンター館長)
    加藤好文(京阪ホールディングス株式会社代表取締役社長/CEO 兼COO/執行役員社長)
    ドリュン・チョン
    西尾章治郎(大阪大学総長)
    西野達(アーティスト)

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2018.12.16 第一部:ドリュン・チョン(M+ 副館長兼チーフ・キュレーター(香港))

2018.12.16 第一部:ドリュン・チョン(M+ 副館長兼チーフ・キュレーター(香港))

 

まず第1部に、2020年に香港の西九文化区にて開館を控えている世界最大規模の現代美術館M+の副館長兼チーフ・キュレーター、ドリュン・チョン氏に「水辺の都市における創造的都市論」を講演していただきました。M+とは何か、何が今までの美術館と違うのか、今後の可能性について同時通訳でお話しされ、来場者の中には熱心に頷いてはノートをとる姿も見られました。

 

2018.12.16 クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島 シンボルイベント「クリエイティブ・アイランド─創造的都市の本質とは何か─」

第2部では香港と大阪・中之島の「水辺の都市」という共通点も踏まえながら、中之島で創造的な地域を形成する可能性について、ディスカッションを行いました。中之島で先鋭的な文化事業を行ってきた大学、企業、NPOの代表者、中之島に誕生する新たな美術館のキュレーター、世界各地で都市を舞台にアートプロジェクトを行ってきた美術家、文化政策研究者など、異なる立場からご意見をいただきました。

香港と中之島には、それぞれ「文化拠点が集まる水辺の都市である」という共通点があります。文化の拠点地としてまだまだ多くの可能性を残す両者ですが、これからどのような発展をしていくのか、都市の中の芸術とは何か、といった問いを多方面の分野から考えることのできる大変貴重な講演となりました。

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